空間データでの時間のサポート
時間は空間データ内でさまざまな方法でサポートされています。時間情報は、属性(フィーチャクラス、モザイク データセット、ラスタ カタログ、テーブルなど)として格納することも、内部的(netCDF データやトラッキング レイヤなど)に格納することもできます。以下の各セクションでは、ArcGIS で時系列的に視覚化できるデータについて説明します。
フィーチャ レイヤ
フィーチャ レイヤでは、フィーチャを時系列的に視覚化する方法が 2 つあります。
- 各フィーチャの形状と場所は一定に維持されるが、時間の経過とともに属性値を変更する。
- 時間の経過とともに各フィーチャの形状と場所を変更する。
時間の経過とともに形状と場所が変化するフィーチャは、個別のフィーチャとして格納する必要があります。たとえば、時系列的に視覚化される台風の進路の場合、特定の時間における台風の場所を表すポイント フィーチャは、個別のフィーチャとして格納する必要があります。
形状と場所が変化しないフィーチャもまた、個別のフィーチャとしてテーブル内で表現することができます。たとえば、都市ごとの人口値を示す場合、各都市は複数のフィーチャによって表すことができます。同じ都市を表すフィーチャの場所はそれぞれ同じですが、日付によって人口値が異なります。
ただし、同じ統計フィーチャでタイムスタンプの数が多い場合は、1 対多の結合を使用できます。この場合、空間情報はベース テーブルに格納され、時間別の属性情報は別のテーブルに格納されます。
(山火事の経過など)各フィーチャの形状が時間の経過とともに変化する場合は、テーブル内で個別のフィーチャとして表されます。それぞれの火事は、属性テーブル内の複数のフィーチャによって表されます。各フィーチャは異なる日付を持ちます。
一定時間内で有効なフィーチャを表示するか、アニメーションの初めから現時点までのすべてのフィーチャを表示するかを選択することができます。山火事の経過など、時間の経過に伴って値を累積する場合は、アニメーションの最初から現時点までのすべてのフィーチャを表示すると効果的です。デフォルトでは、一定時間内でアクティブなフィーチャが表示されます([データを累積表示] チェックボックスがオフになっている)。この設定は、[レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスの [時間] タブで変更できます。
モザイク データセット
モザイク データセットを使用して、時系列的な変化を表すラスタを格納できます。たとえば、時間の経過に伴う土地利用の変化を表す航空画像をモザイク データセットに格納でき、そのデータを時系列的に視覚化できます。フィーチャ レイヤの場合と同様に、モザイク データセットの属性テーブル内に各ラスタの有効時間を示すための時間フィールドが必要です。フィーチャ レイヤと同様に、モザイク データセットの [レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスの [時間] タブで時間を有効化できます。
ラスタ カタログ レイヤ
ラスタ カタログを使用して、時系列的な変化を表すラスタを格納できます。たとえば、時間とともに変化する海水温度を表すラスタをラスタ カタログに格納できます。フィーチャ レイヤの場合と同様に、ラスタ カタログの属性テーブル内に各ラスタの有効時間を示すための時間フィールドが必要です。
ラスタ カタログをアプリケーションにレイヤとして追加する際、ラスタ カタログにラスタが 10 以上含まれていると、レイヤは各ラスタの境界線を表すワイヤ フレームとして描画されます。タイム スライダを使うと、ビジュアライゼーションの進行に従ってカタログの各行の実データが表示されるため、ラスタ カタログの [レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスの [表示] タブでこのデフォルト設定を変更する必要はありません。
テーブル
テーブルに格納されているデータは、グラフを介して時系列的に視覚化できます。サポートされるテーブルは、dBASE テーブル、パーソナル/ファイル/ArcSDE ジオデータベースのジオデータベース テーブル、netCDF テーブルです。
グラフで視覚化するテーブルには、最低でも、時間値を持つフィールドと、アニメーションにする値(気温など)を持つフィールドが含まれている必要があります。複数の測候所など、グラフで時系列的に視覚化したいエンティティが複数ある場合は、時系列的に視覚化する値とともに ID 値をグラフにプロットすることができます。
テーブルがアプリケーションに追加されたら、[テーブル プロパティ] ダイアログ ボックスの [時間] タブで時間を有効にする必要があります。テーブルで時間を有効にする手順は他のレイヤで時間を有効にする場合と同じです。唯一異なる点は、グラフでテーブル値を時系列的に視覚化するには、テーブルで最初に視覚化するグラフを作成しなければならないことです。
ArcGIS では、ObjectID フィールドのないテーブル形式データにはいくつかの制限があります。そのため、そのようなテーブルをグラフのソース データとして使用すると、選択は適用されません。テーブルのソースがテキスト(*.txt)ファイルまたは Microsoft Excel ファイルであるようなテーブルをグラフでアニメーション化するには、ObjectID フィールドのあるテーブル(ジオデータベース テーブルなど)に変換する必要があります。
netCDF レイヤ
netCDF レイヤでは、データを視覚化するためのディメンションを選択することができます。時間値は、netCDF レイヤの 1 つのディメンションとして格納され、アニメーションで使用する時間フィールドを設定する際に [レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスの [時間] タブでアクセスできます。レイヤとして netCDF ファイルがアプリケーションに追加されたら、[レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスの [時間] タブでそのレイヤの時間プロパティを設定し、タイム スライダを使用してレイヤを視覚化できます。netCDF フィーチャ レイヤについては、時間ディメンション、または時間値を含む属性フィールド(開始時間/終了時間フィールド)を使用してレイヤの時間を指定できます。ただし、netCDF ラスタ レイヤについては、時系列的なデータの確認を可能にする時間ディメンションを使用してのみ、レイヤの時間を指定できます。
トラッキング レイヤ
トラッキング レイヤは、ArcGIS Tracking Analyst エクステンションで使用されるフィーチャ レイヤです。Tracking Analyst には、フィーチャクラスまたはシェープファイルからトラッキング レイヤを作成するためのツールが付属しています。トラッキング レイヤは時間が有効になっているので、[レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスの [時間] タブで時間プロパティを設定した後は、タイム スライダを使用してこのレイヤを視覚化することができます。タイム スライダによってトラッキング レイヤを視覚化するには、[レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスの [時間] タブで [このレイヤとマップ時間の同期を維持] オプションをオンにする必要があります。
交通量データを含むネットワーク データセット レイヤ
ArcGIS Network Analyst エクステンションを使用すると、交通量履歴情報を使用して、ネットワーク エレメントに関する動的移動コストをモデル化できます。この方法では、予想される移動時間と到着時間に対する信頼性が向上します。また、ルートは、移動時間の履歴に基づいて決定されるため、短縮されると考えられます。
ネットワーク データセット ラスタに対して設定された交通量履歴データはデフォルトで時間が有効になっているため、タイム スライダを使用して移動時間の変化を観察するために使用できます。
ビデオ レイヤ
ArcGIS 3D Analyst エクステンションを使用すると、ArcGlobe でビデオ レイヤを視覚化できます。ビデオ レイヤは、地理的な位置を含むビデオの視覚化に使用できます。これには、交通量調査カメラ、広域の気象データ、サーフィンの状況を表示する Web カメラ、時間経過 GIS 解析結果、航空機搭載カメラからのフィードなどのビデオがあります。この種のコンテンツは、ArcGlobe のビデオ レイヤとして、適切な地理的コンテキスト内に表示できます。
他の多くの GIS データ ソースと同様に、ビデオ レイヤには一般的にテンポラル コンポーネントが存在します。つまり、ビデオには時間の位置と範囲が含まれています。ArcGlobe では、ビデオの開始時刻、再生時間、タイム ゾーンなど、ビデオ レイヤの時間プロパティを [レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスの [時間] タブで指定することができます。このため、リアルタイムの防犯カメラのビデオやまる一日のコマ撮りされた気象パターン、数千年にわたってシミュレートされた地質学のビデオなど、多種多様なビデオ ソースに対する時間の指定が可能になっています。