演習 3: 土壌汚染と甲状腺がんの罹患率のビジュアライゼーション
1986 年、ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所で発生した致命的な事故により、放射能を帯びたちりがベラルーシに大量に降り注ぎました。そのとき以来、科学者は、事故の影響について詳細な調査を行いました。そのデータを研究するための 1 つのツールが 3D による視覚化です。この演習では、ベラルーシで収集されたポイント データから 2 つのサーフェスを作成します。一方のポイント セットには、土壌中の CS137 の濃度の測定値が格納されています。CS137 とは、事故により放出された放射性同位体の 1 つです。もう一方のポイント セットには、地区別に集計された甲状腺がんの罹患率と、その地区の中央近くに設置されたサンプル ポイントが表示されます。
CS137 の濃度と甲状腺がんのデータは、サハロフ記念国際環境大学により提供されています。
ポイント データを表示する
最初にチェルノブイリのシーンを開き、ポイント データを表示します。
- [スタート] → [すべてのプログラム] → [ArcGIS] → [ArcScene 10] の順にクリックして、ArcScene を起動します。
- ArcScene の [はじめに] ダイアログ ボックスで、[既存のシーン] → [詳細検索] の順にクリックします。
- 「Exercise3」に移動し、「Chernobyl」という ArcScene ドキュメントをクリックします。
-
[開く] をクリックします。
CS137 の土壌測定値が小さなポイントのシンボルで表示されます。等級カラー ランプを使用して汚染度が表示されます。地域の甲状腺がん罹患率は大きなシンボルで表示され、別のカラー ランプが使用されます。
3D ポイント フィーチャを作成する
土壌中の CS137 のサンプルは、複数の属性を指定した 2D ポイントです。2D ポイントを 3D で表示するには、立ち上げ式あるいは基準高度を設定します。Z 値をフィーチャのジオメトリに組み込むと、サーフェスまたは属性から基準高度を設定する必要なく 3D で直接表示できます。
この演習では、3D Analyst ジオプロセシング ツールを使用する必要があります。そのため、3D Analyst エクステンションを有効にして、使用可能なすべてのツールにアクセスできるようにしておきます。[検索] ウィンドウを使用すると、ツールの名前または機能のキーワードを指定して個々のツールを素早く検索できます。
- ArcScene ウィンドウの右側にある、[検索] タブの上にポインタを移動するか、[検索] タブをクリックして、タブを表示します。
- [ツール] をクリックして、[検索] ウィンドウの検索フィルタを設定します。
- 検索ボックスの中をクリックして、「属性でフィーチャを 3D に変換 (Feature to 3D By Attribute)」と入力して、ENTER キーを押すか、検索 ツールをクリックします。
- 検索結果の [属性でフィーチャを 3D に変換(Feature to 3D By Attribute)] をクリックします。
- ダイアログ ボックスの [入力フィーチャ] ドロップダウン リストで [Subsample_1994_CS137] を選択します。
- [参照] ボタンをクリックして、[出力フィーチャクラス] の場所を 3D Analyst チュートリアル データの 3D_Default ジオデータベースに設定します。続いて出力フィーチャ名として「CS137_3D」と入力します。
- [高さフィールド] ドロップダウン リストで [CS137_CI_K] を選択します。
- [OK] をクリックします。
フィーチャは 3D ポイント フィーチャに変換されますが、まだフラットな平面で表示されているように見えます。CS137 の濃度範囲は、0 ~ 208.68 とデータの水平的な広がりに比べると小さい範囲にとどまっているからです。
高さ強調を大きくする
フィーチャ ジオメトリに高さを組み込んで新しいポイントを表示し、シーンを強調します。
- [表示] をクリックし、[シーン プロパティ] をクリックします。
- [一般] タブをクリックします。
- [範囲から計算] をクリックします。
- [OK] をクリックします。
- [全体表示] ボタンをクリックします。
- コンテンツ ウィンドウにある [Subsample_1994_CS137] のボックスをオフにし、そのボックスの横のマイナス記号をクリックして分類を非表示にします。
カラムを立ち上げる
データを調査する方法の 1 つに、ポイントを 3D 空間で表示する方法があります。また、ポイントを円柱状に立ち上げる方法もあります。ここでは、甲状腺がんポイントを円柱状に立ち上げ、汚染データと比較します。
- [ThyroidCancerRates] を右クリックし、[プロパティ] をクリックします。
- [立ち上げ] タブをクリックします。
- [レイヤのフィーチャを立ち上げます] をオンにし、[計算] ボタンをクリックします。
- [INCID1000](1,000 人あたりの罹患率)をクリックします。
- 「*100」と入力します。
- [式の設定] ダイアログ ボックスで [OK] をクリックします。
- [レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスで [OK] をクリックします。
ポイント サンプル データからサーフェスを作成する
サンプル ポイントの地点で CS137 の土壌濃度がどうなっているかはわかりますが、サンプル ポイントの中間地点で土壌濃度がどうなっているのかはわかっていません。サンプル ポイントの中間地点の情報を得る方法の 1 つに、ポイント データからラスタ サーフェスを内挿する方法があります。このようなサーフェスを内挿する方法は多数あるため、精度が異なるさまざまなモデルが生成されます。この演習では、IDW(Inverse Distance Weighted)内挿法を使用して、サンプルからサーフェスを内挿します。IDW 内挿法では、影響度の高い近接ポイントと影響度の低い遠く離れたポイントを使用して、データ ポイントの値から出力ラスタの各セルの値を計算します。
- [カタログ] タブをクリックして、[カタログ] ウィンドウを展開します。
- スクロールして [Toolboxes] を見つけます。
- [Toolboxes] を展開し、[System Toolboxes] をクリックして、[3D Analyst Tools] ツールボックスを展開します。
- [ラスタの内挿] ツールセットに移動して、下のウィンドウに表示される [IDW] ジオプロセシング ツールをダブルクリックします。
- [入力ポイント フィーチャ] ドロップダウン リストで [Subsample_1994_CS137] を選択します。
- [Z 値フィールド] ドロップダウン リストで [CS137_CI_K] を選択します。
- [出力ラスタ] の場所がデフォルト ジオデータベース(3D_Default.gdb)に設定されていることを確認して、出力ラスタ名を「CS137_IDW」に変更します。
- [出力セル サイズ] ボックス内をクリックし、その値を「5000」に増やします。
-
[OK] をクリックします。
ArcScene によりサーフェスが内挿され、シーンに追加されます。
内挿されたサーフェスを表示する
これでサーフェスがシーンに追加されたので、CS137 の濃度が非常に高い地域が 2 つあることが分かります。三次元表示でサーフェスを表示しますが、その状態をよく見えるようにするために新しいカラー ランプを使用します。
- [CS137_IDW] を右クリックし、[プロパティ] をクリックします。
- [シンボル] タブをクリックして、[表示] カテゴリから [ストレッチ] を選択します。
- [カラー ランプ] ドロップダウン矢印をクリックし、新しいカラー ランプをクリックします。
- [基準高度] タブをクリックします。
- [指定したサーフェス上に配置する] をクリックします。
- [OK] をクリックします。
- コンテンツ ウィンドウで [CS137_3D] をオフにします。
CS137 汚染の内挿されたサーフェスが甲状腺がん罹患率データとともに表示されます。
次に、甲状腺がんの罹患率が最も高い調査地点を選択します。
属性によりフィーチャを選択する
特定のデータ セットやフィーチャに着目することが重要になる場合があります。シーンのフィーチャは位置や属性で選択できます。また、[フィーチャ選択] ツールでクリックして選択することもできます。罹患率が一番高い地域を見つけるために、属性によって調査地域を選択します。
- [選択] をクリックし、[属性検索] をクリックします。
- [レイヤ] ドロップダウン矢印をクリックし、[ThyroidCancerRates] を選択します。
- フィールド リストの [INCID1000] をダブルクリックします。
- [>=] ボタンをクリックします。
- 「0.5」と入力します。
- [確認] をクリックして、作成した選択式をチェックします。
- [適用] をクリックします。
- [閉じる] をクリックします。
フィーチャの属性を表示する
選択した地域の属性を調べ、それらの地域で発生した甲状腺がんの件数を確認します。
- [ThyroidCancerRates] を右クリックして、[属性テーブルを開く] をクリックします。
- [テーブル] ウィンドウのタイトルバーをクリックして、現在の場所から 3D ビューの中心までドラッグします。
- 下向きのガイドの上にポインタを移動します。ガイドの色が暗くなると、そこがドッキング場所として選択されたことになります。
- マウス ボタンを放すと、[テーブル] ウィンドウが 3D ビューの下部にドッキングされます。
- [テーブル] ウィンドウで、[選択フィーチャ] ボタンをクリックします。
- 列見出しの [CASES] を右クリックして、[昇順で並べ替え] をクリックします。
- [CASES] を右クリックして [統計情報] をクリックします。
- [選択フィーチャの統計情報] ダイアログ ボックスを閉じます。
- [ナビゲート] ボタンをクリックして、シーンをクリックします。
- [保存] ボタンをクリックします。
この演習では、3D フィーチャを作成し、ポイント フィーチャを立ち上げて、データ ポイントからラスタ サーフェスを内挿しました。立ち上げたベクタ データをサーフェス データと比較し、ベクタ データの属性を調べました。