空間関係のモデリング

ここでは、ツールのパラメータに関する追加情報を提供するだけではなく、[空間統計] のツールを使用してデータを分析するときに理解しておく必要のある基本的な用語および概念も紹介します。

注意注意:

距離が分析の構成要素の 1 つである場合は([空間統計] のツールを使用する場合はほぼ常に)、投影座標系(度、分、秒に基づく地理座標系ではなく)を使用してデータを投影します。

空間リレーションシップのコンセプト

空間統計と従来の(非空間的な)統計の重要な違いは、空間統計では空間と空間リレーションシップが直接その算術演算に統合されることです。したがって、[空間統計] ツールボックスのツールの多くで、ユーザが分析を実行する前に [空間リレーションシップのコンセプト] パラメータの値を選択する必要があります。一般的なコンセプトには、inverse distance、travel time、fixed distance、K nearest neighbors、contiguityなどがあります。使用する空間リレーションシップのコンセプトは、計測する内容によって決定されます。たとえば、ある特定の種子植物の群生状態を計測する場合は、inverse distance が最も適切です。しかし、地域の通勤客の地理的分布を評価する場合は、通勤時間または通勤費用を選択するほうが、空間リレーションシップをよりよく説明できます。分析によっては、空間と時間が、親近度(あるものをよく知っていれば知っているほど、それは機能的により近くにある)や空間相互作用(たとえば、東京都と大阪市の間の電話通話数が大阪市と京都市の間の電話通話数よりも多い場合、東京都と大阪市は機能的により近くにある)などのより抽象的なコンセプトよりも重要ではない場合があります。

[空間リレーションシップのコンセプト] パラメータのオプションについては、後で説明します。選択するオプションによって、隣接フィーチャのコンテキスト内の各フィーチャを評価するツールの隣接リレーションシップが決定されます。これらのツールには、[空間的自己相関分析(Spatial Autocorrelation(Global Moran's I))] ツール、[ホット スポット分析(Hot Spot Analysis(Getis-Ord Gi*))] ツール、および [クラスタ/外れ値分析(Cluster and Outlier Analysis(Anselin Local Moran's I))] ツールがあります。これらのオプションの一部は、[空間ウェイト マトリックスの作成(Generate Spatial Weights Matrix)] ツールまたは [ネットワーク空間ウェイトの作成(Generate Network Spatial Weights)] ツールを使用する場合にのみ使用できることに注意してください。

Inverse distance と Inverse distance の逆二乗(インピーダンス)

逆距離

[Inverse distance] のオプションを使用する場合、その空間リレーションシップの概念モデルは、インピーダンスの 1 つ(距離減衰)です。すべてのフィーチャがその他のすべてのフィーチャに影響をおよぼしますが、距離が遠ければ遠いほど、影響は小さくなります。一般的に、Inverse distance のコンセプトを使用して必要な計算の数を減らすには(特に大規模なデータセットの場合)、[距離バンドまたは距離の閾値] を指定します。距離バンドまたは距離の閾値が指定されていなければ、デフォルトの閾値が自動的に計算されます。[距離バンドまたは距離の閾値] を 0 に設定することで、強制的にすべてのフィーチャをその他のすべてのフィーチャの隣接フィーチャにすることができます。

[逆ユークリッド(Inverse Euclidean)] 距離は、気温の変化などの連続的なデータをモデリングするために適切です。[逆マンハッタン(Inverse Manhattan)] 距離は、道路網データが使用できないときに、ホームセンターなどの固定されている都市施設のロケーションが分析で使用される場合に最適です。[距離の逆二乗(Inverse Distance Squared)] オプションを使用する場合の概念モデルは、[Inverse distance] を使用する場合と同じですが、[距離の逆二乗(Inverse Distance Squared)] オプションを使用する場合は、傾斜がより急であるため、隣接フィーチャの影響がより急激に低下し、ターゲット フィーチャに最も近い隣接フィーチャのみがそのフィーチャの計算に多大な影響をおよぼします。

距離バンド(影響圏)

固定距離

[ホット スポット分析(Hot Spot Analysis(Getis-Ord Gi*))] ツールなどの一部のツールでは、固定距離バンドはデフォルトの空間リレーションシップのコンセプトです。[Fixed Distance Band] オプションを使用して、「影響圏」(データに対する空間相互作用の変動ウィンドウ形式の概念モデル)を適用します。各フィーチャは、[距離バンドまたは距離の閾値] で指定した距離内にある隣接フィーチャのコンテキスト内で分析されます。指定した距離内の隣接フィーチャは、均等に重み付けされます。指定した距離外のフィーチャは、計算に影響をおよぼしません(その重みは 0 です)。[Fixed Distance Band] オプションは、特定の(固定された)空間尺度のデータの統計的なプロパティを評価するときに使用します。たとえば、通勤パターンを調査しているときに、職場までの平均移動距離が 15 km であることが判明している場合は、15 km の固定距離を分析に使用します。「固定距離の選択」をご参照ください。

無関心圏

無関心圏

[空間リレーションシップのコンセプト] パラメータの [無関心圏(Zone of Indifference)] オプションは、[Inverse distance] モデルと [Fixed Distance Band] モデルを組み合わせたものです。距離バンド内または距離の閾値内のフィーチャは、ターゲット フィーチャの分析に含まれます。臨界距離を超えると、影響のレベル(重み付け)が急激に低下します。就職先を探しているときに、5 km 先の会社と 6 km 先の会社のどちらかを選ぶとします。この場合、通勤距離を重視して会社を選ぶことはないでしょう。ここで、5 km 先の会社と 20 km 先の会社のどちらかを選ぶとします。この場合、通勤距離は一種のインピーダンスとなり、会社を選ぶうえで考慮する必要があるでしょう。このオプションは、分析の尺度を固定したままにすると同時に、ターゲット フィーチャの計算に含まれる隣接フィーチャに明確な境界を適用したくない場合に使用します。

ポリゴン隣接(一次)

ポリゴン フィーチャクラスを使用する場合、一次隣接を選択できます。エッジを共有する(一致する境界線を持つ)ポリゴンは、ターゲット ポリゴンの計算に含まれます。エッジを共有しないポリゴンは、ターゲット フィーチャの計算から除外されます。このオプションは、[ポリゴン隣接 - エッジのみ(Polygon Contiguity Edges Only)] とも呼ばれます。[ポリゴン隣接 - エッジとコーナー(Polygon Contiguity Edges and Corners)]([空間ウェイト マトリックスの作成(Generate Spatial Weights Matrix)] ツールを使用する場合に使用可能)を使用すると、境界(エッジ)またはコーナー(ノード)を共有するポリゴンから隣接フィーチャが構成されます。ある種の伝播プロセスをモデリングする場合、またはポリゴンとして表される連続的なデータを処理する場合に、ポリゴン フィーチャでこれらの隣接コンセプトのいずれかを使用します。

ライセンスライセンス:
ポリゴン隣接のオプションは、ArcInfo ライセンスでのみ使用することができます。

K 最近隣内挿

各フィーチャがそれに最も近い固定数の隣接フィーチャの空間的な関連性内で評価されるようにするために、隣接リレーションシップが構成されることもあります。K(隣接フィーチャの数)が 8 であれば、ターゲット フィーチャに最も近い 8 つの隣接フィーチャがそのフィーチャの計算に含められます。フィーチャ密度が高いロケーションでは、分析の空間的な関連性は小さくなります。フィーチャ密度が高いロケーションでは、分析の空間的な関連性は小さくなります。この空間リレーションシップのモデルの利点は、フィーチャ密度がスタディ エリア全体でロケーションによって大幅に異なる場合でも、すべてのターゲット フィーチャに必ずいくつかの隣接フィーチャが存在するようになることです。このオプションは、[空間ウェイト マトリックスの作成(Generate Spatial Weights Matrix)] ツールを使用する場合に使用することができます。

ドローネ三角形分割(Natural Neighbors)

[ドローネ三角形分割(Delaunay Triangulation)] オプションは、ポイント フィーチャまたはフィーチャの重心から各ポイントまたは重心が三角形ノードになるようにボロノイ三角形を作成することで、隣接フィーチャを構成します。三角形のエッジで接続されているノードは、隣接フィーチャと見なされます。[ドローネ三角形分割(Delaunay Triangulation)] を使用すると、データにアイランドや大幅に異なるフィーチャ密度が含まれていても、すべてのフィーチャに少なくとも 1 つの隣接フィーチャが存在することが確保されます。このオプションは、[空間ウェイト マトリックスの作成(Generate Spatial Weights Matrix)] ツールを使用する場合に使用することができます。

ドローネ三角形分割

ファイルからの空間重みの取得(ユーザ定義の空間リレーションシップ)

独自の空間リレーションシップのカスタム コンセプトを定義する(たとえば、空間相互作用に基づいて)書式設定された ASCII テキスト ファイルへのパスを指定することもできます。ネットワーク データセットから派生した移動時間または移動コストを使用して空間リレーションシップを定義する場合は、[ネットワーク空間ウェイトの作成(Generate Network Spatial Weights)] ツールを使用して空間ウェイト マトリックス ファイルを作成し、結果として生成される *.swm ファイルを分析に使用します。[空間ウェイト マトリックスの作成(Generate Spatial Weights Matrix)] ツールを使用して空間ウェイト マトリックス ファイルを作成することもできます。フィーチャの空間リレーションシップがテーブルで定義されている場合は、[空間ウェイト マトリックスの作成(Generate Spatial Weights Matrix)] ツールを使用して、そのテーブルを空間ウェイト マトリックス ファイル(*.swm)に変換できます。一部のフィールドは、テーブルを *.swm ファイルに変換するために必要なフィールドです。

空間リレーションシップのコンセプトの選択:ベスト プラクティス

フィーチャの空間相互作用をより現実的にモデリングできればできるほど、結果はより正確になります。[空間リレーションシップのコンセプト] パラメータは、分析するフィーチャの固有のリレーションシップを考慮して選択します。データの特性に考慮して選択する必要がある場合もあります。

たとえば、[Inverse distance] を使用する方法は、連続的なデータを使用する場合や、2 つのフィーチャが空間内で近ければ近いほど相互に作用する確率が高くなるプロセスをモデリングする場合に最適です。この空間リレーションシップのコンセプトを使用する場合、すべてのフィーチャがその他のすべてのフィーチャの隣接フィーチャとなる可能性があり、大規模なデータセットを使用する場合、実行される計算の数は膨大になります。逆距離のコンセプトを使用する場合は、常に [距離バンドまたは距離の閾値] の値を含めるようにしてください。.これは、大規模なデータセットを使用する場合は特に重要です。[距離バンドまたは距離の閾値] パラメータを空白のままにしておくと、距離の閾値は自動的に計算されますが、これは分析に最も適した距離ではない可能性があります。デフォルトの距離の閾値は最短距離になるため、すべてのフィーチャにそれぞれ少なくとも 1 つの隣接フィーチャが存在するようになります。

[Fixed Distance Band] を使用する方法は、大幅にサイズが異なるポリゴンが存在する(たとえば、スタディ エリアのエッジではポリゴンが非常に大きく、スタディ エリアの中央ではポリゴンが非常に小さいなど)ポリゴン データを処理するために適しています。[Fixed Distance Band] は、[ホット スポット分析(Hot Spot Analysis(Getis-Ord Gi*))] ツールを使用する場合に、ポイント データを処理するために使用することも推奨されます。分析に適切な距離バンドを決定するために役立つガイドラインについては、下記の固定距離の選択に関するセクションをご参照ください。

[無関心圏(Zone of Indifference)] コンセプトを使用する方法は、固定距離を使用することが適切であっても、近傍リレーションシップに明確な境界が設定されるとデータが正確に表現されない場合に適しています。無関心圏の概念モデルは、すべてのフィーチャをその他のすべてのフィーチャの隣接フィーチャと見なすことに注意してください。このオプションは、大規模なデータセットには適切ではありません。[距離バンドまたは距離の閾値] に指定された値は、隣接フィーチャの数を制限せず、空間リレーションシップの濃度の減衰が始まる場所を指定するのみです。

[ポリゴン隣接(Polygon Contiguity)] コンセプトを使用する方法は、ポリゴンのサイズと分布が似ており、空間リレーションシップがポリゴンの近接の関数である(2 つのポリゴンが境界を共有する場合、その空間相互作用が増加する)場合に効果的です。ポリゴン隣接のコンセプトを選択する場合、一般的に、[行を標準化] パラメータを持つツールの行の標準化を選択する必要があります。

[K 最近隣内挿(K Nearest Neighbors)] オプションは、分析に最小数の隣接フィーチャが必要である場合に効果的です。特に、フィーチャに関連付けられている値が歪んでいる(正規分布していない)場合は、各フィーチャが少なくとも 8 つほどの隣接フィーチャのコンテキスト内で評価されることが重要です(これは一般的な方法であるのみです)。データの分布がスタディ エリア全体で大幅に異なるため、一部のフィーチャがその他のすべてのフィーチャから遠くに離れている場合に、この方法は最適です。ただし、分析の空間コンテキストは、フィーチャの分散度または密度の値変動に応じて変化することに注意してください。K 最近隣内挿は、分析の尺度を固定することが隣接フィーチャの数を固定することよりも重要ではない場合に適しています。

[ドローネ三角形分割(Delaunay Triangulation)] は、一部の分析では、一連のフィーチャの Natural Neighbors を指定する方法として使用されます。この方法は、データにアイランド ポリゴン(他のポリゴンと境界を共有しない分離したポリゴン)が含まれる場合、またはフィーチャの空間分布が非常に不均一である場合に適しています。ドローネ三角形分割は、K 最近隣内挿と似ており、すべてのフィーチャに少なくとも 1 つの隣接フィーチャが存在することを確保しますが、データの分布そのものを使用して、各フィーチャに割り当てられる隣接フィーチャの数を決定します。

空間相互作用を移動時間または移動距離の観点からモデリングすると最も効果的である場合があります。たとえば、都市サービスへのアクセス性をモデリングしたり、都市犯罪のホット スポットを見つけたりするには、ネットワークの観点から空間リレーションシップをモデリングすると効果的です。分析の前に、[ネットワーク空間ウェイトの作成(Generate Network Spatial Weights)] ツールを使用して空間ウェイト マトリックス ファイル*.swm)を作成します。[空間リレーションシップのコンセプト] の値として [GET_SPATIAL_WEIGHTS_FROM_FILE] を選択してから、[ウェイト マトリックス ファイル] パラメータとして、作成した *.swm ファイルへの絶対パスを指定します。

ヒントヒント:

ArcGIS ユーザは無料で使用できる Esri Data & Maps に、SDC 形式であらかじめ作成されたネットワーク データセットなどの StreetMap データが含まれています。このデータセットは、米国とカナダを対象としています。これらのネットワーク データセットは、[ネットワーク空間ウェイトの作成(Generate Network Spatial Weights)] ツールからは直接使用できます。

[空間リレーションシップのコンセプト] パラメータのどのオプションも分析に適切ではない場合は、フィーチャ間のリレーションシップを定義する ASCII テキスト ファイルまたはテーブルを作成し、これらのファイルを使用して空間ウェイト マトリックス ファイルを作成することができます。空間ウェイト マトリックス ファイルを編集することもできます。

固定距離バンドの値の選択

固定距離バンドは、一時的に各フィーチャ上に固定され、そのフィーチャをその隣接フィーチャのコンテキスト内で調べる変動ウィンドウと考えることができます。分析に適切な距離バンドを特定するために役立つガイドラインのいくつかを以下に示します。

  • 調査対象の空間的現象について、既知のことに基づいた距離を選択します。この情報を把握していることはまれですが、把握している場合は、その知識を使用して距離の値を選択するようにしてください。たとえば、平均通勤距離が 15 km であることがわかっているとします。この場合、距離バンドを 15 km に設定すると、通勤データが適切に分析されるでしょう。
  • すべてのフィーチャに少なくとも 1 つの隣接フィーチャが存在することを確保するために十分な距離バンドを使用します。特に、入力データに歪みがある(値をヒストグラムとしてプロットした場合に適切な釣鐘曲線が生成されない)場合は、距離バンドが小さすぎないか(ほとんどのフィーチャに 1 つか 2 つの隣接フィーチャしかない)、大きすぎないか(いくつかのフィーチャにその他のすべてのフィーチャが隣接フィーチャとして含まれている)を確認します。小さすぎる場合、または大きすぎる場合は、結果として生成される Z スコアが信頼性の低いものになるためです。Z スコアは、距離バンドが各フィーチャにいくつかの(およそ 8 つの)隣接フィーチャが存在することを確保するために十分な大きさである限り、信頼できます。
  • 最大空間的自己相関を反映する距離バンドを使用します。地形上に空間クラスタリングが見られる場合は、内在する空間プロセスがアクティブであることを示します。[空間的自己相関分析(Spatial Autocorrelation(Global Moran's I))] ツールまたは Ripley の K 関数法(Multi-Distance Spatial Cluster Analysis(Ripley's k-function))] ツールによって計測される最大クラスタリングを示す距離バンドは、これらの空間プロセスが最も「アクティブ」である、または最も顕著である距離です。[空間的自己相関分析(Spatial Autocorrelation(Global Moran's I))] ツールを複数の異なる距離(0.5 km、1.0 km、1.5 km など)で実行して、結果として生成される Z スコアがどこでピークに達するかを調べます。ピーク値に関連付けられている距離を分析に使用します。または、インシデント データを操作している場合は、[Ripley の K 関数法(Multi-Distance Spatial Cluster Analysis(Ripley's k-function))] ツールを一定範囲の距離の集約されていないインシデントで実行して、観測された K 値と必要とされる K 値の差がどこで最大であるかを特定します([DiffK] フィールド)。最大差に関連付けられている距離を分析に使用します。注意: 距離の値は、[出力データの座標系] ジオプロセシング環境で指定されている単位を使用して入力する必要があります。
    • 各ピークは、空間クラスタリングを促進するプロセスが顕著である距離を表します。通常、ピークは複数あります。一般的に、より長い距離に関連付けられているピークは、広範なトレンド(たとえば、西が巨大なホット スポットであり、東が巨大なコールド スポットである広範な東から西へのトレンド)を反映するため、より短い距離に関連付けられているピークのほうが重要です。
    • 目立たないピークは、多くの場合、多数の異なる空間プロセスがさまざまな空間尺度で作用していることを意味します。この場合、分析にどの固定距離を使用するかを判断するためには、一般的に、他の基準を使用します(通常は、改善のために最も効果的な距離)。
    • 集約データ(たとえば、郡など)を使用している場合に、Z スコアのピークがない(つまり、増え続けている)場合は、集約スキーマが粗すぎることを意味します。つまり、対象の空間プロセスは、集約単位の尺度よりも小さい尺度で作用しています。分析をより小さい尺度に変更できる場合は(たとえば、郡から区域に移行するなど)、ピーク距離を見つけることができる場合があります。
    Global Moran's I と K 関数法
    クラスタリングを促進するプロセスが最も顕著である距離を特定します。
  • 正しい距離バンドは 1 つしかないということに固執しないようにしてください。現実は、それほどシンプルではありません。ほとんどの場合、観測されたクラスタリングを促進する空間プロセスは複数あり、相互に作用しています。1 つの距離バンドが必要であると考えるよりも、パターン分析ツールは複数の空間尺度で空間リレーションシップを調べるための効果的な方法であると考えるようにしてください。尺度を変更すると(距離バンドの値を変更すると)、分析の目的が変わることがあることに注意してください。たとえば、所得データを処理しているとします。距離バンドが小さいと、近傍の所得パターンを調べることができ、距離の尺度が中程度であれば、1 つのコミュニティまたは都市の所得パターンが反映され、最大距離バンドの場合は、広範なリージョンの所得パターンが示されます。

ユークリッド距離とマンハッタン距離

[空間統計] ツールボックスの多くのツールが、その計算に「距離」を使用します。これらのツールを使用するとき、[ユークリッド距離(Euclidean Distance)] または [マンハッタン距離(Manhattan Distance)] のどちらかを選択できます。

D = sq root [(x1 –x2)**2.0 + (y1 –y2)**2.0]

ここで、(x1,y1) はポイント A の座標、(x2,y2) はポイント B の座標であり、D はポイント A とポイント B の間の直線距離です。

ユークリッド距離
D = abs(x1 –x2) + abs(y1 –y2)

ここで、(x1,y1) はポイント A の座標、(x2,y2) はポイント B の座標であり、D はポイント A とポイント B の垂直距離および水平距離の和です。これは、東西方向および南北方向の移動のみに制限されている場合に、移動する必要がある距離です。この方法は、一般的に、移動が道路網に制限されており、実際の道路網の移動コストがわからない場合は、ユークリッド距離よりも適切です。

マンハッタン距離

セルフ ポテンシャル(間帯重みを付けるフィールド)

[空間統計] ツールボックスの一部のツールでは、セルフ ポテンシャルに使用する重みを表すフィールドを指定できます。セルフ ポテンシャルとは、フィーチャとそれ自身の間の距離または重みのことです。この重みは、通常は 0 ですが、必要に応じて別の固定値またはフィーチャごとに異なる値を指定します。たとえば、空間リレーションシップのコンセプトが国勢調査区域内または国勢調査区域間で移動する距離に基づいている場合は、ポリゴンのサイズに基づいて平均間帯移動コストを反映するようにセルフ ポテンシャルをモデリングします。

dii = 0.5*[(Ai / π)**0.5]

ここで、dii はポリゴン フィーチャ i の間帯移動に関連付けられている移動コストであり、Ai はポリゴン フィーチャ i に関連付けられているエリアです。

標準化

[行を標準化] は、サンプリングのデザインまたは適用されている集約スキーマが原因で、フィーチャの分布に潜在的にバイアスがかかっている場合に推奨されます。[行を標準化] が選択されていると、それぞれの重みがその行の合計(すべての隣接フィーチャの重みの合計)で分割されます。行の標準化による重み付けは、固定距離の近傍でよく使用され、ポリゴン隣接に基づく近傍にはほぼ常に使用されます。これは、フィーチャに異なる数の隣接フィーチャがあるために生じるバイアスを抑止するために行われます。[行を標準化] は、すべての重みを 0 と 1 の間になるようにスケーリングして、絶対的ではなく相対的な重み付けスキーマを作成します。行政区域を表すポリゴン フィーチャを操作するときは、ほぼいつも、[行を標準化] オプションを選択します。

距離バンドまたは距離の閾値

[距離バンドまたは距離の閾値] では、ほとんどの空間リレーションシップのコンセプト(たとえば、[Inverse distance]、[Fixed Distance Band] など)の分析の尺度を設定できます。これは、カットオフ距離を表す正の数値です。ターゲット フィーチャに対して指定したカットオフ外のフィーチャは、そのフィーチャの分析において無視されます。ただし、[無関心圏(Zone of Indifference)] を使用する場合、指定した距離外のフィーチャの影響は近接度に比例して弱くなりますが、距離の閾値内のフィーチャは同等に考慮されます。

適切な距離を選択することは重要です。一部の空間統計では、分析を信頼できるものにするためには、各フィーチャに少なくとも 1 つの隣接フィーチャが必要です。[距離バンドまたは距離の閾値] に設定した値が小さすぎると(一部のフィーチャに隣接フィーチャが存在しなくなる)、距離をより大きい値に設定して再試行することを提案する警告メッセージが表示されます。[近接フィーチャへの距離を計算(Calculate Distance Band from Neighbor Count)] ツールは、指定した数の隣接フィーチャへの最短、平均、および最長距離を評価します。これに基づいて、分析に使用する適切な距離バンドの値を決定できます。詳細については、「固定距離バンドの値の選択」のセクションをご参照ください。

この値を指定しなければ、デフォルトの距離の閾値が計算されます。次の表は、3 つの使用可能な入力タイプごとに、[空間リレーションシップのコンセプト] の動作が指定する値によってどのように異なるかを示しています(負の値は無効です)。

逆距離、距離の逆二乗

固定距離バンド、無関心圏

ポリゴン隣接、ドローネ三角形分割、K 最近隣内挿

0

閾値またはカットオフは適用されず、すべてのフィーチャがその他のすべてのフィーチャの隣接フィーチャになります。

無効です。実行時エラーが生成されます。

無視されます。

空白

デフォルトの距離が計算されます。このデフォルトの距離は最短距離であるため、すべてのフィーチャに少なくとも 1 つの隣接フィーチャが存在するようになります。

デフォルトの距離が計算されます。このデフォルトの距離は最短距離であるため、すべてのフィーチャに少なくとも 1 つの隣接フィーチャが存在するようになります。

無視されます。

正の値

指定された 0 より大きい正の値がカットオフ距離として使用され、隣接リレーションシップはこの距離内のフィーチャ間にのみ存在するようになります。

[Fixed Distance Band] を使用する場合、この指定されたカットオフ内のフィーチャのみが相互に隣接フィーチャになります。[無関心圏(Zone of Indifference)] を使用する場合、この指定されたカットオフ内のフィーチャは相互に隣接フィーチャになり、カットオフ外のフィーチャも隣接フィーチャになりますが、これらには、距離が長くなるにつれ、より小さい重み(影響)が割り当てられます。

無視されます。

距離バンドのオプション

隣接フィーチャの数

各ターゲット フィーチャの分析に含める隣接フィーチャの数を表すには、正の整数を指定します。[空間リレーションシップのコンセプト] に選択した値が [K 最近隣内挿(K Nearest Neighbors)] であれば、各ターゲット フィーチャは最も近い K 個のフィーチャ(「K」は指定した隣接フィーチャの数)のコンテキスト内で評価されます。[Inverse distance] または [Fixed Distance Band] を使用する場合、[近傍数] パラメータの値を指定することで、各フィーチャに少なくとも K 個の隣接フィーチャが存在することが確保されます。[ポリゴン隣接(Polygon Contiguity)] を使用する場合、[近傍数] に指定した値はアイランド ポリゴンのみに適用されます。各ターゲット アイランド ポリゴンに最も近い K 個のポリゴンは、分析に使用される隣接フィーチャと見なされます。

ウェイト マトリックス ファイル

いくつかのツールでは、空間ウェイト マトリックス ファイルへのパスを指定することで、空間フィーチャ間の空間リレーションシップを定義できます。空間ウェイトとは、データセットの各フィーチャとその他のすべてのフィーチャの間にある距離、時間、またはその他のコストを反映する数字です。[空間ウェイト マトリックスの作成(Generate Spatial Weights Matrix)] ツールまたは [ネットワーク空間ウェイトの作成(Generate Network Spatial Weights)] ツールを使用して空間ウェイト マトリックス ファイルを作成することも、単純な ASCII ファイルを使用することもできます。

空間ウェイト マトリックス ファイルが単純な ASCII テキスト ファイルである場合、最初の行は一意な ID フィールドの名前である必要があります。これにより、このファイルを生成するときに、データセット内の任意の数値フィールドを ID として使用できます。ただし、この ID フィールドは、整数タイプである必要があり、すべてのフィーチャに対して一意な値である必要があります。空間ウェイト ファイルの最初の行の後に続く内容は、3 つの列で構成される必要があります。

たとえば、3 軒のガソリンスタンドを所有しているとします。ID フィールドとして使用するフィールドを「StationID」とし、フィーチャ ID を 1、2、および 3 として、これらの 3 軒のガソリンスタンドの空間リレーションシップを分単位の移動時間を使用してモデリングするとします。この場合、次のような ASCII ファイルを作成できます。

StationID
1  1   0
1  2   1/10
1  3   1/7
2  1   1/10
2  3   1/20
3  1   1/6
3  2   1/15
3  3   0

一般的に、重みが距離または時間を表す場合、より近いフィーチャに、より遠いフィーチャよりも大きい重みが割り当てられるように重みが転化されます(たとえば、距離が 10 km または 10 分であれば 1/10)。上記の重みから、ガソリンスタンド 1 はガソリンスタンド 2 から 10 分の距離にあることがわかり、この例では、移動時間は対称的ではないこともわかります(ガソリンスタンド 1 からガソリンスタンド 3 までの移動時間は 7 分ですが、ガソリンスタンド 3 からガソリンスタンド 1 までの移動時間は 6 分です)。ガソリンスタンド 1 とそれ自身の間の重みは 0 であり、ガソリンスタンド 2 とそれ自身の間についてはエントリがありません。エントリがなければ、重みは 0 であると想定されます。

空間ウェイト マトリックス ファイルの値を入力することは、データセットが小規模であっても、面倒な作業です。[空間ウェイト マトリックスの作成(Generate Spatial Weights Matrix)] ツールを使用するか、このタスクを自動的に実行する Python スクリプトを記述するほうが効率的な方法です。

空間ウェイト マトリックス ファイル(*.swm)

[空間ウェイト マトリックスの作成(Generate Spatial Weights Matrix)] ツールまたは [ネットワーク空間ウェイトの作成(Generate Network Spatial Weights)] ツールは、指定されたパラメータに基づいてデータセット内のすべてのフィーチャの空間リレーションシップを定義するバイナリ形式の空間ウェイト マトリックス ファイル(*.swm)を作成します。

フィーチャクラス内のフィーチャの空間リレーションシップを定義するテーブルがある場合は、[空間ウェイト マトリックスの作成(Generate Spatial Weights Matrix)] ツールを使用して、そのテーブルを空間ウェイト マトリックス ファイル(*.swm)に変換します。このテーブルには、以下のフィールドが必要です。

フィールド名

説明

<一意な ID フィールド名>

フィーチャごとに一意な ID がある入力フィーチャクラス内の整数フィールド。これがターゲット フィーチャ ID です。

NID

隣接フィーチャの ID を含んでいる整数フィールド。これが隣接フィーチャ ID です。

WEIGHT

対象フィーチャと隣接フィーチャの空間リレーションシップを数量化する数値の重み。値が大きければ大きいほど、2 つのフィーチャ間の重みも大きくなり、相互作用も強くなります。

テーブルの必須フィールド

空間ウェイト マトリックス ファイルの共有

[空間ウェイト マトリックスの作成(Generate Spatial Weights Matrix)] ツールと [ネットワーク空間ウェイトの作成(Generate Network Spatial Weights)] ツールの出力は、*.swm ファイルです。このファイルは、入力フィーチャクラス、一意な ID フィールド、および *.swm ファイルが作成されたときの [出力データの座標系] の設定と関連付けられます。分析に使用するために *.swm ファイルと入力フィーチャクラスを使用して定義する空間リレーションシップを他のユーザが複製することは可能です。特に、*.swm ファイルを他のユーザと共有する場合、出力データの座標系が入力フィーチャクラスに関連付けられている空間参照と異なる状況は回避するようにしてください。入力フィーチャクラスを投影してから、空間ウェイト マトリックス ファイルを作成する前に [出力データの座標系] を [入力フィーチャクラスに一致(Same as Input Feature Class)] に設定するほうが、複製よりも効果的な方法です。

関連項目


7/10/2012