GIS アプリケーションの実装手順
Web GIS アプリケーションを公開するプロセスは、繰り返しのプロセスです。簡単なプロトタイプ アプリケーションを最初に作成し、これを使用して知識を深めていくのが非常に有効です。このプロセスを踏むことによって、ArcGIS Server の実践練習を開始し、サーバを使用して GIS のマップ、データおよびジオプロセシング モデルを作成して公開する方法を習得できます。このことで、Web アプリケーション設計の実装に有効なアイデアや理解が育まれます。
次に、Web GIS アプリケーションとサービスの実装に役立つ手順を示します。
Web GIS マッピング アプリケーションを作成する手順
- ユーザと実行対象タスクを把握します。このアプリケーションを使用するのは誰で、その業務は何か、組織の幹部用か、組織で働く人が使用するためのものか、一般の人(市や郡の住民など)に使用されるアプリケーションか、などを特定します。
対象のユーザ、GIS でサポートされる対象のタスク、およびユーザの GIS マッピング知識レベルを把握すると、GIS アプリケーションの設計および配置上の他の重要事項を特定しやすくなります。
- GIS アプリケーションの使用によって得ようとする情報の中で、特に重要なものを把握します。これは、通常、GIS アプリケーションの使用によって回答される質問を特定することから始まります。
GIS アプリケーションを使用すると、特定の質問の回答を導いたり、状況、選択肢またはシナリオに関する情報を視覚化したり、これらの状況を伝えてよく理解してもらったりする際に役立ちます。この GIS アプリケーションは、ユーザがワークフローの一部を実行したり、特定の質問の回答を導いたりする際に役立つでしょう。取り組むタスクや回答する質問を明確にすることは、後でマップに含める情報や、ユーザが GIS マップを操作するときに使用するタスクとツールを決める際に役立ちます。次に、GIS アプリケーションを使用して回答する質問の例を示します。
- 顧客はどこにいますか。
- 新しい店または施設をどこに作るべきですか。
- この緊急事態の影響を受けるのは誰ですか。最初の応答者はどこにいますか。影響を受ける高齢者はどこにいますか。子供はいますか。 避難場所をどこに設置すべきですか。
- 停電に対応する最善の方法は何ですか。
- 市内で最も道路が混雑するエリアはどこですか。
- この代替案で見込まれる土地区画の課税標準額はいくらですか。
- 新しい開発の環境への影響はどうですか。
- 幹線道路の近くに住む子供たちへの大気環境の影響はどうですか。
- 水位が 1 メートル上がったら、どうなりますか。
- 使用する GIS マップ アプリケーションを選択します。使用できる GIS マップ アプリケーションの選択肢は多いため、この作業は困難に思えるかもしれません。しかし、アプリケーション配置上の優先傾向はすでにわかっている場合がほとんどです。
プロフェッショナル GIS ユーザと編集者は、通常、ArcGIS Desktop を使用します。モバイル ワーカは、ArcGIS Mobile アプリケーションを使用します。一般のユーザは、Web アプリケーションや Google Earth のようなエクスプローラ アプリケーション、あるいは、より GIS を中心とした ArcGIS Explorer のようなアプリケーションを使用するかもしれません。採用しようとしているアプリケーションを選択して試し、そのアプリケーションの実装や配置について理解を深めるのも 1 つの方法です。ユーザが利用する GIS ツールやマップ、データを知ると、選択肢を絞り込むのに役立ちます。
- ベースマップを決めます。また、ユーザがベースマップ上で行うナビゲーションやその他の操作も決めます。GIS マップ アプリケーションのベースマップとして考えられる選択肢は多くあります。たとえば、次のものがあります。
- ArcGIS Online のマップ サービスを使用
- 他の組織が提供するベースマップ サービスを使用
- 独自のベースマップを作成して提供
- Google Earth、Google Maps、または Microsoft Bing Maps をベースマップとして使用
- 独立したマップ レイヤのセットを使用してマップ アプリケーションを配置
- 操作レイヤを決めます。これらのマップ レイヤは、GIS マップ アプリケーションでタスクの実行に使用されます。操作レイヤは、刻々と変化するセンサーの観測値を示すマップ レイヤ、ステータス レイヤ、編集タスクの実行に使用されるレイヤ、他の専用タスクの実行に使用されるレイヤなど、動的な情報の表示に使用されます。操作レイヤに関連付けられるツールは、ターゲット ユーザの特定のタスクをベースにしている傾向があります。
GIS モデリングと分析の結果として生成される操作レイヤもあります。これらの多くは、いくつかのプロパティと位置を、GIS アプリケーションからの入力値とし、GIS サーバへのリクエストとして送信されます。GIS サーバは、モデルを実行して一連の結果を生成します。次に、サーバから GIS アプリケーションへ、結果が操作マップ レイヤとして返されます。これらの操作レイヤには、通常、結果の視覚化、分析、サマリ処理、図式化、比較およびレポート作成を支援するツールが必要です。詳細については、「操作マップ レイヤの構築」をご参照ください。
- 各操作レイヤに使用する必要のあるツールを決めます。各操作レイヤには、ユーザが行う必要のある操作とタスクがあります。それは、マップ レイヤをレンダリングする特別な方法であったり、結果の図表化と比較に使用するツールであったりします。
サポートする必要のある操作の短いリストを作成することが大事です。これらを、GIS マップ アプリケーションですぐに使用できるケーパビリティと比較します。足りないツールを追加する(カスタム プログラミングの使用、または、ジオプロセシング モデルを記述し、ArcGIS Server を使用してジオプロセシング タスク サービスとして公開するなど)計画を立てます。
- ArcMap(3D マップの場合は ArcGlobe)を使用してベースマップを作成しオーサリングします。通常、Web 上の GIS マップ アプリケーションをサポートするために、多くのマップ ドキュメントが作成されます。GIS ベースマップ(GIS がベースマップのソースとして使用される場合)と各操作レイヤ用のその他のマップ サービスに対し、少なくとも 1 つは作成されます。
- ジオプロセシング モデルを記述し、ArcGIS Server のジオプロセシング サービスとして公開して GIS マップに組み込みます。この段階で、必要なジオプロセシング モデルを構築して ArcGIS Server にジオプロセシング サービスとして公開し、ユーザが GIS アプリケーションからタスクとしてアクセスできるようにします。ユーザがジオプロセシング サービスから導出された結果を操作するためにアプリケーションで必要とされるソフトウェア ツールについても検討する必要があります。
詳細については、「ArcGIS Server によるジオプロセシングの概要」をご参照ください。
- 各サービスのコンテンツのホストと提供の仕方(およびサービスのホスト)を決めます。これには、ローカル GIS サーバでホストされるマップ サービスの構築以外の作業が含まれます。
次のような事項について検討する必要があります。
- アプリケーションと一緒に配置する必要のあるコンテンツ(たとえば、モバイル機器に搭載する必要のあるモバイル ベースマップなど)があるかどうかを特定します。
- GIS アプリケーション内からアクセスするマップ レイヤ コンテンツをすべて挙げ、コンテンツを配信する GIS サービスがあることを確認します。
- ArcGIS Server からアクセスされるツールのリストをまとめます。
- GIS マップ アプリケーションと GIS サービスを構築し、テストします。詳細については、ArcGIS Server ヘルプの「Manager による Web アプリケーションの作成」をご参照ください。
- GIS マップ コンテンツ、サービスおよびアプリケーション ロジックを保守する方法を決めます。例については、ArcGIS Server ヘルプの「ジオプロセシングによるキャッシュの作成と更新の自動化」をご参照ください。