チュートリアル: ファブリックの最小二乗アジャストの実行

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複雑さ: 上級者 データ要件: ArcGIS チュートリアル データのセットアップ データ パス: \ArcGIS\ArcTutor\Parcel Editing 目的: ファブリックの最小二乗アジャストの実行

このチュートリアルでは、パーセル ファブリックの最小二乗アジャストのワークフローについて説明します。ファブリック アジャストでは、パーセル ラインについて格納されている方位と距離、およびコントロール ポイントの座標を使って、すべての空間情報の最適な解を求めます。このチュートリアルは、コントロール ポイントがすでに入力され、対応するファブリック ポイントにリンクされた状態で実施してください。調整が完了すると、アジャスト サマリが表示されます。アジャスト サマリは、ラインの属性情報の理解を深め、補正の必要性が考えられるデータの問題を特定するために使用します。ファブリック ポイント データは、問題の解決後に調整されます。アジャストは、縦軸と横軸の最大のずれがゼロに近づくまで、つまりアジャストが最適な解に収束するまで、繰り返し実行されます。

手順:

1. ArcMap を開いて、\ArcTutor\Parcel Editing\ フォルダの Parcel Editing マップ ドキュメント（ParcelEditing.mxd）を読み込みます。
2. 下の図に示したファブリック アジャスト領域をズームするか、[ブックマーク] メニューをクリックし、[Fabric Adjustment Area] をクリックします。

[Fabric Adjustment Area]

3. [パーセル エディタ] の矢印をクリックし、[編集の開始] をクリックします。
4. [フィーチャ作成] ウィンドウを閉じます。このチュートリアルでは、このウィンドウは操作しません。
ファブリック アジャストを実行する前に、コントロール ネットワークの適合確認を行います。適合確認では、パーセル ネットワークがコントロール ネットワークにどの程度適合しているかが確認されます。

注意:

ファブリックの最小二乗アジャストを実行する前に、コントロール ポイントの適合確認を実行することをお勧めします。適合確認の残差は、パーセル ネットワークがコントロール ネットワークとどのように適合しているかを示します。パーセル ラインは、最小二乗アジャストで少なくとも適合確認の残差の量だけはアジャストする必要があります。そのため、適合確認の残差は、[座標のアジャスト] ダイアログ ボックスでアジャスト許容値を設定するときの指針として利用できます。適合確認の残差が大きく、互いに一貫していない場合は、最小二乗アジャストを実行しても意味がありません。パーセル ラインは、少なくともその量だけはアジャストする必要がありますが、結果は不安定なアジャストになります。残差が大きく一貫性のないものになる理由をまず特定して、問題を是正する必要があります。ほとんどの場合、適合確認の残差が非常に大きくなる原因は、コントロール ポイントが間違ったファブリック ポイントにリンクされていることです。

5. [パーセル エディタ] ツールバーの [コントロール ポイントのメンテナンス（Maintain Control Points）] ツール をクリックします。
[コントロール] ダイアログ ボックスに、マップの範囲内に表示されているすべてのコントロール ポイントのリストが表示されます。
6. [適合確認] ボタンをクリックします。
各コントロール ポイントの横に、適合確認の残差が表示されます。

適合確認の残差

すべての残差が 0 なので、このパーセル ネットワークはコントロール ネットワークに非常によく適合しています。ファブリック アジャストを実行するときの適合確認の残差は 0 でなくてもかまいませんが、許容範囲内に収まるようにしてください。この例の場合は、ファブリック アジャストを実行する前に、2 フィート以上の残差を調査することになります。
7. [コントロール] ダイアログ ボックスを閉じます。
8. [パーセル エディタ] ツールバーの [パーセル フィーチャの選択] ツール をクリックし、ボックスをドラッグしてファブリック アジャスト領域のすべてのパーセルを選択します。

アジャスト対象パーセルの選択

ヒント:

アジャストに使用されているコントロール ポイントを選択する必要はありません。コントロール ポイントはファブリック ポイントにリンクされているため、選択されたパーセル上で自動的に検出されます。

9. [パーセル エディタ] の矢印をクリックし、[アジャスト] をクリックします。

新しいパーセル データ セットについて初めて実施するアジャストの場合は、まず [最小二乗アジャスト サマリ] ダイアログ ボックスに表示されるアジャスト サマリで COGO 属性の状態と、データに潜在する修正が必要な問題の有無を理解します。アジャスト処理では、すべてのファブリック ポイントにとって最適な位置の座標が計算されます。この計算では、対象となるラインのすべての方位と距離が使用されます。

注意:

アジャストの計算を実施しても、ラインの元の COGO 属性は変更されません。

アジャスト サマリは、パーセル ラインの新しい位置と、観測または記録された COGO の元の値とを比較し、計算値と観測値の差異をレポートしたものです。これらの数値は残差と呼ばれ、計算値から観測を差し引いて計算されます（c-o）。指定したチェック許容値よりも大きな残差は外れ値で、予想範囲を外れていることを意味します。つまり、データの外れ値をどの程度許容するかは、チェック許容値で指定することになります。チェック許容値として高い値を指定すると、調整されたラインの終点および関連付けられた COGO の値の間の差異として大きな値を許容する用意があることを意味します。レポートには、指定した距離または方位のチェック許容値を上回る（c-o）値だけが表示されます。チェック許容値として指定すべき値は、データの理解が深まるまでわかりません。このチュートリアルには、アジャスト サマリに記載される結果の解釈方法が説明されており、パーセル データの理解を深めることができるため、アジャストの対象となるパーセルについて適切なチェック許容値を選択できるようになります。

[座標のアジャスト] ダイアログ ボックスのチェック許容値の詳細

距離のチェック許容値は、記録されたパーセル データの理解を深めるのに最適な許容値です。
10. [座標のアジャスト] ダイアログ ボックスで、[距離] の [チェック許容値] を変更します。「0.100」 US Survey 米国測量フィートという値を入力します。
この例では、非常によいデータであるという前提で始め、すべての残差が 0.3 フィート（距離のチェック許容値の 3 倍）以下になりアジャストに成功することを期待します。
注意:

方位または距離のチェック許容値の 3 倍を上回る残差があると、ファブリック アジャストに失敗します。

11. それ以外については、すべて [座標のアジャスト] ダイアログ ボックスのデフォルトを受け入れて、[実行] をクリックします。

[座標のアジャスト] ダイアログ ボックス

[最小二乗アジャスト サマリ] ダイアログ ボックスが表示され、アジャストの失敗がレポートされます。
12. レポートを下にスクロールして、「パーセル ライン レポート - 計算値と観測/記録値の差異（c-o）」という見出しを見つけます。
下のスクリーン ショットは、パーセル ライン レポートの一部です。

パーセル ライン レポート

レポートでは、外れ値は「##」という記号で示されます。このレポートにはこの記号の付いた行が 5 行あり、レポートの最終行に、各行の問題が説明されていることに注目します。この場合は、記録された距離値と位置の新しい計算値の間の差異が、指定許容値の 3 倍を上回っていると記載されています。つまり、これらの 5 行については、計算された距離と記録された距離の間の差異が、どれも 0.30 フィートを上回っていたことを意味します。

注意:

残差は暫定的なアジャストで決定されます。この段階では、データベース内のどのポイントの位置も変更されていません。

これらの行に記載された 5 つの外れ値は、2 つのパーセル LS 269 / LS 269 と ROS 6692/ ROS 6692 で起こっています。（これらのパーセルはプランの境界を表すものとして格納されます。このため、プラン名とパーセル名は同じです。このレポートでの命名規則は [パーセル名]/[プラン名] です。）

この 5 行のうちでの最大の外れ値は 0.622 フィートです。つまり、アジャストを成功させるには、距離のチェック許容値をこの値の 3 分の 1 以上、つまり下 2 桁に切り上げて 0.21 以上にする必要があります。

アジャストを成功させる簡単な方法に、チェック許容値を引き上げるというアプローチがあります。ただし、アジャストを成功させるためにチェック許容値を非常に高い値（10 フィート以上）に設定する必要がある場合は、データに誤りがある可能性が高いでしょう。このような場合は、レポートされた問題の行についての記録値が、法律上の記載にあるパーセルの元の記録値に一致していることを確認することが大切です。

ObjectID が 876 と 881 という 2 つのポイントが互いに近接していることにも注目してください。これらの 2 つのポイントは近接ポイント レポートの下に一覧表示されます。近接ポイントとは、指定した近接ポイント許容値よりも近接している、間にラインを挟んでいないファブリック ポイントです。

近接ポイント レポート

近接ポイントは、各ポイントが同一ポイントであるべき可能性が高く、トポロジ的な矛盾があり、ポイントをマージすべきことを示しています。ネットワーク内の冗長性が増し、アジャストの成功を助けるうえで役立つため、近接ポイントをマージすることは重要です。たとえば、位置を定義する 2 本の線をもつ 2 つのポイントが非常に近接している場合は、4 本のラインで 1 つのポイント定義することによってこれらのポイントをマージすると、冗長性が向上します。

最小二乗アジャスト サマリからは、このアジャストを成功させるために必要な措置についての情報を得ることができます。1 つ目はチェック許容値の引き上げ、2 つ目はいくつかの近接ポイントのマージです。この特定のパーセル データ セットの場合は、チェック許容値を 0.21 フィートに引き上げると、アジャストに成功することに注目してください。ただし、ポイントをマージすると、データが変更されるので、アジャスト サマリの結果も変わってくることが予想されます。原則として、アジャストに失敗した場合は、前回使用した値の 3 倍の値にするとよいでしょう。この場合は 0.3 フィートです。ただし、まず近接ポイントをマージする必要があります。

[最小二乗アジャスト サマリ] ダイアログ ボックスが開いているときは、ファブリックを編集することができません。ただし、アジャスト サマリの情報は結果ファイルから入手することもできます。

13. [結果ファイル] ボタンをクリックして、アジャスト サマリの結果ファイルにアクセスします。
システムのデフォルトのテキスト エディタが開き、このアジャストのアジャスト レポート全体が表示されます。

アジャスト サマリ結果ファイル

14. [キャンセル] をクリックして [最小二乗アジャスト サマリ] ダイアログ ボックスを閉じます。
15. [キャンセル] をクリックして [座標のアジャスト] ダイアログ ボックスを閉じます。
16. [パーセル フィーチャの選択] ツール を使って、マップ表示の何もない場所でボックスをドラッグし、アジャストされたパーセルの選択を解除します。
次に、近接ポイントをマージします。ポイントを特定するには、[パーセル エディタ] ツールバーのポイントをレポートするツール を使用します。
17. [パーセル エディタ] ツールバーの [1、2、3 点のいずれかでポイントのレポート] ツール をクリックします。
18. 必要に応じて、[ポイント レポート] ダイアログ ボックスを移動して、すべてのアジャスト パーセルが見えるようにします。
19. [ポイント レポート] ダイアログ ボックスで 1 つのポイントのボタンをクリックし、[ポイント ID] テキスト ボックスに「876」と入力します。
20. [レポート] ボタンをクリックします。
そのポイントの座標情報、ポイントの縮尺、および収束が表示されます。

1 点のポイント レポート

[ポイント レポート] ツールの詳細
21. [マップの位置] ボタンをクリックします。
レポート対象のポイントが中央になるよう、マップが移動され、マップ内でポイントの位置が短く点滅します。
22. コンテンツ ウィンドウで、ポイントのサブレイヤを右クリックし、[ラベリング] をクリックしてポイントのポイント ID のラベルを表示します。
23. [ポイント レポート] ダイアログ ボックスが開いた状態で、[ツール] ツールバーの [拡大] ツールをクリックし、ボックスをドラッグしてポイント ID 876 の位置をズームします。
ポイントが見えるようになるまで何度かズームする必要があるでしょう。ポイントを拡大する際、何度か [マップの位置] ボタンをクリックしてマップのどこにポイントがあるかを確認する必要があるかもしれません。

マップに表示された近接ポイント

24. [ポイント レポート] ダイアログ ボックスを閉じます。
25. [パーセル エディタ] ツールバーの [指定された四角形の内側の未接続ポイントをマージ] ツール をクリックします。
26. 近接ポイントの周囲にボックスをドラッグします。

ポイントのマージ

27. [平均ポイント] ダイアログ ボックスの [OK] をクリックして、デフォルトの平均ポイントの許容値を受け入れます。
ポイントの平均が計算されて、1 つのポイントにマージされます。

マージされたポイント

28. アジャスト結果ファイルを閉じます。
29. もう 1 度、アジャスト パーセルの範囲を拡大します。[ブックマーク] メニューをクリックし、[Fabric Adjustment Area] をクリックします。
30. ジョブ ブックを表示します。[パーセル エディタ] の矢印をクリックし、[ジョブ ブック] をクリックします。
「平均ポイント」が記載されているジョブがあることを確認します。個々の編集は自動的にジョブ ブックで追跡されるため、ファブリックに対する編集の監査にジョブ ブックを使用できます。
31. ジョブ ブックを閉じます。
32. 手順 6 と同様に、[パーセル エディタ] ツールバーの [パーセル フィーチャの選択] ツール をクリックし、ボックスをドラッグしてファブリック アジャスト領域のすべてのパーセルを選択します。
33. [パーセル エディタ] → [アジャスト] の順にクリックします。
アジャスト データは 2 つのポイントをマージして編集されているので、アジャスト サマリの内容と結果が若干異なることを予想しておいてください。すでに、アジャストを成功できるよう距離の許容値を 0.21 フィートにすることを決定しました。そのアジャストを確実に成功させるよう、前回に使用した数字の 3 倍の値を使用し、許容値を 0.3 にします。
34. [座標のアジャスト] ダイアログ ボックスの [距離] のチェック許容値に「0.3」と入力します。

[距離] のチェック許容値を変更します。

35. [実行] をクリックします。
アジャストが正常に終了しました。アジャストの最大シフトについての情報が表示されていることに注目してください。

最大シフト

最大シフトは、その調整における最大の座標シフトで、素早くアクセスできるよう [了解] ボタンの上に表示されます。この最大シフト情報は、ポイント ID のアジャスト サマリにも表示されます。このアジャストでは、ID が 884 のポイントがその調整で最大の移動となり、横方向に -0.55 フィート、縦方向に 0.139 フィートシフトされています。
ファブリックの最小二乗アジャストの目標は、ポイントが変化せず、縦横の両方向の最大シフトが 0.00 になるまで繰り返すまたは反復することです。ファブリック アジャストの反復は自動ではありません。反復は手動で行う必要があります。
36. [最小二乗アジャスト サマリ] ダイアログ ボックスの [了解] をクリックします。
37. [座標のアジャスト] ダイアログ ボックスの [実行] をクリックしてアジャストの 2 度目として反復を実施します。
今回の最大シフトはポイント ID 1018 で、0.01 フィートに満たない移動量です。

最大シフト

2 度目のアジャスト後にシフト値がゼロに近づいたため、ファブリック アジャストは収束しています。1 度目の反復後にシフト値が大きくなっている場合は、アジャストが発散していることを示しています。解は、次の 2 つのうちのどちらかが起こると発散します。
1. データセットに大きな過失誤差があると、過失誤差を修正するまで解を得ることができません。
2. そのデータセットについての最適な解にすでに到達しているため、次の反復では、解の収束によって発散が生じてしまうことになります。これは、データセットの品質と精度にとって横方向 0.00 と縦方向 0.00 の収束が厳しすぎる場合に起こります。
質のよいデータで大きな過失誤差がない場合は、通常、3 度ファブリックの最小二乗誤差を反復すれば収束します。
38. [了解] をクリックし、アジャストの 3 度目の反復を実行します。
横方向 0.001、縦方向 0.000 の最大シフトとなり、アジャストが収束したことがわかります。
39. 3 度目になりますが、[最小二乗アジャスト サマリ] ダイアログ ボックスの [了解] をクリックし、[OK] をクリックします。
40. [座標のアジャスト] ダイアログ ボックスの [OK] をクリックし、アジャストを適用して完了します。
41. [パーセル エディタ] → [編集の保存] の順にクリックし、編集セッションを保存してチュートリアルを完了します。

ヒント:

ファブリック アジャストの収束後には、もう 1 度アジャストを実行して [座標のアジャスト] ダイアログ ボックスの[プラン構造の制約] の下にある後処理オプションを実施できます。プラン構造の制約は、まずアジャストを収束させてから実施してください。