ネットワーク空間ウェイトの作成(Generate Network Spatial Weights)の詳細
空間ウェイト マトリックスは、データセットのフィーチャ間に存在する空間リレーションシップを定量化します。[空間統計] ツールボックス の多くのツールは、各フィーチャと近傍フィーチャの関連性を評価します。空間ウェイト マトリックス ファイルは、そのような近傍空間リレーションシップを定義します(空間ウェイトと空間ウェイト マトリックス ファイルの詳細については、「空間ウェイト」をご参照ください)。
一般に、フィーチャ間の空間リレーションシップは、ユークリッド距離の計測値と距離加重方式(隣接、固定、または逆)を使用して定義されます(「空間リレーションシップのモデル化」をご参照ください)。ただし、小売分析、サービスのアクセスビリティ、緊急応答、避難計画、交通事故分析など、多くの用途では、空間リレーションシップを実世界の交通ネットワーク(道路、鉄道、歩道など)に対して定義するほうが適切です。[ネットワーク空間ウェイトの作成(Generate Network Spatial Weights)] ツールでは、交通がネットワーク データセットに限定されている場合に、ポイント フィーチャ間の時間または距離に基づいて空間リレーションシップをモデル化して保存します。このツールには、Network Analyst エクステンションのライセンスが必要です。
ユーザは、フィーチャの出発地と目的地の両方を表すポイント フィーチャクラスを用意します。また、既存のネットワーク データセットも用意します(「ネットワーク データセットの設計」を参照するか、Esri Data & Maps にある、すぐに使えるネットワーク データセットを使用します)。[ネットワーク空間ウェイトの作成(Generate Network Spatial Weights)] ツールは、ネットワークに各ポイントを配置して、各フィーチャと他のフィーチャすべてとの距離または時間による近さを定量化します。2 つのフィーチャの近さを解くときには、オプションとして、バリアまたは制限(道路の閉鎖など)を考慮します。このような近接関係は、リトル エンディアンのバイナリ形式で格納され、疎行列の手法によって使用するディスク容量とメモリ、必要な計算の数を最小限に抑えます。このような関係の値は、[空間的自己相関分析(Spatial Autocorrelation(Morans I))]、[ホット スポット分析(Hot Spot Analysis(Getis-Ord Gi*))]、[クラスタ/外れ値分析(Cluster and Outlier Analysis(Anselin Local Morans I))] など、いくつかの空間統計ツールの数式で活用されます。空間ウェイト マトリックス ファイルは、理論上、N x N の空間リレーションシップを格納できますが、ほとんどの場合、各フィーチャはごく一部のフィーチャとだけ関連しています。疎行列の手法はこの点を利用して、非ゼロのリレーションシップだけを格納します。
Esri Data & Maps は ArcGIS ユーザなら無料で利用でき、ここには SDC 形式の構築済みネットワーク データセットも含めて、StreetMap データが用意されています。このデータセットの対象地域は米国およびカナダです。このようなネットワーク データセットは、[ネットワーク空間ウェイトの作成(Generate Network Spatial Weights)] ツールで直接使用できます。
参考資料
Anselin, L.著(1988)、『Spatial Econometrics: Methods and Models』(Boston: Kluwer)
Getis, A.、Aldstadt, J. 共著(2004)「Constructing the Spatial Weights Matrix Using a Local Statistic」(『Geographical Analysis』36(2):90 – 104)
Haining, R. 著(2003)、『Spatial Data Analysis: Theory and Practice』(Cambridge、UK: Cambridge University Press)
Price, Mike 著、(2009 年秋)、「It's all about streets」(『ArcUser』Online、Esri)