ArcGIS Desktop の概要

ArcGIS Desktop は、GIS 専門家が地理情報の編纂、利用および管理に使用している主力製品です。たとえば、マッピング、データ編纂、解析、ジオデータベースの管理、地理情報の共有など、さまざまな GIS タスクをサポートしている包括的なプロ仕様の GIS アプリケーションが挙げられます。

ArcGIS Desktop は、GIS ワークフロー プロジェクトの管理、データ、マップ、モデルおよびアプリケーション構築用の GIS 専門家向けプラットフォームです。GIS を組織間、あるいは Web 上に配備するための開始点であり基盤でもあります。

デスクトップ アプリケーションと共有ドキュメント

ArcGIS Desktop には、ArcMap、ArcCatalog、ArcGlobe、ArcScene、ArcToolbox、ModelBuilder などのアプリケーション一式も用意されています。それらのアプリケーションおよびインタフェースを使用して、単純なものから高度なものまでのあらゆる GIS タスクを実行することができます。

ArcGIS Desktop では、そのようなアプリケーションを適用して、多様な地理情報を作成、処理できます。作成および処理の対象となるのは、たとえば、ArcMap アプリケーションではマップ ドキュメント、ArcGlobe アプリケーションではグローブ ドキュメント、ModelBuilder アプリケーションではジオプロセシング モデルです。

ArcGIS Desktop を使用している場合、GIS 情報のいくつかのエレメントを処理することになります。以下は、処理対象エレメントの例です。

Desktop で実行可能な処理

ArcGIS Desktop ユーザが実行する GIS 作業は、単純なマッピングやデータ編纂から高度な空間解析まで、多岐にわたっています。Desktop for 3D GIS を使用して、マルチユーザ エンタープライズ ジオデータベースの編纂、管理およびメンテナンス、空間解析の実行、画像の管理、高度な画像処理、組織内のさまざまな GIS 手順の自動化に対応できます。

ほとんどのユーザが実行するタスクの中でも、マップの処理、空間解析、およびデータ編纂の 3 つは主なものです。Desktop においてマップはきわめて重要です。マップはあらゆる情報を実用化する手段であると共に、編集に用いられるメカニズムであり、さらには空間解析を多数のユーザに提供するためのメカニズムでもあるためです。Desktop の一部として組み込まれている包括的なマップ機能は、専門家がほぼあらゆるマッピング操作に使えます。たとえば、ArcGIS のカートグラフィの詳細については、インターネット上の Mapping Center をご参照ください。

マップは、編集およびデータ編纂作業の基盤としても利用できます。ArcMap は高度なデータ編纂に使用されている主要アプリケーションであり、数十万におよぶ組織が、それぞれの分野で充実した高信頼コンテンツの編纂に使用しています。これらの充実したデータは多くの GIS アプリケーションの基盤となっており、この情報の多くは ArcGIS コミュニティがインターネット経由で使用できます。

空間解析は、GIS において最も興味深く際立った側面の 1 つです。空間解析を使用して、GIS ユーザは多くの個別ソースからの情報を組み合わせて使用し、多種多様な高性能の空間演算子を適用して、まったく新しい情報(結果)を導き出せます。そうした解析結果を導き出すため、GIS 専門家はジオプロセシングによって自分のアイデアを「プログラミング」します。導き出された解析結果は、その後、さまざまな問題の解決に役立てられます。

ArcGIS Desktop ユーザの重要な役割

ArcGIS Desktop ユーザの多くは、組織内および Web 上の他のユーザに高品質マップや地理情報を提供するという特別な役割と責任を担っています。この役割を遂行するために、マップ、レイヤ、ジオデータベース、画像、および解析モデルを作成し、共有しています。

ArcGIS Desktop の重要な役割
ArcGIS Desktop を使用して、共有可能な地理情報を作成できます。この地理情報は、多数のクライアントに提供することが可能です。情報提供を行うには、ArcGIS Server を使用します。

ArcGIS ドキュメントによる、共有 GIS ワーク タスクのカプセル化

マップ、ジオデータベース、およびジオプロセシング ツールは、GIS の使用状況をキャプチャするエレメントです。これらのエレメントは、視覚化をはじめシンボル化や編集、さらにはレポーティングや解析に至るまでの ArcGIS 実装の主要な側面を定義します。この情報の実用化には ArcGIS マップ(2D と 3D の両方)を使うと便利です。

ArcGIS Desktop GIS ユーザであれば、マップとレイヤをこの作業の一部として作成することにより、地理情報の表示、使用、照会、管理、分析の仕方に関するあらゆる側面をカプセル化できます。このカプセル化をベースに、他のデスクトップ GIS ユーザとの作業共有、広義には Web 上での作業共有が可能になります。たとえば、次のような場合です。

このようなパッケージ(マップ パッケージなど)を別のユーザからダウンロードした場合、ArcGIS Desktop はパッケージによって変貌します。元のユーザが共有ドキュメントに行った設計や構築と同じ作業をすべて実行できます。

ArcGIS Desktop でのマップ操作

対話型マップを構築するには、ベースマップ上にオーバーレイする一連の操作マップ レイヤ(たとえば、画像、テレイン、街路マップ、地形)を組み合わせるのが、一般的なパターンです。ベースマップは一般的に、さまざまな縮尺を使って作業できるように設計されています。各操作マップ レイヤは、街路、土地利用、水文学などのような情報の論理的なコレクションを表します。

GIS マップには、マップ コンテンツ(各レイヤの背後にある地理情報や、新たな情報を導き出すために使用できる解析機能)の対話操作/処理用ツールが付属しています。GIS マップを使って、たとえば次のような処理ができます。

パンとズームに対応したマルチスケールのマップ表示

マップは、マルチスケールのマップ上でパンおよびズームします
ここに示す一連のスクリーン ショットは、動物の通った跡を拡大表示したものです。このベースマップは、インタラクティブなマルチスケールのマップ表示がサポートされるように構築されています。

シンプルな情報レポートを生成するには

マップ レイヤ用の対話的なフィーチャの情報表示を最大限に簡略化(かつ効率化)するには、シンプルな属性フィールド ポップアップを使用するのが有効な方法です。

各フィーチャをクリックし、属性ポップアップを表示します。
各レイヤには、表示可能なさまざまな属性フィールドがあります。マップ作成者であれば、表示フィールド、非表示フィールド(たとえば、フィーチャのオブジェクト ID を表示する必要のない場合)、情報ポップアップの各フィールドに表示されるエイリアス名(キャプション)のリストを定義しておくことができます。

それ以外の場合に重要となるのは、特定レイヤ内のフィーチャを視覚化、比較できる対話操作を強化することです。詳細な情報表示およびチャート作成は、レイヤ プロパティの一部として定義できます。

精巧なフィーチャ レポーティング
さまざまなレイヤでフィーチャをクリックし、細密情報レポートおよびチャートを表示できます。これらのレポートは、ArcGIS Desktop 内のレイヤ プロパティとして定義されます。

解析結果を視覚化するには

マップ レイヤは、解析機能へのアクセスや、結果の表示/対話操作に使用できます。

大地震発生地点から 100 マイル圏内の居住者数を示す地震マップ。
このマップで、大地震発生地点から 100 マイル圏内に居住する人口の概算数をすばやく計算できます。100 マイル バッファを生成し、そのバッファ ゾーン圏内の人口を合計する解析モデルは、この地震マップを介してアクセスできます。このような解析モデルは、GIS 用マップを定義できる別の種類のレイヤ プロパティです。
解析とは、結果をマップ レイヤとして処理し、結果の意味内容を比較、視覚化、要約し、理解を深めることです。
帯水層の水深変化
この派生レイヤは、米国のグレート プレーンズに位置するオガラーラ帯水層の水深変化を表しています。濃い赤は水深変化が大きいことを意味しています。オガラーラ帯水層に重なっている領域には、米国で生産量が最大の農業地域のいくつかが含まれています。

フィーチャを編纂、編集するには

マップ レイヤを使用して新しい GIS データをキャプチャできます。基本的に編集者がマップをフィーチャの追加および更新に使用することにより、「空」マップ レイヤにデータが移入されます。新しいデータは、マップから参照されるジオデータベース レイヤに追加されます。

エンタープライズ レイヤは多くの場合、編集/編纂内容を複数のユーザ間で共有する目的に使用されます。そのような例では、データを共有のマルチユーザ ジオデータベースに保存して管理します。

レイヤ プロパティの編集
レイヤをレイヤ プロパティの一部として編集する方法(たとえば、追加可能なフィーチャ タイプ、表示可能なフィーチャ タイプ、デフォルトのフィールド値、スナップ プロパティ、その他)を、定義することができます。

ArcGIS マップ ドキュメントによる、すべての対象プロパティのカプセル化

各 GIS マップは、地理情報とツールの使用方法、GIS マップをキャプチャ、保存し、マップ ドキュメントとして共有する方法に関する仕様または設計です。

ArcGIS Desktop は、あらゆる地理情報エレメント(マップ、レイヤ、ジオプロセシング モデル、ジオデータベースおよびメタデータ)の作成に利用されていることから、GIS を導入し使用するうえで重要な役目を果たしていると言えます。Desktop GIS ユーザであれば、マップとレイヤをこの作業の一部として作成することにより、地理情報の表示、使用、照会、管理、分析の仕方に関するあらゆる側面をカプセル化しておき、後で共有することができます。

ArcGIS Desktop のオンライン機能

上記のような ArcGIS ドキュメントおよびパッケージを Web サービスとして公開することもできます。ArcGIS Server で ArcGIS Desktop を使用して、マップ、ジオデータベース、またはモデルを GIS Web サービスに変換し、全社単位でワークグループを共有することも、あるいは Web 上で不特定多数の人々と共有することもできます。

また、ArcGIS Desktop には Web 上で他のユーザと情報を共有できるオンライン機能も用意されています。そのようなオンライン機能を使用して、他のユーザに接続できます。

ArcMap を使用して、他の ArcGIS ユーザにオンライン接続できます。

(他のユーザ間で共有されている)マップと地理情報のオンライン検索、所有している情報の共有、グループの結合によって、共有とコラボレーションが可能になります。

ArcGIS Desktop を使用した、マップと地理情報の作成、共有

このプロセスは以下のとおりです。

ArcGIS Web マップを使ったオンライン共有

ArcGIS.com には、Web マップの作成と共有用の特別なアプリケーションが用意されています。したがって、誰でも Web マップを使えば、この膨大量の地理情報を参照する GIS コンテンツを共有することができます。

Web マップおよび Web アプリケーションは、プログラミングの手間なしに簡単にアセンブルできます。たとえば、ArcGIS.com でマップ サービスを検索して見つけ出すことにより、Web ブラウザで Web マップを構築してベースマップとして使用することができます。操作レイヤ用の一連のマップ サービスの他に、各操作レイヤが GIS サービスとして公開されたときに取り込まれる関連ツールとウィジェットも追加しておくことができます。たとえば、情報ポップアップ、編集タスク、動的な時間依存レイヤを使用するためのプロパティなどのツールです。

そのような Web マップは、ArcGIS Desktop で作成しておいたコンテンツやサービスを使用して作成されます。それらのエレメントをアセンブルした後の Web マップは、保存して共有できるようになります。Web ブラウザとモバイル クライアントを使用している他のユーザは、共有の Web マップを開いて使用することができます。

ArcGIS Desktop の製品レベル

ArcGIS Desktop はスケーラブルであるため、多様なユーザ ニーズに対応できます。次の 3 つの機能レベルで使用可能です。

  1. ArcView は包括的なデータ利用、マッピング、および解析に焦点を合わせています。
  2. ArcEditor は、高度なジオデータベース編集およびデータ作成機能が追加されています。
  3. ArcInfo は完全なプロ仕様の GIS デスクトップで、包括的な GIS 機能および先進的なジオプロセシング ツールが付属しています。ArcInfo は広範な機能を備えているので、すべての GIS サイトに少なくとも 1 つはコピーをインストールしておくことをお勧めします。

ArcGIS Desktop のオプションのエクステンション

特化されたソフトウェア機能によっては、ArcGIS Desktop のアドオン エクステンションとして販売されているものもあります。各エクステンションを入手すれば、ラスタ ジオプロセシング、3D GIS、ネットワーク解析などの機能を追加できます。

以下は、ArcGIS Desktop エクステンションについて簡単にまとめたものです。

エクステンション

概要

ArcGIS 3D Analyst

  • ArcGlobe:対話的な 3D シーン
  • ArcCatalog でのグローブ ビュー
  • ArcGIS Publisher でのグローブ公開
  • 3D ラスタおよび TIN モデリング ツール
  • グローブ サービスの公開
  • LIDAR およびテレイン データセット

ArcGIS Business Analyst

  • 顧客と店舗の調査
  • 市場浸透度分析
  • 走行時間解析
  • ビジネスおよび人口統計データ

ArcGIS Data Interoperability

  • 任意のデータ形式の直接読み取り、変換、エクスポート
  • データ変換と直接利用のためのツール

ArcGIS Geostatistical Analyst

  • 高度なクリギングおよびサーフェス モデリング
  • 予備的空間データ解析ツール
  • 確率、閾値、エラー マッピング

ArcGIS Network Analyst

  • ネットワークおよび交通解析
  • 最小パス、最寄り施設、配分、巡回セールスマン
  • 高度なネットワーク データ モデリングおよびシミュレーション

ArcGIS Publisher

  • 無料の ArcReader アプリケーションで使用するマップ ドキュメントとグローブ ドキュメントの公開
  • データのパッケージと圧縮
  • オプションのデータ圧縮とロック
  • ArcReader をカスタマイズする開発者向け SDK

ArcScan for ArcGIS

  • スキャンしたドキュメントに対するラスタからベクタへの変換タスクの実行
  • ラスタ編集、スナップ、トレースのツール

ArcGIS Schematics

  • データベースによるスケマティックな描画と表示
  • GIS ネットワークと表形式情報のスケマティック ビュー
  • 複数のスケマティック表現

ArcGIS Spatial Analyst

  • 高度なラスタおよびベクタ ツール
  • 空間モデリング
  • ArcGrid マップ代数演算

ArcGIS Tracking Analyst

  • 時間を基準としたマップの表示と描画
  • 再生ツール(再生、一時停止、早送り、巻き戻し)
  • 時間を基準としたデータの操作(ジオメトリまたは属性が移動し変化するフィーチャ)

Maplex for ArcGIS

  • 高性能なカートグラフィック作成のための高度なラベル配置機能と重なり回避機能
  • 手間のかかる配置作業の単純化
  • ArcInfo に付属

ArcGIS Desktop エクステンションの概要

ArcGIS Desktop のエクステンションについて


7/10/2012