ArcGIS Server 10 への移行

このトピックでは、ArcGIS Server 9.3 または 9.3.1 から ArcGIS Server 10 に移行するときに検討する必要のある事項について簡単に説明します。製品に追加された機能の詳細については、「ArcGIS Server 10 の新機能」をご参照ください。

ArcGIS Server 9.2 以前のバージョンから 10 に移行するときは、次のトピックを読むことを検討してください。

GIS サーバおよびサービス

ArcGIS Server 9.3(または 9.3.1)で作成したサービスとそのキャッシュは、自動的に ArcGIS Server 10 に移行されます。ArcGIS Server をインストールすると、Server10.0 というフォルダが作成され、このフォルダの下にすべてのファイルが格納されていることに注目しましょう。ArcGIS Server 9.3(または 9.3.1)を以前にインストールしていたフォルダと同じ親フォルダに ArcGIS Server 10 をインストールすると、(アンインストール時に意図的に残された)サーバとサービスの構成ファイルが検出され、Server10.0 のインストール フォルダ下の所定の場所に移行されます。

ただし、ArcGIS Server 10 へ移行する前に、構成ファイル(*.cfg)を手動でバックアップし、そのインスタンス名と URL を書き留めておいてください。既存のアプリケーションはこれらのサービス URL を参照するので、ArcGIS Server 10 環境でも同じインスタンスとポート番号を使用する必要があります。

サーバ オブジェクト エクステンション への移行

ArcGIS Server 10 では、REST を通じてサーバ オブジェクト エクステンション(SOE)を公開できるようになりました(マップ サービス用 SOE のみに該当)。SOE によって作成された、カスタマイズされた GIS サービスは、ArcGIS Services Directory に表示し、ArcGIS Web API を通して使用することができます。

これらの拡張機能を利用するために、ArcObjects を使って開発したカスタム アプリケーションが、SOE に基づいた カスタム GIS サービスを使用するように移行できます。詳細については、ArcGIS Resource Center の「ArcObjects SDK」のサーバー オブジェクト エクステンション(SOE)についてのトピックをご参照ください。

セキュリティを適用している場合の移行

ArcGIS Server は、セキュリティが有効な環境からサービスやセキュリティ設定を移行しようとはしません。これは、セキュリティ設定を完全に移行するために必要な、以前のインストールのセキュリティ構成について、ArcGIS Server 10 は十分な情報を認識できないためです。ArcGIS Server は、移行された環境にセキュリティを適用しないまま放置するのではなく、むしろサービスと設定を移行しません。

ArcGIS Server 10 のインストールが、(残された Server.dat ファイルを読み取ることによって)以前の導入時にセキュリティが有効化されていたことを検出した場合、構成ファイルは自動的には移行されません。ArcGIS 10 の導入は、クリーンな状態に保たれます。この場合、Manager にログインして、セキュリティを再構成してから、サービスのセキュリティを明示的に有効化できます。

ArcGIS 10 でセキュリティを再構成するには、次の手順をこの順番で実行する必要があります。

  1. Manager を使用して、ユーザとロール ストアを定義します。
  2. サービスとフォルダを再作成するか、サービス構成(*.cfg)ファイルを 9.3.1 から <ArcGIS Server 10.0 のインストール ディレクトリ>\server\user\cfg にコピーします。
  3. Manager を使用して、新しく作成されたサービスとフォルダにアクセス権を設定するか、セキュリティ構成ファイル(*.sec)を 9.3.1 から <ArcGIS Server 10.0 のインストール ディレクトリ>\server\user\cfg にコピーします。
  4. Manager を使用して、GIS サーバのセキュリティを有効化します。

Data Interoperability Extension のインストール

ArcGIS Server 10 では、基本的な ArcGIS Desktop または ArcGIS Server セットアップの一環として Data Interoperability Extension がインストールされなくなりました。別途に必ず、エクステンションをインストールしておいてください。エクステンションをインストールしておかないと、Interoperability Connection 搭載の ArcGIS Server にマップを公開する際に問題が生じるおそれがあります。同様に、Data Interoperability ツール搭載のモデルを実行することも、そのモデルが格納されているツールボックスを公開することもできません。

Data Interoperability Extension は、サービスとアプリケーションの ArcGIS に非ネイティブなデータ形式(例: WFS)を含めるのに最適な方法です。

コンパクト マップ キャッシュへの移行

ArcGIS Server 10 では、オプションのコンパクト キャッシュ形式が導入されました。これにより、より少ないディスク領域およびファイルでマップ キャッシュを格納できます。新しい [マップ サービス キャッシュの格納形式を変換(Convert Map Server Cache Storage Format)] ツールを使用して、既存のキャッシュをコンパクト形式に移行できます。

Web アプリケーションの移行

このセクションでは、ArcGIS Server 10 への移行が既存の Web アプリケーションにおよぼす影響について説明します。

ArcGIS Web API を使用して構築された Web アプリケーションの移行

既存の Web API アプリケーションは ArcGIS Server 9.3/9.3.1 のサービス URL を参照するので、ArcGIS Server 10 環境では、ArcGIS Server 9.3/9.3.1 環境で定義したものと同じインスタンスとポート番号を使用する必要があります。Web API アプリケーションが ArcGIS Server 10 サービスを使用できるようにするには、ArcGIS Server 10 へ移行する前に構成ファイル(*.cfg)を手動でバックアップし、そのインスタンス名と URL を書き留めておいてください。

ArcGIS Server 10 サービスの使用に移行したら、Web API アプリケーションを更新すると、編集、到達圏、最寄り施設、時間対応レイヤ、ジオメトリ サービスのユニオン、ジェネラライズといった、ArcGIS Server 10 で使用可能な新機能を利用できるようになります。

ArcGIS Web API アプリケーションをリリース 2.0 で使用できるように更新する方法については、以下のリンクをご参照ください。

ArcGIS API for JavaScript のバージョン 2.0 への移行

ArcGIS API for Flex のバージョン 2.0 への移行

ArcGIS API for Microsoft Silverlight/WPF のバージョン 2.0 における新機能

ArcGIS Server Manager を使用して構築された Web アプリケーションの移行

ArcGIS Server 10 では、ArcGIS Server Manager の一部のテクノロジとパフォーマンスが強化されました。これらの機能拡張の結果として、ArcGIS Server 9.3(または 9.3.1)の Manager で構築した Web アプリケーションを ArcGIS Server 10 へ移行する必要があります。

以下の手順に従って、ArcGIS Server Manger の Web アプリケーションを移行することができます。最初に、Web アプリケーションを 10 へ移行することを確認するように求められます。移行によって、Web アプリケーションは 10 で動作できるようになります。次に、10 へのアップグレードを確認するように求められます。アップグレードによって、X、Y 位置へのズームや指定された縮尺へのズームといった 10 の新機能を、Web アプリケーションで利用できるようになります。Manager で構築した Web アプリケーションで使用可能な新機能の詳細については、「ArcGIS Server 10 の新機能」をご参照ください。

注意注意:

ArcGIS Server 10 に移行すると、ArcGIS Server 9.3(または 9.3.1)の Manager で構築した Web アプリケーションの外観と操作性は変わります。移行する前に、Web アプリケーションを手動でバックアップする必要があります。

注意注意:

Manager 以外を用いて Web アプリケーションをカスタマイズした場合、ArcGIS Server 10 へ移行すると、そのカスタマイズ内容は上書きされます。詳細については、ArcGIS Web ADF 開発者ヘルプのセクション「Migrating custom Web ADF applications」のトピック「How to migrate the Web ADF to 10」(Web ADF の 10 への移行方法)をご参照ください。

手順:

  1. ArcGIS Server 10 をインストールします。
  2. インストールが終了したら、ArcGIS Server Manager を開き、[アプリケーション] モジュールをクリックします。すべての Web アプリケーションを移行するように求められます。
  3. [OK] をクリックして、Web アプリケーションを移行します。終了したら、必要に応じて、移行されたすべての Web アプリケーションに関する移行レポートを表示することができます。[OK] をクリックしてダイアログを閉じます。
  4. Web アプリケーションの 1 つを選択して [編集] ボタンをクリックします。ダイアログ ボックスが表示されます。[はい] をクリックして Web アプリケーションをアップグレードします。すべての Web アプリケーションがアップグレードされるまで、この手順を繰り返します。

カスタム ArcGIS Server Web ADF アプリケーションの移行

ArcGIS Server Web ADF には、ArcGIS Server 9.3(または 9.3.1)で構築されたカスタム アプリケーションを自動的に移行できる、Web アプリケーション移行ユーティリティが付属しています。このユーティリティは、ArcGIS Server 10 へのすべてのアセンブリ参照を更新し、ArcWeb サービスおよび場所検索タスクへのすべての参照を削除し、その他のバックエンドの変更を実行して、アプリケーションでの ArcGIS Server 10 Web ADF の利用を容易にします。この移行ユーティリティは、Windows の [スタート] メニューにある他の ArcGIS Server のショートカットと同様に使用できます。

カスタム Web ADF アプリケーションの移行について、または ArcGIS Server Web ADF で構築した Web アプリケーションを手動で更新する方法については、ArcGIS Web ADF 開発者ヘルプのトピック「How to migrate the Web ADF to 10」(Web ADF の 10 への移行方法)をご参照ください。

メモメモ:

トピック「ArcGIS Server 10 の新機能」のセクション「Applications Manager と Web ADF」には、既存の Web アプリケーションの振舞いに影響をおよぼす可能性のある、ArcGIS 10 Web ADF における変更点と改善点がリストされています。

移行に関する一般的な質問

各種 ArcGIS コンポーネントをどのような順序でアップグレードすればよいですか?ArcGIS Desktop または ArcSDE を ArcGIS Server と同じコンピュータに配置している場合、アップグレード順序はどうなりますか?

ArcGIS Desktop、ArcSDE、および ArcGIS Server がすべて同じコンピュータにインストールされている場合、すべてを一度に移行する必要があります。

ArcGIS Desktop、ArcSDE、および ArcGIS Server が複数のコンピュータに分散されている場合は、各種 ArcGIS コンポーネントを段階的にアップグレードできます。たとえば、次の手順に従います。

  1. いくつかの ArcGIS Desktop クライアントをアップグレードします。このアップグレードが正常に実行されたことを確認した後で、すべての ArcGIS Desktop クライアントをアップグレードします。
  2. ArcGIS Server をアップグレードします。
  3. ArcSDE をアップグレードします。

ArcGIS Desktop クライアントと ArcGIS Server クライアントは、それより古いバージョンの ArcSDE は認識しますが、それより新しいバージョンの ArcSDE は認識できません。詳細については、ArcGIS Server の ArcSDE クライアント/サーバ製品互換性一覧をご参照ください。

ArcGIS Server をアップグレードすると同時にオペレーティング システムもアップグレードする必要がありますか?

現在のオペレーティング システム(Windows Server 2003 や 2008 など)に慣れており、最新バージョンへ移行する理由がとくにない場合は、オペレーティング システムをアップグレードする必要がありません。

ただし、現在のオペレーティング システムが ArcGIS Server 10 でサポートされているかどうか分からない場合は、ArcGIS Server 10 システム要件のページで詳細を確認してください。

ArcGIS Server をスムーズにアップグレードするため、何かしておくことはありますか?

可能であれば、運用コンピュータのミラー イメージを作成して、ArcGIS Server アップグレードを試してみてください。運用環境を実際にアップグレードする前に、Web アプリケーション、サービス、SOAP/REST エンドポイント、および ArcSDE データベースの移行状況を確認できます。

ArcGIS Desktop 10 で作成されたマップを使って ArcGIS Server 9.3/9.3.1 でマップ サービスを公開できますか?

ArcGIS Server 9.3(または 9.3.1)で ArcGIS 10 のマップを公開することはできますが、公開したいバージョンの形式でマップを保存する必要があります。ArcGIS 10 で作成されたマップ ドキュメントは、旧バージョンの形式で保存することができます。たとえば、以下の手順を行います。

  1. ArcMap 10 でマップ ドキュメント(*.mxd)を作成します。
  2. 9.3.1 など、使用している ArcGIS Server のバージョンと一致するように、マップ ドキュメントを保存します。
  3. ArcGIS Server 9.3.1 のマップ サービスとして、マップ ドキュメントを公開します。

ArcGIS Desktop 10 で作成されたマップ サービス定義(*.msd)に基づくサービスは、ArcGIS の旧バージョンとの下位互換性をサポートしません。ユーザまたはユーザの組織が MSD ベースのサービスを必要とする場合は、インストール済みの ArcGIS Desktop のバージョンと一致するように ArcGIS Server をアップグレードすることを検討してください。

マップ ドキュメントを ArcGIS の旧バージョンの形式で保存する方法については、ArcGIS Desktop ヘルプのトピック「マップの保存」をご参照ください。

ArcGIS Desktop 9.3/9.3.1 で作成されたリソースを使って ArcGIS Server 10 のサービスを作成できますか?

ArcGIS Server 10 には、ArcGIS Desktop 9.3/9.3.1 で作成されたすべてのマップ ドキュメント、ジオプロセシング モデル、および GIS リソースとの互換性があります。

ArcGIS Desktop 9.3/9.3.1 から ArcGIS Server 10 のサービスを管理できますか?

ArcGIS Desktop 9.3/9.3.1 を使って ArcGIS Server 10 のサービスを管理することはできません。代わりに、ArcGIS Server 10 Manager アプリケーションを使って、ArcGIS Desktop 9.3/9.3.1 で作成された GIS サービスを管理することができます。ユーザまたはユーザの組織が GIS サービスを管理するための管理者接続を必要とする場合は、インストール済みの ArcGIS Server のバージョンと一致するように ArcGIS Desktop をアップグレードすることを検討してください。


3/6/2012