ブロック統計(Block Statistics)の仕組み
[ブロック統計(Block Statistics)] ツールは、重ならないウィンドウまたは近傍の固定されたセット内で、入力セルの統計を計算する近傍解析操作を実行します。統計(たとえば、最大、平均、合計)は、各近傍内に含まれるすべての入力セルについて計算されます。個々の近傍またはブロックについて得られた値が、指定した近傍と外接する四角形内にあるすべてのセル位置に割り当てられます。
近傍は重なっていないため、どのセルも 1 つのブロックについての計算にのみ含まれます。
近傍の形状は、ドーナツ形、円、四角形、または扇形にできます。近傍内部で計算できる統計情報は、平均値、最頻値、最大値、中央値、最小値、最少頻値、範囲、標準偏差、合計値、および種類です。
概念的には、[ブロック統計(Block Statistics)] ツールは以下のように動作します。
- 解析ウィンドウの左上隅に、最初に指定した近傍(円形の近傍など)を作成します。
- 外接する四角形を計算して、出力ブロックのサイズを決定します。
- ラスタの残りのエリアを、指定ブロックに分割します。ブロックは重なってはなりません。
- ブロックの計算に使用する、各ブロックのセル位置を指定します。セル位置は、四角形に接する指定の近傍(円形の近傍など)を定義することにより決まります。
- 各ブロックの各近傍について、出力値を計算します。得られた値が、対応する出力ブロックの各セル位置に割り当てられます。
近傍タイプ
近傍の形状は、ドーナツ形、円、四角形、または扇形にできます。カーネル ファイルを使用することで、独自の近傍の形状を定義することもでき、また、統計情報が計算される前に近傍内の特定のセルに異なる重みを割り当てることもできます。
次に、それぞれの近傍の形状とその定義について説明します。
- ドーナツ形
- ドーナツ形は、円の内側にそれよりも小さい円がある形状です。小さい円の外側および大きい円の内側に中心があるセルが近傍の処理に含められます。
- 小さい円と大きい円の単位は、セルまたはマップ単位で定義できます。
- 円
- 円の内部に中心があるすべてのセルが近傍の処理に含められます。
- 円の単位は、セルまたはマップ単位で定義できます。
- 四角形
- 四角形の近傍のサイズは幅と高さで決定されます。
- 幅の値と高さの値の単位は、セルまたはマップ単位で定義できます。
- 扇形
- 扇形の内部に中心があるセルが近傍の処理に含められます。
- 起点角度と終点角度は、0 ~ 360 の整数値または浮動小数値です。円の値は正の X 軸で 0 から始まり(時計では 3:00 の位置)、0 に戻るまで反時計回りに増加します。
- 円の単位は、セルまたはマップ単位で定義できます。起点角度と終点角度の単位は度です。
- 不規則
- 不規則な形状の近傍を指定できます。
- 不規則な近傍を定義するカーネル ファイルで、近傍内に含めるセルの位置を指定します。
- 不規則な近傍のカーネル ファイル:
- このカーネル ファイルは、不規則な近傍の値と形状を定義する ASCII テキスト ファイルです。
- 最初の行で、近傍の幅と高さを「X 方向のセルの数、スペース、Y 方向のセルの数」の形式で指定します。
- 後続の行では、近傍内のそれぞれの位置の値を指定します。値は、値が表す近傍で表示されるのと同じ設定で入力します。それぞれの値の間にはスペースが必要です。
- カーネル ファイルの値は 0 か 1 のどちらかである必要があります。0 以外の値はすべて 1 として解釈されます。
- セルの位置の値が 0 であれば(空白スペースではなく)、そのセルは近傍に含められず、処理に使用されないことを示します。値が 1 であれば、それに対応するセル(および値)は近傍に含められます。
- 加重
- 処理セルを囲む不規則な近傍を定義でき、入力ラスタでのセル値の乗算に使用する重みを指定できます。
- 重みを定義するカーネル ファイルで、近傍に含めるセルの位置とそれらに適用する重みを指定します。
- 重み付けのある近傍は、平均値、STD(標準偏差)、および合計値の統計情報の種類でのみ使用できます。
- 重み付けのある近傍のカーネル ファイル:
- このカーネル ファイルは、重み付けのある近傍の値と形状を定義する ASCII テキスト ファイルです。
- 最初の行で、近傍の幅と高さを「X 方向のセルの数、スペース、Y 方向のセルの数」の形式で指定します。
- 後続の行では、近傍内のそれぞれの位置の重みを指定します。値は、値が表す近傍で表示されるのと同じ設定で入力します。正の値、負の値、および 10 進数値を有効な重みの値として使用できます。それぞれの値の間にはスペースが必要です。
- 計算に含めない近傍内の位置については、カーネル ファイルで対応するロケーションの値を 0 に設定します。
- 次の図は、重み付けのある近傍を定義する ASCII 形式のカーネル ファイルとそれが定義する近傍の例を示しています。
統計情報の種類
利用できる統計情報は、最頻値、最大値、平均値、中央値、最小値、最少頻値、範囲、標準偏差です。統計情報のデフォルトの種類は平均値です。
- 最頻値
- 整数ラスタのみを入力に使用できます。
- 近傍内に複数の最頻値があると、そのブロックのすべてのセルは出力で NoData になります。
- 最大値
- 入力ラスタが整数値であれば、出力ラスタの値も整数値になります。入力の値が浮動小数値であれば、出力の値も浮動小数値になります。
- 平均値
- 出力ラスタは常に浮動小数値になります。
- 平均値の統計情報は重み付けのある近傍で使用できます。
- 中央値
- 整数ラスタのみを入力に使用できます。
- 近傍内の有効なセル値の数が奇数であれば、値をランク付けし、中央の値を選択することで、中央値が計算されます。近傍内の値の数が偶数であれば、値がランク付けされ、中央の 2 つの値の平均値が算出されます。
- 最小値
- 入力ラスタが整数値であれば、出力ラスタの値も整数値になります。入力の値が浮動小数値であれば、出力の値も浮動小数値になります。
- 最少頻値
- 整数ラスタのみを入力に使用できます。
- 近傍内に複数の最少頻値があると、そのブロックのすべてのセルは出力で NoData になります。
- 範囲
- 入力ラスタが整数値であれば、出力ラスタの値も整数値になります。入力の値が浮動小数値であれば、出力の値も浮動小数値になります。
- 出力ラスタでの各セルのロケーションの値が次の単純な式を適用することによりセル単位で決定されます。ブロック範囲 = ブロック最大値 – ブロック最小値.
- STD
- 出力ラスタは常に浮動小数値になります。
- 標準偏差 の統計情報は重み付けのある近傍で使用できます。
- 合計値
- 入力ラスタが整数値であれば、出力ラスタの値も整数値になります。入力の値が浮動小数値であれば、出力の値も浮動小数値になります。
- 種類
- 整数ラスタのみを入力に使用できます。
NoData のセルの処理
[計算時に NoData を除外] オプションは、近傍ウィンドウ内の NoData のセルの処理方法を制御します。このオプションをオンにすると(DATA オプション)、NoData である近傍内のセルは、出力セル値の計算時に除外されます。オフにすると(NODATA オプション)、NoDATA である近傍内のセルは、出力が NoDATA になります。
ブロック統計の用途
[リサンプル(Resample)] ツールの代わりに [ブロック統計(Block Statistics)] ツールを使用して、高解像度のラスタから低解像度のラスタへリサンプリングすることができます。最近隣内挿法、共一次内挿法、三次たたみ込み内挿法のサンプリング手法を使用する代わりに、解像度の低いラスタ セルに、そのセルを囲む新しい地理範囲の値の最大値、最小値、または平均値を割り当てる方が望ましいことがあります。そのためには、適切な統計、たとえば平均値または最大値をブロックに適用します。
[ジェネラライズ] ツールセットの [集約(Aggregate)] ツールは、[ブロック統計(Block Statistics)] ツールと同様に、所望の出力解像度によって決まる 空間範囲内の合計値、平均値、中央値、最小値または最大値に基づいて、セルの位置を集約できます。ただし、この 2 つのオプションには 2 つの大きな相違があります。
- [集約(Aggregate)] ツールで得られた出力ラスタは、所望の解像度にリサンプリングされます。
- [集約(Aggregate)] ツールには、指定した近傍の概念はありません。近傍と出力ブロックは同じであり、常に四角形で、同じセル位置を囲みます。[集約(Aggregate)] ツールのブロック サイズは、所望の解像度に到達するために必要なセルの集約によって決まります。