サーフェスの基礎

3D サーフェス モデルは、三次元空間における、現実的または仮想的なフィーチャのデジタル表現です。3D サーフェスの単純な例として、地形、都市部の主要道路、地下のガス鉱床、地下水面の深さを特定するための井戸の深さのネットワークなどがあります。これらはすべて実際のフィーチャの例ですが、導出することも、仮想的なものにすることもできます。導出するサーフェスの例は、各井戸の特定バクテリアによる汚染レベルです。これらの汚染も 3D サーフェスとしてマップできます。仮想的な 3D サーフェスの例として、ビデオ ゲームやコンピュータ シミュレーション環境に見られる種類が多数あります。

3D サーフェスは通常、ポイント、ライン、またはポリゴンのデータをサンプリングして、デジタルの 3D サーフェスに変換する専用アルゴリズムにより導出(計算)されます。ArcGIS では、ラスタTIN、およびテレイン データセットという 3 種類のサーフェス モデルを作成および格納することができます。

以下に、ラスタ、不規則三角形網(TIN)、およびテレインのサーフェスの例を並べて示します。

ラスタ
TIN
テレイン

これら 3 種類のサーフェス モデルは、さまざまなデータ ソースから作成できます。サーフェス モデルを作成するには、大別して内挿と三角形分割という 2 つの方法があります。内挿法には、IDWスプラインクリギング自然近傍などがあります。三角形分割したサーフェスは、TIN の作成または複数の要素を既存の TIN に追加することによって作成できます。また、テレイン データセット、TIN、およびラスタのサーフェス モデル間での変換もできます。

ラスタ、TIN、およびテレインのサーフェスはすべて、ファンクション サーフェス タイプです。ファンクション サーフェスは、無数のポイントによって変化する値の連続した広がりです。たとえば、地表上のあるエリアのポイントは、高さ、フィーチャへの近さ、特定の化学物質の濃度などによって変わります。これらの値はいずれも三次元の X、Y、Z 座標系の Z 軸上で表現できるので、しばしば Z 値と呼ばれます。

サーフェス モデルを使用すると、サーフェス情報を GIS に格納できます。サーフェスには無数のポイントがあるので、あらゆるポイントで Z 値を測定したり記録したりすることは不可能です。サーフェス モデルは、サーフェス上の別々のポイントで値のサンプルを取り、次にこれらのポイント間の値を内挿してサーフェスを近似します。

下の図は、あるエリアの化学物質濃度サーフェス モデルです。ポイントは、濃度サンプルが取られた位置を示しています。

エリアの化学物質濃度サーフェス モデル

ラスタ サーフェス

GIS データは一般に、ラスタとベクタの 2 つの主な種類に分類できます。ベクタ データは、円弧、ノード、ライン、および地理空間データを構成する関係で定義されます。実世界のフィーチャとサーフェスは、GIS に格納されるベクタ データとして表すことができます。ラスタ データは、セル マトリックスを四角形に配列したもので、行と列で表されます。各セルは、定義した地表の正方形領域を表し、セル全体について静的な値を保持します。サーフェスは、ラスタ データとして表すことができ、そのデータの各セルが実世界の情報の値を表します。ラスタ データには、標高データ、汚染濃度、地下水面などがあります。

ラスタ データの詳細

ラスタ データはさらに、主題、ピクチャ、連続データなどのカテゴリに分類できます。ラスタ データとして表されるサーフェスは、連続データの形式です。連続データは、フィールド データ、非離散データ、またはサーフェス データと呼ばれることもあります。連続したサーフェスは、サーフェス上の各位置が集積の度合いを表す事象、あるいは空間内の固定位置または放射ソースからの関係を示す事象を表します。

標高モデルは、ラスタ サーフェス モデルの例の 1 つです。写真測量法でスポット標高として得た固定ポイントを使用して、標高間の内挿によりデジタル標高モデル(DEM)を構成できます。ラスタ サーフェスは通常、均一間隔のセルを持つグリッド形式で格納されるので、セルが小さいほどグリッドの位置精度が高くなります。下の例では、高精度グリッド(左)と低精度グリッド(右)を比較しています。

高精度グリッド
低精度グリッド

個々のフィーチャの位置精度(たとえば、山の頂上)は、グリッド セルのサイズに直接関連しています。上の例では、精度が非常に低い標高サーフェス データを、2 次元の平面ビューのサーフェス モデルとして描画しています。ラスタ サーフェスは、陰影起伏を持つ高解像度の DEM(下図)など、三次元表示用の他のイメージ ソースを使用して生成し、モデル化できます。

陰影起伏を持つ高解像度の DEM

ラスタ サーフェスは、無数のポイントによって変化する値の連続した広がりです。たとえば、あるエリアのポイントは、高さ、フィーチャへの近さ、特定の化学物質の濃度などによって変わります。これらの値はいずれも三次元の X、Y、Z 座標系の Z 軸上で表現して、連続的な 3D サーフェスを生成できます。

ラスタ サーフェス データは、Z 値、および X と Y の位置座標を表す属性値を持つ等しいサイズのセルのグリッドとしてサーフェスを表します。

処理に ArcGIS 3D Analyst を使用する場合は、多数のラスタ データセットを使用するか、作成する必要があります。ラスタを使用するときには、3D Analyst でラスタ データがどのように表現されるかを理解することが重要です。

TIN サーフェス

不規則三角形網(TIN)は長年 GIS コミュニティで使用されている、サーフェス形状のデジタル表現方法です。TIN はベクタ ベースのデジタル地理データの 1 形式で、頂点(ポイント)のセットを三角形に結ぶことにより構成されます。頂点は一連のエッジに接続され、三角形ネットワークを形成します。これらの三角形を構成するための内挿法には、ドローネ三角形分割や距離の順序付けなど、さまざまな方法があります。ArcGIS は、ドローネ三角形分割法をサポートしています。

三角形分割の結果は、ドローネ三角形分割の基準を満たし、ネットワーク内のどの三角形の外接円の内部にも他の頂点がないことを保証します。ドローネ基準が TIN 上のどこでも満たされる場合、すべての三角形の最小の内角は最大になります。その結果、細長い三角形は最大限回避できます。

TIN のエッジは隣接して重複しない三角形を形成し、尾根線や河川などのサーフェス内で重要な役割をするライン フィーチャの位置を表現するときに使用できます。下の図では、TIN のノードとエッジ(左)と、TIN のノード、エッジ、およびフェイス(右)を示しています。

TIN のノードとエッジ
TIN のノード、エッジ、およびフェイス

TIN のノードはサーフェス上に不規則に配置できるので、サーフェスの変化が激しいエリアや詳細を調べたいエリアでは、TIN を高解像度に設定し、変化が少ないエリアでは、TIN を低解像度に設定することができます。

TIN 作成に使用する入力フィーチャは、TIN 内のノードまたはエッジと同じ位置にあります。このため、TIN は同時に既知のポイント間の値をモデル化しながら、入力データの精度すべてを維持することができます。山頂、道路、河川など、サーフェス上に正確に位置づけられたフィーチャを、TIN への入力フィーチャとして含めることができます。

TIN モデルの使用範囲はラスタ サーフェス モデルより狭く、作成と処理に要する時間が長い傾向があります。優れたソース データを取得するコストは高く、TIN の処理はデータ構造が複雑なため、ラスタ データの処理よりも効率が落ちる傾向にあります。

一般に、TIN はエンジニアリング アプリケーションなどで小さいエリアの高精度モデリングに使用されています。これらの分野で、面積、表面積、および体積の計算に役立ちます。

TIN サーフェスの詳細

テレイン サーフェス

ArcGIS で標高データをサーフェスとして表現することは、ArcGIS 9.2 でテレイン データセットが実装されるまで容易ではありませんでした。LIDAR や SONAR など、リモート検出される標高データのポイント計測数は数十万~数億点です。この種のデータを管理し、モデル化することは、現在利用可能な多くのハードウェアやソフトウェアでは面倒な作業になりがちです。テレイン データセットにより、ソース データを順位付きセットに入れ、TIN ピラミッドを即座に生成するための一連のルールと条件を生成できます。

テレイン データセットは、ジオデータベースの多数のポイント ベースデータを管理する効率的な方法で、高品質で正確なサーフェスを即座に生成します。LIDAR、SONAR、および標高の計測値は、数十万~数十億のポイント数に達することがあります。これらの種類のデータから 3D 製品の構成、カタログ化、および生成を行うことは多くの場合困難で、高コストです。テレイン データセットでは、これらのデータ管理の障害を解決し、ソース データを編集して、高品質の TIN を可変の解像度で生成できます。

非常に大型の TIN のレンダリングは非常に困難で、その原因の 1 つとしてビデオ カードなどのハードウェアによる制限があります。ただし、テレインは、解像度を最適化して視覚化する必要があるエリアのレンダリングに有効です。このため、ArcGlobe または ArcMap に小縮尺のエリアがある場合、テレインは少数のノードを活用して画面に TIN のレンダリングを生成します。ただし、エリアを大縮尺に拡大する場合、最大の解像度(そのエリアのノードをすべて活用)が使用され、TIN が即座に生成されます。多数のノードを使用してスタディ エリアの小さな部分のみがレンダリングされること、またはリアルタイムでの低解像度 TIN の生成にサブサンプリングされたノードのコレクションが使用されることが、明らかな利点です。

以下の図に、この例を示します。

TIN のピラミッドの概念

テレインは、パーソナル、ファイル、または ArcSDE のジオデータベースのフィーチャ データセット内にあります。フィーチャ データセット内のその他のフィーチャクラスは、テレインを構成可能で、または実際にテレインに組み込むことができます。これはつまり、テレイン データセットの作成後に、ソース データを削除できるということです。以下の図に、TIN のピラミッドの生成に複数種類のフィーチャクラスを使用できることを示します。

ベクタ計測値からテレイン サーフェスへの変換
可変解像度の TIN ピラミッド(テレイン データセット)に複数のソース データを使用する例

テレイン データセットは、ソース データの組み込みまたは参照ができるという点が特徴です。各ポイント計測値のインデックス作成を通じて、それぞれが少数の連続する関連ノード(ソース ポイント)を持つ TIN ピラミッドのセットが生成されます。これにより、ビューアの縮尺に必要などの解像度でも、ArcMap や ArcGlobe は TIN を即座に生成できます。データ表示の縮尺が小さいほど必要なポイントが少なくなるため、より解像度の低い TIN がレンダリングされます。ビューアで拡大すると、必要なデータセットのエリアは小さくなりますが、解像度が高くなります。ポイント密度が増加しますが、高解像度のサーフェスは表示エリアでのみレンダリングされるので、パフォーマンスは低下しません。

テレイン データセットは、ArcView、ArcEditor、および ArcInfo のすべてのライセンス レベルで読み取りと表示がサポートされています。テレインは、ArcGIS 3D Analyst エクステンションを持つ ArcEditor と ArcInfo で作成できます。ArcScene はテレイン データセットをサポートしていません。

テレインの詳細については、テレイン データセットのヘルプの以下のページをご参照ください。


7/10/2012