OD コスト マトリックス解析
OD コスト マトリックスは、複数の起点から複数の終点へのネットワークに沿って最小コスト パスを検出し、計測します。OD コスト マトリックス解析を設定するとき、検出する終点の数と検索する最大距離を指定できます。
下の図では、OD コスト マトリックスは、各起点から最も近い 4 つの終点までの最小コスト パスを検出しています。出力形状のタイプは、直線を生成するように設定されています。
OD コスト マトリックス解析がネットワークに沿ったラインを出力しない場合でも、ライン属性テーブルに格納されている値は、直線距離ではなくネットワーク距離を反映します。
最寄り施設解析および OD コスト マトリックス解析で実行される内容は、ほとんど同じです。しかし、主に出力と計算速度に違いがあります。OD コスト マトリックス解析は、結果をより迅速に生成しますが、ルートの正確な形状またはそのルート案内を返すことができません。これは、大規模な MxN 問題を迅速に解決するように設計されています。したがって、ルートの形状およびルート案内を生成するのに必要な情報を内部に保持していません。最寄り施設解析は、ルートとルート案内を返しますが、OD コスト マトリックス解析よりも遅い速度で解析を実行します。ルートの正確な形状またはルート案内が必要な場合は、最寄り施設解析を使用します。その必要がない場合は、OD コスト マトリックス解析を実行して計算時間を短縮します。
直線距離を検出するほうがより適している場合は、代わりに [ポイント間距離(Point Distance)] ジオプロセシング ツールを使用することを検討してください。
OD コスト マトリックス解析の結果は、多くの場合、ネットワーク コストのほうが直線コストよりも適切である他の空間解析の入力になります。たとえば、人工環境における人の移動を予測するとき、人は道路と歩道を移動する傾向があるため、ネットワーク コストを使用したほうがより効果的にモデリングできます。
OD コスト マトリックスを作成するためのワークフローは、その他のネットワーク解析と同様です。
OD コスト マトリックス解析レイヤ
OD コスト マトリックス解析レイヤには、OD コスト マトリックス解析のすべての入力、パラメータ、結果が格納されます。
OD コスト マトリックス解析レイヤの作成
OD コスト マトリックス解析レイヤを作成するには、[Network Analyst] ツールバーで [Network Analyst] → [新規 OD コスト マトリックス] の順にクリックします。
OD コスト マトリックス解析レイヤを作成すると、それはその 6 つのネットワーク解析クラス(起点、終点、ライン、ポイント バリア、ライン バリア、およびポリゴン バリア)とともに [Network Analyst] ウィンドウに表示されます。
OD コスト マトリックス解析レイヤは、コンテンツ ウィンドウにもコンポジット レイヤとして表示されます。これには [OD コスト マトリックス] という名前が付けられますが、マップ ドキュメントに同じ名前の OD コスト マトリックス レイヤがすでに存在する場合は [OD コスト マトリックス 1]、それがすでに存在する場合は [OD コスト マトリックス 2] などのように連番で名前が付けられます。フィーチャ レイヤには、起点、終点、ライン、ポイント バリア、ライン バリア、およびポリゴン バリアの 6 種類があります。この 6 種類のフィーチャ レイヤは、それぞれがデフォルトのシンボルを持ちます。このシンボルは、[レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスで変更できます。
OD コスト マトリックス解析のクラス
OD コスト マトリックス解析レイヤは、6 つのネットワーク解析クラスで構成されます。
次のセクションでは、各クラスの概要とそのプロパティの説明を示します。
起点クラス
このネットワーク解析クラスには、終点へのパスを生成するときに開始ポイントとして機能するネットワーク ロケーションが格納されます。
OD コスト マトリックス解析レイヤが作成されるとき、起点クラスは空です。これは、ネットワーク ロケーションの追加時に挿入されます。解析を実行するには、少なくとも 1 つの起点と 1 つの終点が必要です。
起点のプロパティ
入力フィールド |
説明 |
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ObjectID |
システムで管理される ID フィールド。 |
Shape |
ネットワーク解析オブジェクトの地理的な位置を示すジオメトリ フィールド。 |
Name |
ネットワーク解析オブジェクトの名前。 |
TargetDestinationCount |
このプロパティには、起点ごとに検出する終点の数が設定されます。このプロパティの値が NULL の場合、解析レイヤの [レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスの [解析の設定] タブに指定された終点数を使用して解析が行われます。 |
Cutoff_[Impedance] (たとえば、DriveTime 属性がネットワークのインピーダンスである場合は「Cutoff_Drivetime」となります) |
このプロパティをしようして、OD コスト マトリックスが終点を検索する範囲を制限できます。カットオフ値を超える終点は対象から外されます。 起点にこのプロパティが設定されていない場合は、[レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスの [解析の設定] タブに設定されているデフォルトのカットオフ値が適用されます。デフォルトのカットオフ値も設定されていない場合は、すべての終点が解析の対象となります。 |
ネットワーク ロケーション フィールド
|
これらの 4 つのプロパティの組み合わせによって、オブジェクトが配置されているネットワーク上のポイントが示されます。 |
CurbApproach |
このプロパティを使用して、車両が出発するときに、起点が車両のどちら側になるかを指定できます。車両が車両の片側でのみ起点から出発する必要がある解析の場合は、[Right side of vehicle(車両の右側)](1)または [Left side of vehicle(車両の左側)](2)を使用できます。車両の両側で出発できる場合は、[Either side of vehicle(車両の両側)](0)を使用します。 CD コスト マトリックス解析では、[No U-turn(U ターンなし)](3)の値は [Either side of vehicle(車両の両側)] と同様に機能します。 |
入力/出力フィールド |
説明 |
---|---|
Status |
このフィールドは、以下に示す値のドメインによって制約されます(それぞれのコード値は括弧内に示されています)。
解析が終了すると、以下のステータス値のいずれかを使用してステータスを変更できます。
|
終点クラス
このネットワーク解析クラスには、起点からのパスを生成するときに終了ポイントとして機能するネットワーク ロケーションが格納されます。
新しい OD コスト マトリックス解析レイヤが作成されるとき、終点クラスは空です。これは、ネットワーク ロケーションの追加時に挿入されます。解析を実行するには、少なくとも 1 つの起点と 1 つの終点が必要です。
終点のプロパティ
入力フィールド |
説明 |
---|---|
ObjectID |
システムで管理される ID フィールド。 |
Shape |
ネットワーク解析オブジェクトの地理的な位置を示すジオメトリ フィールド。 |
Name |
ネットワーク解析オブジェクトの名前。 |
ネットワーク ロケーション フィールド
|
これらの 4 つのプロパティの組み合わせによって、オブジェクトが配置されているネットワーク上のポイントが示されます。 |
CurbApproach |
このプロパティを使用して、車両が到着するときに、終点が車両のどちら側になるかを指定できます。車両が車両の片側でのみ終点に到着する必要がある解析の場合は、[Right side of vehicle(車両の右側)](1)または [Left side of vehicle(車両の左側)](2)を使用できます。車両の両側で到着できる場合は、[Either side of vehicle(車両の両側)](0)を使用します。 CD コスト マトリックス解析では、[No U-turn(U ターンなし)](3)の値は [Either side of vehicle(車両の両側)] と同様に機能します。 |
入力/出力フィールド |
説明 |
---|---|
Status |
このフィールドは、以下に示す値のドメインによって制約されます(それぞれのコード値は括弧内に示されています)。
解析が終了すると、以下のステータス値のいずれかを使用してステータスを変更できます。
|
ライン クラス
ライン ネットワーク解析クラスには、結果として得られた起点から終点までのパスに関する情報が格納されます。その他のフィーチャ レイヤと同様に、そのシンボルはその [レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスからアクセスして変更できます。
ライン クラスは、出力のみのクラスであり、解析が完了するまで空です。OD コスト マトリックス解析は、多数のラインを生成する傾向があるため、[Network Analyst] ウィンドウにはライン オブジェクトは表示されず、ラインの数のみが表示されます。個々のラインはライン フィーチャクラスの属性テーブルで確認できます。
OD コスト マトリックス解析レイヤにラインを表示することを選択した場合、ラインは直線として表示され、ジェネラライズされます。ただし、そのコスト属性は、常に最小コスト ネットワーク パスを報告します。
ラインのプロパティ
出力フィールド |
説明 |
---|---|
ObjectID |
システムで管理される ID フィールド。 |
Shape |
ネットワーク解析オブジェクトの地理的な位置を示すジオメトリ フィールド。 |
Name |
ネットワーク解析オブジェクトの名前。 |
OriginID |
関連付けられた、ラインの起点の一意の ID。 |
DestinationID |
関連付けられた、ラインの終点の一意の ID。 |
DestinationRank |
関連付けられた起点に対して検索されたすべての終点の間でのランク付け。 起点に最も近い終点はランク 1 です。 |
Total_[Impedance] (たとえば、Minutes 属性がネットワークのインピーダンスである場合は「Total_Minutes」となります) |
関連付けられた起点と終点の間をネットワークに沿って移動するのにかかる累積コスト。このフィールドは、インピーダンス属性および累積属性に対して生成されます。 |
ポイント、ライン、およびポリゴン バリア
バリアは、ネットワークの構成要素を一時的に規制したり、それにインピーダンスを追加したり、そのインピーダンスをスケーリングしたりするのに使用します。新しいネットワーク解析レイヤが作成されるとき、バリア クラスは空です。バリアは、それにオブジェクトを追加するときにのみ設定されます(バリアを追加することは必須ではありません)。
バリアは、すべてのネットワーク解析レイヤで使用可能です。したがって、バリアについては、別のトピックで説明されています。
OD コスト マトリックスの解析パラメータ
解析パラメータの設定は、解析レイヤの [レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスで行います。このダイアログ ボックスには、いくつかの方法でアクセスできます。
ネットワーク解析レイヤの [レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスを開く方法の詳細
[解析の設定] タブ
ここでは、解析レイヤで設定できるパラメータについて説明します。これらのパラメータは、解析レイヤの [レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスの [解析の設定] タブで設定できます。
インピーダンス
起点と終点の間のルートを決定するときに最小化されるインピーダンスとして、任意のコスト属性を選択できます。たとえば、Minutes 属性を選択した場合、起点から終点への最短のルートが結果として出力されます。
規制
解析の実行中に適用される必要のある規制属性を選択できます。一方通行に従う必要のある車両(たとえば、緊急車両以外の車両)を対象とするソリューションの検索には、一方通行(Oneway)などの規制が使用されます。ネットワーク データセットに重量規制や高さ規制などの追加の規制属性が含まれる場合は、それらの規制も使用できます。
規制属性は動的属性と共に使用できます。たとえば、車高がトンネルより高い場合は、エッジを規制することが可能です。
デフォルトのカットオフ値
終点の検索時に、ArcGIS Network Analyst はインピーダンスのデフォルトのカットオフ値を使用できます。カットオフ値を超える終点は対象から外されます。
検出する終点の数
各起点からすべての終点へのコスト マトリックスを生成することができます。起点ごとに検出する終点の数を制限することもできます。
ジャンクションでの U ターン
ArcGIS Network Analyst では、U ターンをすべての場所で許可、どの場所でも許可しない、袋小路(行き止まり)のみで許可、または交差点と袋小路のみで許可するように設定できます。U-ターンを許可するということは、車両がジャンクションで方向転換し、同じ道路を引き返すことができるということを意味します。
出力形状のタイプ
OD コスト マトリックスの結果として得られたラインは、直線ジオメトリで表すことも、ジオメトリなしで表すこともできます。どちらの場合も、ルートは常にネットワークに沿って計算され、ルート解析と同じ総コストを属性テーブルに返します。
- [直線] - 直線が起点と終点を接続します。
- [なし] - ライン オブジェクトにジオメトリが使用されません。これは、起点と終点の数が多く、出力ライン形状が必要なく、OD コスト マトリックス テーブルのみが必要な場合に便利です。
階層を使用
ネットワーク データセットが階層属性を持つ場合、解析に階層を使用できます。階層を使用すると、解析は下位ランクのエッジよりも上位ランクのエッジを優先します。階層解析は、より高速で、運転者が遠回りであっても一般道路の代わりに高速道路を利用する状況をシミュレートするのに使用できます。一方、階層を使用しない場合、ネットワーク データセットの正確なルートが検索されます。
無効なロケーションを除外
このプロパティを使用すると、無効なネットワーク ロケーションを除外でき、有効なネットワーク ロケーションのみから解析レイヤを解決できます。このオプションがオフになっており、ネットワーク ロケーションが未配置である場合は、解析が失敗する可能性があります。いずれの場合も、解析では無効なロケーションは無視されます。
[累積] タブ
[累積] タブでは、ライン オブジェクトに累積されるコスト属性をネットワーク データセットから選択できます。これらの累積属性は、参考情報としてのみ使用されます。ソルバは、解析レイヤの [インピーダンス] パラメータで指定されているコスト属性のみを使用して OD コスト マトリックスを計算します。
累積されるコスト属性ごとに、Total_[Impedance] プロパティが解析によって出力されるルートに追加されます。
[ネットワーク ロケーション] タブ
[ネットワーク ロケーション] タブのパラメータは、ネットワーク ロケーションを検索し、そのプロパティの値を設定するのに使用されます。