ラスタ データの整理
ラスタ データを整理する方法(ラスタ データ モデル)は 4 つあります。ラスタ データセット、モザイク データセット、ラスタ カタログ、フィーチャの属性であるラスタです。
ラスタ データを管理するための設計上の主な決定事項の 1 つは、すべてのデータを単一のデータセットに格納するのか、多数のデータセットのカタログ コレクションとして格納するのかです。どちらの方法を使用するかがアプリケーションの要件から明らかな場合もありますが、そうではない場合もあります。モザイク データセットはこの意思決定に対して優れたソリューションを提供します。モザイク データセットは単一のラスタ データセット(モザイク化した画像)として表示可能なラスタ データのカタログだからです。
ラスタ データセット
ラスタ データセットは、1 つ以上のバンドに整理される、有効なラスタ形式です。各バンドはピクセル(セル)の配列で構成され、各ピクセルに値が含まれています。ラスタ データセットは少なくとも 1 つのバンドを持ちます。複数のラスタ データセットを連続的な 1 つの大きなラスタ データセットに空間的に追加(モザイク化)することができます。空間的に重複したラスタ データセットをモザイク化すると、重複したエリアにセル値の集合が 1 つだけ含まれることに注意してください。次に、ラスタ データセットの例を示します。
ラスタ データの操作用に特化したジオプロセシング ツールが多数提供されています。これらは「ラスタ ツールセットの [ラスタ データセット] ツールの概要」にリストされています。
モザイク データセット
モザイク データセットはカタログとして保存され、モザイク化した画像として表示されるラスタ データセット(画像)の集まりです。これらのラスタ データセットを個別に表示することもできます。これらのコレクションは全体的なファイル サイズが増大し、ラスタ データセット数も非常に多くなります。ラスタ データは、メタデータ(ジオリファレンス、収集日、センサー タイプ)とラスタ形式を表すラスタ タイプに基づいて追加されます。モザイク データセット内のラスタ データセットは、ネイティブ形式のままでディスクに保存しておき、必要に応じてジオデータベースに読み込むことができます。メタデータはラスタ レコード内と、属性テーブルの属性内で管理できます。メタデータを属性として格納すると、センサーの方向データなどのパラメータを簡単に管理できると同時に、選択を有効にするための高速検索が可能になります。
ラスタ カタログのように、モザイク データセット内の各ラスタは独自の座標系を持つことができますが、表示するときには、モザイク データセットの座標系に再投影されます。さらに、フットプリントやその他の計算された属性(ピクセル サイズなど)は、モザイク データセットの座標系を使用して作成されます。
モザイク データセット内のラスタ データは、隣接したり重なり合う必要はなく、接続されていない不連続のデータセットとして存在できます。たとえば、エリアを完全に含む画像や、(パイプライン沿いなど)相互に結合して連続画像を形成するわけではない多数の画像のストライプを含むことができます。
完全に、または部分的に重なり合っているデータを、何日もかけて異なる日付でキャプチャすることもできます。モザイク データセットは、一時的なデータの格納には理想的なデータセットです。時間や日付に基づいて必要な画像をモザイク データセットで検索し、モザイク手法を使用して、時間または日付属性に従ってモザイク化した画像を表示することができます。
モザイク データセットは 1 つの特定タイプのラスタ データに制限されません。ラスタ カタログのように、さまざまな投影法、解像度、ピクセル深度、バンド数のラスタ データを追加できます。ラスタ カタログと異なる点は、データ コレクション全体の(ピラミッドのような)概観図を作成できるところです。これによって、データを高速で表示できるようになり、これらのデータセットを簡単に提供できます。表示に関する追加のプロパティ(モザイク手法の設定を含む)も多数存在しており、これにより、多くの状況でモザイク データセットは一意で機能的なものになっています。空間的/非空間的な検索の制約に基づいて、モザイク データセットを検索することもできます。この検索結果は、ユーザが 1 つずつ処理可能な画像のセットであったり、動的に生成されたモザイク化画像であったりします。
モザイク データの操作用に特化したジオプロセシング ツールが多数提供されています。これらは「ラスタ ツールセットの [モザイク データセット] ツールの概要」にリストされています。
ラスタ カタログ
ラスタ カタログは、表形式で定義されたラスタ データセットのコレクションであり、各レコードはカタログ内の個々のラスタ データセットを表します。大きなラスタ カタログになると、数千もの画像で構成されることがあります。通常、ラスタ カタログは、隣接したラスタ データセット、完全に重なり合うラスタ データセット、または部分的に重なるラスタ データセットを、1 つの大きなラスタ データセットにモザイク化せずに表示するために使用されます。次のラスタ カタログの例では、黄色のラインは個々のラスタ データセットのアウトラインを示しています。このアウトラインを、ラスタ データセットのフットプリントまたはワイヤフレームと呼びます。このラスタ カタログ表示では、さまざまなタイプのデータを表すさまざまなサイズのラスタ データセットがいくつも重なり合っています。
カタログ内の各ラスタは、マップまたはグローブを表示するために、各画像をリアルタイムで投影するために使用できる独自の座標系を持つことができます。
ラスタ カタログにはさまざまな使用法があります。ラスタ カタログを使用して、気象画像などの一連のラスタ イメージを格納することができます。また、タイル パターンに従わないものなど、イメージ フットプリントの任意のパターンを格納することもできます。さらに、ラスタ カタログを使用して、ワークフローに適したイメージ コレクションを格納することもできます。
ラスタ カタログの操作用に特化したジオプロセシング ツールが多数提供されています。これらは「ラスタ ツールセットの [ラスタ カタログ] ツールの概要」にリストされています。
ラスタ データの格納モデルの比較
複数のラスタ データセットを扱う際には、4 つの格納モデルがあります。各ラスタ データセットを個別に格納するか、それらを 1 つの大きなラスタ データセットにモザイク化するか、モザイク データセットのメンバとして格納するか、ラスタ カタログのメンバとして格納します。
データセットが互いに隣接していない場合や、同じプロジェクトでめったに使用されない場合は、ラスタ データセットを個別に格納するのが最も効果的です。多くの場合は、入力を 1 つの大きなラスタ データセットの範囲にモザイク化する方法が適していますが、次の理由により、モザイク データセットやラスタ カタログを使用する方法が適していることもあります。
- 複数のラスタ データセットの範囲が部分的にまたは完全にオーバーラップしており、共通のエリアを維持する必要がある。
- ラスタ データセットが、時間の流れに沿った同じエリアの観察記録を表している。
- エリア全体を一度に表示する必要がない(ラスタ カタログが小さな縮尺でワイヤフレームを表示する)。ただし、エリア全体を表示する必要がない場合は、モザイク データセットを使用してください。
- イメージ コレクションをまとめて管理したいが、個々の状態も維持したい。
- 各画像を説明する追加の属性カラムを記録し、管理したい。
ラスタ データセット | モザイク データセット |
ラスタ カタログ | |
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説明 |
オブジェクトの単一の画像または空間的に連続したエリアにおよぶシームレスな画像。単一のオリジナル画像の場合と、多くの画像を 1 つにまとめた(モザイク化した)ものである場合がある。 |
ラスタ データセットのコレクションがカタログとして格納されており、ラスタ データのコレクションを格納、管理、表示、検索できる。モザイクとして表示されるが、コレクション内の各ラスタ データセットにアクセスできる。 |
単一のレイヤとして表示されるラスタ データセットのコレクション。それらのデータセットは異なる座標系を使用するか、異なるデータ タイプを使用する可能性がある。 |
マップ レイヤ |
1 つのマップ レイヤ。 |
1 つのマップ レイヤ。 |
1 つのマップ レイヤ。 |
同種または異種データ |
同種データ: 単一の形式、データ タイプ、およびファイル。 |
異種データ: 複数の形式、データ タイプ、ファイル サイズ、および座標系。 |
異種データ: 複数の形式、データ タイプ、ファイル サイズ、および座標系。 |
メタデータ |
一度だけ格納し、データセットを完成させるために適用する。 |
ラスタ レコード内に格納したり、ラスタ カタログ テーブルの属性として格納できる。 |
ラスタ カタログ内のラスタ データセット アイテムごとに属性カラムとして格納される。 |
ピラミッド |
ラスタ データセット全体の単一のピラミッド。 |
各ラスタ データセットのピラミッドと、コレクション全体の(ピラミッドのような)概観図。 |
ラスタ カタログ内の各ラスタ データセットのピラミッド。 |
ジオプロセシングと画像解析 |
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利点 |
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欠点 |
ファイル ジオデータベースおよびパーソナル ジオデータベースのラスタ データセットは、ファイル全体を書き直す必要があるので更新に時間がかかる。 |
概観図の生成に時間がかかることがある。 |
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処理 |
イメージ サービスとして直接提供できる。 |
イメージ サービスとして直接提供できる。 |
ラスタ カタログを参照する、参照モザイク データセットを最初に作成することで、イメージ サービスとして提供できる。 |
推奨 |
モザイク化した画像間のオーバーラップを維持する必要がない場合や、多数のラスタ データを高速に表示したい場合は、ラスタ データセットを使用する。 |
ラスタ データの管理と視覚化にはモザイク データセットを使用する。これは、多次元データ、検索、メタデータの格納、および重なり合うデータに適しており、優れたハイブリッド ソリューションを提供する。 |
大きな画像の保存、データセット間のオーバーラップの維持、時系列データの管理や、隣接する画像間にずれがあるために画像をモザイク化できない場合は、ラスタ カタログを使用する。 |
モザイク データセットとラスタ カタログは多数のラスタ データセットの管理に適した方法ですが、モザイク データセットの選択をお勧めします。モザイク データセットまたは非管理ラスタ カタログを使用することにより、保有データのディレクトリまたはリストを維持することができます。参照モザイク データセットは、*.amd ファイルとしてジオデータベース以外の場所に格納することもできます。
ラスタ属性
ラスタは、フィーチャクラス内のフィーチャの属性としても使用することができます。つまり、フィーチャクラス(ジオデータベース フィーチャクラスのみ)内のカラムの 1 つとして、ラスタ タイプのフィールドが存在する可能性があります。これは、フィールドにファイルベースの画像のハイパーリンクを設定することに似ていますが、ラスタ イメージはジオデータベース内で格納され、管理されます。たとえば、分譲地の写真を土地区画フィーチャの属性として追加することができます。
ArcGIS でサポートされるラスタ データセット ファイルの形式については、「サポートされているラスタ データセット ファイル形式」をご参照ください。