フィルタの仕組み

[フィルタ] ツールを使用すると、エラーデータを除去してラスタの品質を改善したり、データ内のはっきり見えないフィーチャを強調することができます。[フィルタ] は、基本的に、入力ラスタをスキャンする 3 x 3 セルの近傍ウィンドウが移動し、重なりあうことで出力値を作成します。フィルタが各入力セルを通過するときに、そのセルの値、およびそのセルの周囲にある 8 つの近傍を使用して出力値を計算します。

[フィルタ] ツールには、ロウ パスとハイ パスの 2 種類のフィルタがあります。


フィルタのタイプ

フィルタ タイプ [LOW] では、ロウ パス、または平均化フィルタを入力ラスタに適用し、基本的にデータをスムーズにします。フィルタ タイプ [HIGH] では、ハイ パス フィルタを使用して、ラスタで表されているフィーチャ間のエッジと境界を強調します。

ロウ パス フィルタ


ロウ パス フィルタは、ローカルの変動を減少してノイズを除去することにより、データをスムーズにします。
3 x 3 の各近傍について、平均値を計算します。このフィルタは、基本的に、[平均値] 統計オプションを使用した [フォーカル統計（Focal Statistics）] と同じです。この効果は、各近傍の大きい値と小さい値が平均化され、データ内の極端な値が減少します。

例 1

次に、1 つの処理セル（値 8 を持つ中央のセル）の入力近傍値の例を示します。

 7 5 2 4 8 3 3 1 5

処理セル（値 8 を持つ中央の入力セル）の計算は、入力セルの平均を求めることです。これは、近傍の入力値すべての合計を、近傍のセル数（3 x 3 = 9）で除算して得られます。

 値 = ((7 + 5 + 2) + (4 + 8 + 3) + (3 + 1 + 5)) / 9 = 38 / 9 = 4.222

処理するセル位置の出力値は 4.22 です。

すべての入力値の平均値が計算されるので、リストの最大値、つまり処理セルの値 8 が平均化されます。

例 2

この例は、[LOW] オプションの [フィルタ] ツールを小さい 5 x 5 セル ラスタに適用することによって生成されるラスタを示しています。

NoData セルがどのように処理されるかわかるように、[Data then NODATA] に設定される [計算時に NoData を除外] パラメータの出力値を次のように設定しています。

• 入力のセル値:

   2.000   3.000   4.000   5.000   6.000 2.000   3.000   4.000   NoData  6.000 2.000   3.000   4.000   5.000   6.000 2.000  30.000   4.000   5.000   NoData 1.000   2.000   2.000   3.000   NoData

• DATA オプションを設定した出力セル値（フィルタ ウィンドウ内の NoData セルは計算時に無視されます）:

  2.500   3.000   3.800   5.000   5.667 2.500   3.000   3.875   5.000   5.600 7.000   6.000   7.250   4.857   5.500 6.667   5.556   6.444   4.143   4.750 8.750   6.833   7.667   3.500   4.000

• NODATA オプションを設定した出力セル値（フィルタ ウィンドウ内で NoData のセルは、出力が NoData になります）:

  NoData  NoData  NoData  NoData  NoData NoData  3.000   NoData  NoData  NoData NoData  6.000   NoData  NoData  NoData NoData  5.556   6.444   NoData  NoData NoData  NoData  NoData  NoData  NoData

例 3

次の例では、入力ラスタにデータ収集のエラーによる異常なデータ ポイントが含まれています。[LOW] オプションの平均化の特性により、異常なデータ ポイントがスムージングされています。

[LOW] オプションでのフィルタ出力の例

ハイ パス フィルタ


ハイ パス フィルタは、セルの値とその近傍の値の比較差を強調します。
複数のフィーチャの境界（水域と森林との間など）を明確にし、オブジェクト間のエッジをシャープにする効果があります。ハイ パス フィルタは一般に、エッジ強調フィルタと呼ばれます。


[HIGH] オプションでは、9 つの入力 Z 値が、低周波の変動を除去し、異なるリージョン間の境界を強調するように重み付けされます。

[HIGH] オプションでの 3 x 3 フィルタは次のとおりです。

 -0.7  -1.0  -0.7 -1.0   6.8  -1.0 -0.7  -1.0  -0.7

カーネルの値は正規化されているので、合計が 0 になることに注意してください。

ハイ パス フィルタは、合計統計オプションおよび一部の加重カーネルを使用した [フォーカル統計（Focal Statistics）] ツールを使用するのと同じです。

出力の Z 値は、サーフェスのスムーズさを示していますが、元の Z 値とは無関係です。Z 値はゼロの周りに分散しており、正の値はエッジの上側、負の値はエッジの下側になります。Z 値がゼロに近いエリアは、傾斜がほぼ一定のリージョンです。Z 値の最大値と最小値に近い値を持つエリアは、傾斜が急速に変化しているリージョンです。

例 1

次に、1 つの処理セル（値 8 を持つ中央のセル）の単純な計算例を示します。

 7 5 2 4 8 3 3 1 5

以下に、処理セル（値 8 を持つ中央のセル）の計算例を示します。

値 = ((7*-0.7) + (5*-1.0) + (2*-0.7) + (4*-1.0) + (8*6.8)  + (3*-1.0) + (3*-0.7) + (1*-1.0) + (5*-0.7)) = ((-4.9 + -5.0 + -1.4) + (-4.0 + 54.4 + -3.0) + (-2.1 + -1.0 + -3.5) = -11.3 + 47.4 + -6.6 = 29.5

処理セルの出力値は 29.5 です。

近傍に負の加重を指定することにより、フィルタはオブジェクト間の差または境界を引き出して、ローカルの詳細を強調します。

例 2

次の例では、入力ラスタが、値が 5.0 ～ 9.0 の範囲で変わるリージョンに沿って鋭いエッジを持っています。[HIGH] オプションのエッジ強調特性により、エッジが検出されています。

NoData のセルの処理

[計算時に NoData を除外] オプションは、近傍ウィンドウ内の NoData セルの処理方法を制御します。このオプションをオンにすると（DATA オプション）、NoData である近傍内のセルは、出力セル値の計算時に無視されます。オフにすると（NODATA オプション）、NoDATA である近傍内のセルは、出力が NoDATA になります。

処理の対象となっているセル自身が NoData で、[NoData を無視（Ignore NoData）] オプションが選択されている場合、そのセルの出力値は、有効な値を持つ近傍内の他のセルに基づいて計算されます。もちろん、近傍内のセルがすべて NoData の場合、出力は、このパラメータの設定に関係なく NoData になります。

参考文献

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Hord, R. M. 1982. Digital Image Processing of Remotely Sensed Data.New York:Academic.

Moik, J. G. 1980. Digital Processing of Remotely Sensed Images.New York:Academic.

Richards, J. A. 1986. Remote Sensing Digital Image Analysis:An Introduction.Berlin:Springer-Verlag.

Rosenfeld, A. 1978. Image Processing and Recognition, Technical Report 664. University of Maryland Computer Vision Laboratory.