ラスタ データの表示に使用するレンダラ

ラスタ データセットは、さまざまな方法でマップに表示またはレンダリングすることができます。レンダリングには、データを表示するプロセスが伴います。ラスタ データセットがどのようにレンダリングされるかは、中に含まれているデータのタイプと表示するデータによって異なります。ラスタによっては、配色(カラーマップ)があらかじめ定義されているものがあり、ArcMap はラスタの表示にカラーマップを自動的に使用します。配色が定義されていないものについては、適切な表示方式を選択します。必要に応じて、ユーザが表示方法を調整することもできます。

表示色の変更、データ値クラスのグループ化、コントラストを強調するための値のストレッチを実行することが可能です。マルチバンド ラスタの場合は、3 つのバンドを赤、緑、青(RGB)成分として同時に表示することができます。ラスタ データセット デジタル標高モデル(DEM)がある場合は、陰影起伏により表示することができます。

ラスタ データセットを表示またはプレビューしたり、ラスタ データセットに対してレイヤを作成すると、最も適したレンダラを使用して表示されます。一般に、すべてのデータを利用するためにラスタ データセットを表示する特定の方法があります。個々のラスタ データセット、モザイク データセット、およびラスタ カタログは同様の表示方式を提供します。ArcMap では、表示や解析のニーズに基づいて、さまざまなレンダリング方式の中から選択することができます。これらの方式は、画像解析ウィンドウを使用するか、[レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスを開いて [シンボル] タブでパラメータを編集することで変更できます。設定したレンダリング プロパティを保持するために、レイヤ(*.lyr)ファイルを保存することができます。

画像解析ウィンドウの詳細

レイヤ ファイルの保存の詳細

ラスタ データの表示方式

ストレッチ

ストレッチ レンダラは、カラー ランプのグラデーションを使用して、連続したラスタ セル値を表示します。ストレッチ レンダラは、連続的なデータの単一のバンドの描画に使用します。ストレッチ レンダラは、画像、航空写真、標高モデルなど、広い範囲にわたる値を表示する場合に役立ちます。次に、マルチバンド ラスタ データセットの単一のバンドにストレッチ レンダラを使用した例を示します。

ストレッチ レンダラの例

値をストレッチする方法を正確に決定する際には、複数の自動ストレッチ オプションと手動オプションから選択することができます。

表示を改善するためのコントラスト ストレッチに関する詳細

RGB コンポジット

RGB コンポジット レンダラはストレッチ レンダラと同じ方法を使用しますが、赤、緑、青のコンポジットとしてバンドを結合することができます。カラーの航空写真を表示するときには、3 バンド ラスタ データセットを表示することがよくあり、このレンダラがデフォルトで適用されます。衛星または航空画像などのマルチバンド ラスタ データセットを操作する場合は、このレンダラを使用してさまざまなバンドの組み合わせを表示することもあります。

次に、3 つのバンドを使用してマルチバンド ラスタ データセットを表示する例を示します。上の画像では、ストレッチ レンダラを使用してラスタ データセット内のバンドの 1 つを表示しています。下の画像は RGB コンポジット レンダラを使用して作成されたもので、カラーで表示されます。

RGB コンポジット レンダラの例

表示を改善するためのストレッチの詳細

分類

分類レンダラは、シングルバンド ラスタ レイヤで使用します。分類方式は、セル値をクラスにグループ化することにより、主題ラスタを表示します。傾斜、距離、適性などの連続的な事象には、この種の主題的な分類を使用します。この場合は、範囲を少数のクラスに分類し、それらのクラスに色を割り当てます。次に、分類レンダラを使用して標高ラスタ データセットを表示する例を示します。

分類レンダラの例

次の分類方法のいずれかを選択できます。

  • 手動 - クラスの閾値を設定することができます。たとえば、重要な閾値に区切りを配置することにより特定のパターンを強調したい場合、または特定のクラス閾値を要求する特定の標準に従う必要がある場合に、この手法を使用します。
  • 等間隔 - クラスの数を指定すると、セル値の範囲が均等なサイズのクラスに分割されます。この手法を使用して、他の値と比較した属性値の相対量を強調します。パーセンテージや温度など、一般的なデータの範囲に最適です。
  • 指定間隔 - セル値を分割する間隔を指定すると、ArcMap がクラスの数を決定します。
  • 等量 - 各クラスに同じ数のセルが含まれます。線形に分布するデータには、この手法を使用します。
  • 自然分類(Jenks) - クラスの閾値は、データ値の差が比較的大きい隣接したフィーチャ ペアを検出することにより、統計的に決定されます。
  • 標準偏差 - 平均値からのセル値の差を示します。正規分布データに最適です。
  • 幾何学的間隔 - 等比級数を持つクラスの間隔に基づいてクラス閾値が作成されます。この分類法におけるジオメトリック係数を(逆数に)変更して、クラスの範囲を最適化することができます。このアルゴリズムは、各クラスの要素数の二乗和を最小化することで、幾何学的間隔を作成します。これにより、各クラスの範囲にクラスごとにほぼ同じ数の値が含まれ、間隔ごとの差がほぼ一定に保たれます。

    このアルゴリズムは、連続的なデータに対処するために特別に設計されたものです。等間隔分類、自然分類(Jenks)、および等量分類の中間的な方法です。中間値と極値の重要な変化の間でバランスを取ることで、視覚効果の高い、地図作成的にも包括的な結果が生成されます。

    幾何学的間隔分類を使用する例としては、降雨量のデータセットを使用する際に、100 の測候所のうち 15 の(50% 未満の)測候所では降水量が記録され、残りの測候所では降水量が記録されていないために属性値が 0 になる場合などがあります。

個別値

個別値レンダラは、ラスタ レイヤの各値を個別に表示するために使用します。たとえば、土壌や土地利用状況を表示するための主題ラスタ レイヤなど、地表上の特定のオブジェクトを表す不連続な値で分類されていることがあります。次に、土地利用を示すラスタ データセットの分類の例を示します。

主題ラスタの例

個別値レンダラは、各値をランダム カラーとして表示します。データのカラーマップがある場合は、カラーマップ レンダラを使用してデータに関連付けられた色を表示することができます。

カラーマップ

カラーマップ レンダラは個別値レンダラと同じように使用します。または、ラスタ レイヤ内の値をあらかじめ指定された色で表す場合に使用します。

カラーマップ レンダラは、ラスタ データセットと共にカラーマップが存在している場合に、[シンボル] タブの利用可能なレンダラのリストに自動的に表示されます。

不連続カラー

不連続カラーは、ランダム カラーを使用してラスタ データセット内の値を表示したい場合に使用します。このレンダラは、個別値レンダラに似ていますが、存在する個別値の数を計算する必要がないため、大量の個別値がある場合により効率的です。不連続カラー レンダリングは、選択した色の最大数に達するまで、各個別値に色を割り当てます。次の個別値は、配色の先頭から開始します。このプロセスは、各個別値に色が割り当てられるまで継続されます。

どの値にどの色がマップされているかを表示する凡例は生成されず、コンテンツ ウィンドウにも表示されません。

シングルバンド データセットのレンダリング

シングルバンド ラスタ データセットを描画する際、デフォルトのレンダラを決定するためのルールは次のようになります。

マルチバンド データセットのレンダリング

デフォルトの RGB コンポジット レンダラを使用してマルチバンド ラスタ データセットが描画される際には、[オプション] ダイアログ ボックスの [ラスタ] タブで定義されたデフォルト バンドの組み合わせが使用されます。データセットに統計情報がある場合、値 2 の標準偏差ストレッチが使用されます。データセットに統計情報がない場合、ストレッチは適用されず、データの最小値と最大値はそれぞれ 0 と 255 に拡大/縮小されます。

アルファ バンドのレンダリング

アルファ バンドは、透過マスクとして機能し、各ピクセルに透過値を提供します。RGB コンポジット レンダリングを適用したマルチバンド ラスタ データセットでは、アルファ バンドの有効/無効を切り替えることができます。

アルファ チャネルのオン/オフを切り替えるには、ラスタの [レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスの [シンボル] タブで、該当するチェックボックスをオンまたはオフにします。

ラスタ カタログのレンダリング

ラスタ カタログは、テーブル形式で定義されたラスタ データセットのコレクションであり、カタログ内の個々のラスタをレコードで指定します。ラスタ カタログを使用すると、隣接するラスタのコレクションを 1 つの大きなファイルにモザイク化せずに表示することができます。また、共通点のないラスタ データセットやある程度、重複するラスタ データセットまたは完全に重なり合うラスタ データセットを保持することもできます。

現在の表示範囲内に画像が 10 個以上ある場合、ラスタ カタログはデフォルトでワイヤフレームとして表示されます。それ以外の場合は、実際のラスタ データが表示されます。ワイヤフレームを使用すると、ラスタ カタログの表示速度が向上します。デフォルトの 9 つの画像は、ラスタ カタログの表示プロパティで、または [オプション] ダイアログ ボックスの [ラスタ] タブで変更することができます。

ArcMap は、ジオデータベース ラスタ カタログの各ラスタ データベース メンバーを最適なレンダラでレンダリングすることができます。ラスタ カタログの [レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスの [シンボル] タブには、カタログに利用できるレンダラのリストが表示されます。さまざまなレンダラを追加または削除して、このレンダラのリストを編集することができます。カタログのレンダリングに使用できるのは、このリストのレンダラだけです。利用可能なレンダラのリストでは、ラスタ カタログの 1 つ以上のラスタ データセット メンバーに適用される現在アクティブな各レンダラの横に、アスタリスク(*)が表示されます。ただし、アクティブ リストを起動できるのは、画像が画面に表示されるときにだけです。このリストは、カタログ全体が表示されるまで完成しません。アクティブ レンダラは、別のエリアまたは全体表示に変更した後、またはワイヤフレーム表示に戻した後も維持されます。

上記のように、各ラスタ カタログ アイテムは、ラスタ データセットと同様のルールに従って、リスト内の適切なレンダラでレンダリングされます。したがって、使用可能なレンダラ リスト内の唯一のレンダラである場合を除き、分類されたレンダラはデフォルトのレンダラにはなりません。

ラスタ カタログ レンダラの変更手順を表示

モザイク データセットのレンダリング

モザイク データセットは、ラスタ カタログとラスタ データセットが混成した、ジオデータベース内のデータ モデルであり、ラスタ カタログのリアルタイムなモザイク ビューを表現しています。ArcMap、ArcScene、ArcGlobe にモザイク データセットを追加すると、少なくとも [境界線]、[フットプリント]、[イメージ] の 3 つのレイヤを含む特殊なグループ レイヤとしてコンテンツ ウィンドウに表示されます。イメージ レイヤは、モザイク データセットのモザイク化した画像のレンダリングを制御するのに使用します。イメージ レイヤを右クリックして [プロパティ] ダイアログ ボックスを開き、ラスタ データセットと同じように、[シンボル] タブでレンダラを変更することができます。イメージ レイヤのプロパティを変更しても、モザイク データセットには影響しません。表示するときのレンダリング方法に影響するだけです。

イメージ レイヤの詳細

ラスタ データ ソースの陰影起伏

ラスタ データセットに陰影起伏を適用すると、ラスタ データセットによって表されるサーフェスの地形を視覚化することができます。ラスタ データセットで陰影起伏を表示する方法はいくつもあります。1 つの方法では、ストレッチ レンダラ内で利用可能な陰影起伏効果レンダラを使用します。陰影起伏レンダラは、光源の始点(方向)と標高に応じて、DEM 内で陰が存在する場所を予測します。陰影起伏の照明効果は次の方法で調整できます。

画像解析ウィンドウでは、DEM から陰影起伏(hillshade)と陰影図(shaded relief)の両方を作成できます。陰影図(shaded relief)は、陰影起伏付きの DEM とカラー ランプの適用された同じ DEM を組み合わせています。

DEM から陰影起伏(shaded relief)を作成する方法の詳細

ArcGIS の Spatial Analyst または 3D Analyst Extension の [陰影起伏] ツールを使用して、陰影起伏値の記録されたラスタ データセットを作成することもできます。さらに、TIN に陰影起伏を適用することができます。

TIN をサーフェスとして描画することで陰影起伏を表示する方法の詳細

関連項目


7/10/2012