非接続環境のレプリカの使用

ジオデータ サービスを使用した Amazon EC2 インスタンスへのレプリケーション」で説明したように、オンプレミスのジオデータベースからはさまざまなタイプのファイルを複製できます。これらのファイルは、Amazon 上の ArcGIS Server インスタンスに移動した後、クラウドのジオデータベースに読み込むことができます。

このワークフローでは、オンプレミスの ArcSDE ジオデータベースから一方向レプリカ ファイルを作成する方法、ファイルを ArcGIS Server インスタンスに移動する方法、データを Amazon EC2 上のジオデータベースに読み込む方法、ジオデータ サービスを公開する方法、および親(オンプレミスのジオデータベース)の変更を Amazon EC2 上のジオデータベースに同期する方法について説明します。

レプリケーションのためのオンプレミス データの準備

複製するデータは、以下の要件を満たしている必要があります。

手順:
  1. レプリカを作成するユーザにデータの書き込みアクセス権を付与します。
  2. データをバージョン対応登録してレプリカに含まれるようにします。
    メモメモ:

    データは完全にバージョン対応である必要があります。バージョン対応登録する際に、ベース テーブル移行オプションを使用することはできません。

  3. レプリカの一部となる各データセットにグローバル ID 列を追加します。

ローカルでのレプリカ ファイルの作成

オンプレミスの ArcSDE ジオデータベースから、圧縮された XML ドキュメント、トランスポート ファイル ジオデータベース、またはオンプレミスの PostgreSQL 用 ArcSDE ジオデータベースにデータを複製します。

Amazon EC2 での ArcGIS Server インスタンスの起動

ArcGIS Server のインスタンスをまだ起動していない場合は、ここで起動します。手順については、「ArcGIS Server on Amazon のアクティブ化」をご参照ください。

Amazon EC2 上でのジオデータベースの設定

Amazon 上で ArcGIS Server Enterprise を使用していて、まだ EGDB(エンタープライズ ジオデータベース)インスタンスを起動していない場合は、ここで起動します。手順については、「EGDB インスタンスの起動」をご参照ください。このジオデータベースを子ジオデータベースとして使用します。また、Elastic IP を作成して EGDB インスタンスに割り当てます

Amazon 上で ArcGIS Server Workgroup を使用している場合は、データベース サーバでジオデータベースを作成して、子ジオデータベースとして使用します。「クラウド内の Workgroup ジオデータベース」の手順 2 ~ 8 に従います。

ジオデータベースへの接続

リモート デスクトップを使用して ArcGIS Server インスタンスに接続し、ArcCatalog からジオデータベースに接続します。

メモメモ:

ArcGIS Server Workgroup を使用している場合は、前のセクションで作成したジオデータベースに接続します。以下の一連の手順では、手順 1 を省略してください。

デフォルトの ArcSDE 接続ファイルは、ファイルを作成するときに使用した Windows ログインの、プロファイル ディレクトリ内の ArcCatalog フォルダに格納されます。たとえば、接続ファイルの egdb1.sde が C:\Users\yousir\AppData\Roaming\ESRI\Desktop 10.0\ArcCatalog に保存されています。

ArcGIS SOC アカウントは、ArcSDE 接続ファイルにアクセスできる必要があります。したがって、SOC アカウントがアクセス可能な場所に sde 接続ファイルをコピーする必要があります。

手順:
  1. ArcGIS Server インスタンスで ArcCatalog を使用して、EGDB への接続を作成します。

    手順については、「ArcGIS Server インスタンスから EGDB インスタンスへの接続」をご参照ください。

  2. Windows エクスプローラを開き、*.sde ファイルが格納されているディレクトリに移動します。

    例: C:\Users\Administrator\AppData\Roaming\ESRI\Desktop 10.0\ArcCatalog\Connection の egdb.sde

  3. *.sde ファイルをコピーして、ArcGIS SOC アカウントがアクセス可能なサーバ上の場所に貼り付けます。

    例: D:\GIS Data\GIS Data

  4. ArcCatalog で新しい場所へのフォルダ接続を追加します。
    1. カタログ ツリーで [カタログ] を右クリックし、[フォルダ接続] をクリックします。
    2. *.sde ファイルのコピー先フォルダを参照し、[OK] をクリックします。

      フォルダがカタログ ツリーに表示されます。

  5. フォルダを開き、*.sde 接続ファイルをダブルクリックしてジオデータベースに接続します。

オンプレミスのジオデータベースからのレプリカの作成

XML ドキュメント、PostgreSQL の ArcSDE ジオデータベース、またはトランスポート ファイル ジオデータベースに複製できます。

手順:
  1. ArcMap を起動して、複製するデータをマップに追加します。
  2. マップを保存します。このマップは、ワークフローの後の方で編集と同期に使用します。
  3. 一方向(または双方向)レプリカを作成します。
    • XML ドキュメントまたは PostgreSQL の ArcSDE ジオデータベースに複製する場合、レプリカの作成ウィザードを使用してレプリカを作成する手順については、「一方向または双方向レプリカの作成」をご参照ください。
    • トランスポート ファイル ジオデータベースに複製する場合は、ArcGIS Resource Center から Replicate to Transport File GDB をダウンロードし、これをインストールして使用するか、「非接続環境でレプリカを作成する方法」の ArcObjects コードをデータに合わせて変更します。
  4. PostgreSQL の ArcSDE ジオデータベースに複製した場合は、データベースのバックアップを作成します。詳細については、「PostgreSQL のバックアップ」および「バックアップ ファイルを使用した EGDB インスタンスへのジオデータベースの移動」をご参照ください。
  5. XML ドキュメントに複製した場合は、転送の前にファイルの圧縮が必要となる場合があります。次のセクションでファイルの転送に使用する方法に応じて、ファイル サイズの制限に注意してください。ArcGIS Server インスタンスに転送できるように、アプリケーションを使用してファイルをサイズの小さい複数の圧縮ファイルに分割しなければならない場合があります。

ArcGIS Server インスタンスへのレプリカ ファイルの転送

前のセクションで作成した 1 つまたは複数のファイルを、ここで ArcGIS Server Amazon EC2 インスタンスに移動する必要があります。ファイルを Amazon EC2 に移動する際に利用できる方法については、「Amazon へのデータ転送方法」をご参照ください。

レプリカ ファイルから Amazon EC2 上のジオデータベースへのデータの読み込み

データを Amazon EC2 上のジオデータベースに読み込む方法は、作成したレプリカ ファイルのタイプによって異なります。

XML ドキュメント

レプリカの作成ウィザードを使用して XML ドキュメントを生成した場合は、[XML ワークスペース ドキュメントのインポート(Import XML Workspace Document)] ツールを使用してデータをインポートします。

手順:
  1. Amazon EC2 上の ArcGIS Server インスタンスにリモート デスクトップ接続を行います。
  2. 必要に応じてファイルを解凍します。
  3. ArcCatalog を起動します。
  4. データを転送するジオデータベースに接続します。
  5. ジオデータベースを右クリックし、[インポート] をポイントして、[XML ワークスペース ドキュメント] をクリックします。

複製したデータが Amazon EC2 上のジオデータベースに読み込まれます。

PostgreSQL のバックアップ ファイル

バックアップ ファイルを PostgreSQL データベース クラスタに復元できます。手順については、「バックアップ ファイルを使用した EGDB インスタンスへのジオデータベースの移動」をご参照ください。復元したジオデータベースには複製したデータが含まれています。

トランスポート ファイル ジオデータベース

コピーおよび貼り付けを使用して、トランスポート ファイル ジオデータベースから Amazon EC2 上のジオデータベースにデータを転送します。

手順:
  1. ArcGIS Server インスタンスにリモート デスクトップ接続を行います。
  2. ArcGIS Desktop Replicate to Transport File Geodatabase アドインを使用してファイルを生成した場合は、まずファイルを解凍する必要があります。
  3. ArcCatalog を起動して、トランスポート ファイル ジオデータベースを配置したフォルダへの接続を追加します。
    1. [フォルダに接続] ボタン フォルダに接続 をクリックします。
    2. トランスポート ファイル ジオデータベースの場所を参照し、[OK] をクリックします。
  4. トランスポート ファイル ジオデータベースからデータをコピーします。
  5. Amazon EC2 上のコピー先ジオデータベースに接続します。
  6. データをコピー先ジオデータベースに貼り付けます。

複製したデータが Amazon EC2 上のジオデータベースに読み込まれます。

同期

オンプレミスのジオデータベースに対する編集内容を最も簡単に Amazon EC2 上のジオデータベースに同期するには、Amazon EC2 上のジオデータベースからジオデータ サービスを公開し、オンプレミスの ArcGIS Desktop にサービスを追加して、サービスに対して同期を行います。これは Web を通した接続環境での同期です。ただし、このシナリオでは同期する変更の量を 4 MB 未満にする必要があります。同期を頻繁に行えば、サービスを通して送信される updategram は常に 4 MB の制限を下回ると予想されます。

updategram を 4 MB 未満に維持できない場合は、オンプレミスの親ジオデータベースから手動で変更をエクスポートし、生成されたファイルを Amazon EC2 上の ArcGIS Server インスタンスに移動して、変更を子ジオデータベースにインポートする必要があります。続いて、子ジオデータベースから承認ファイルをエクスポートし、このファイルをオンプレミスのサーバに移動して、親ジオデータベースにインポートする必要があります。

ジオデータ サービスを通した同期

updategram が 4 MB 未満の場合は、以下のワークフローを使用して、親ジオデータベースから子ジオデータベースに変更を同期できます。

ジオデータ サービスの公開

Amazon EC2 上のジオデータベースからジオデータ サービスを公開します。

ジオデータ サービスは、ArcCatalog または ArcGIS Server Manager から公開できます。以下の手順では ArcCatalog を使用します。

手順:
  1. ジオデータベース接続を右クリックし、[ArcGIS Server で公開] をクリックします。
  2. ジオデータ サービスを公開するサーバを選択します。
  3. サービスの名前を入力します。
  4. サービスが存在するサーバ上の場所を選択します。
  5. [次へ] をクリックします。
  6. [ジオデータ サービス] はオンのままにします。また、サービスの他のケーパビリティを選択することもできます。

    ジオデータ サービスのケーパビリティについては、「ジオデータ サービスのケーパビリティと許可されるオペレーション」をご参照ください。

  7. サービスに対して指定した情報を確認します。サービスの URL を記録します。

    この URL をブラウザに直接入力することはできませんが、URL の末尾に「?wsdl」を追加して入力すると、Web サービス定義を表示して、サービスが正常に動作していることを確認できます。

サービスは、カタログ ツリーの [GIS Servers] ノード以下に表示されます。

レプリケーションに関するジオデータ サービスの設定

サービスを通してデータを同期するには、レプリケーションを許可するようにサービスを設定する必要があります。

サービスのプロパティを変更するには、サービスを停止する必要があります。

手順:
  1. ArcCatalog で [GIS Servers] ノード以下に表示されているジオデータ サービスを右クリックし、[停止] をクリックします。
  2. ジオデータ サービスを右クリックし、[サービス プロパティ] を選択します。

    [ArcGIS Server - ジオデータ サービス プロパティ] ダイアログ ボックスが表示されます。

  3. [ケーパビリティ] タブをクリックします。
  4. [許可するオペレーション] 以下で [レプリケーション] をクリックします。
  5. [OK] をクリックします。
  6. ジオデータ サービスを右クリックし、[開始] をクリックします。

オンプレミスの ArcGIS Desktop クライアントへのジオデータ サービスの追加

ジオデータ サービスを通して同期を行うには、オンプレミスの Desktop クライアントで、カタログ ツリーの [GIS Servers] リストにジオデータ サービスを追加する必要があります。

手順:
  1. オンプレミスのコンピュータで ArcCatalog を開きます。
  2. カタログ ツリーで [GIS Servers] ノードを展開します。
  3. [ArcGIS Server サーバの追加] をダブルクリックします。

    [ArcGIS Server サーバの追加] ダイアログ ボックスが表示されます。

  4. [GIS サービスの使用] を選択し、[次へ] をクリックします。
  5. ジオデータ サービス用のサーバの URL を入力します。

    これは、ジオデータ サービスを公開したときに記録した URL です。

  6. [完了] をクリックします。

オンプレミスのジオデータベースの編集とジオデータ サービスとの同期

オンプレミスのジオデータベースにある複製したデータは ArcMap から編集できます。同期が必要な編集を完了したら、ArcMap の変更の同期ウィザードを使用して、オンプレミスのジオデータベースと前のセクションで追加したジオデータ サービスを同期します。変更の同期ウィザードの使用方法については、ArcGIS Server ヘルプの「接続環境でのレプリカの同期」をご参照ください。同期のターゲットがジオデータ サービスであることを確認してください。

手動による変更メッセージのエクスポートおよびインポート

updategram が 4 MB を超える場合は、非接続環境での同期を使用して以下の手順を行う必要があります。

  1. オンプレミスの(親)ジオデータベースからデータの変更をエクスポートします。
  2. データ変更ファイルを ArcGIS Server インスタンスに移動します。これらのファイルを移動する方法については、「Amazon へのデータの転送方法」をご参照ください。
  3. データ変更ファイルを Amazon EC2 上の子ジオデータベースにインポートします。
  4. 子ジオデータベースから承認メッセージをエクスポートします。
  5. 承認メッセージをオンプレミスのサーバに移動します。
  6. 承認メッセージをオンプレミスのジオデータベースにインポートします。

手順については、ArcGIS Server ヘルプの「非接続環境でのレプリカの同期」をご参照ください。


2/6/2012