住所ロケータ コンポーネントの定義

住所ロケータの作成を開始する前に、住所ロケータの主なコンポーネントとプロパティについて知っておくと役に立ちます。住所ロケータの作成では、適切な住所ロケータ スタイルおよび参照データの選択と、一致とする最小スコアやサイド オフセット距離などのロケータのオプションの選択を行います。

各種の住所ロケータ スタイルとその適切な用途の詳細

住所ロケータを作成するためのコンポーネント

住所ロケータを作成するには、以下に示すコンポーネントを [住所ロケータの作成(Create Address Locator)] ダイアログ ボックスで指定する必要があります。

住所ロケータ スタイル

住所ロケータ スタイルは、住所ロケータの骨格です。住所ロケータの作成にどの参照データを使用できるかを指定します。さらに、ジオコーディング プロセスと出力を行うためのプロパティと構文解析のための文法も指定します。手持ちのデータおよびジオコーディングする住所に適切な住所ロケータ スタイルを選択することは非常に重要です。

住所ロケータ スタイルの詳細および一般的に使用される住所ロケータ スタイル

参照データ

参照データは、次の 3 つの役割のうちの 1 つを果たします。

  • プライマリ テーブルとしての参照データ(必須) - プライマリ テーブルとは、住所ロケータが使用する主要な参照データです。シェープファイル、ArcInfo カバレッジ、または GDB(ジオデータベース)フィーチャクラスを参照データにすることができます。Esri StreetMap のデータも使用できます。ダイアログ ボックスでこれ以降に表示されるフィールドは、住所ロケータ スタイルに指定されている各フィールドを、参照データの属性フィールドに割り当てるためのものです。

  • 代替名テーブルとしての参照データ(オプション) - 参照データに含まれる道路などの属性が複数の名前で参照されたり、時間とともに名前が変化することはよくあります。このような場合は、代替名が含まれるテーブルを住所ロケータに追加することができます。

    代替名テーブルの詳細

  • 場所名のエイリアス テーブルとしての参照データ(オプション) - 場所名のエイリアスとは、学校や病院のような目印になるもの(ランドマーク)の名前のような、特定の場所に付けられた一般的な名前です。ジオコーディングでは、住所の代わりに場所名のエイリアスを照合に使用するように住所ロケータを設定できます。場所名のエイリアス テーブルを追加することにより、場所の名前に基づいて場所を検索できるようになります。

    場所名のエイリアス テーブルの詳細

フィールド マップ

照合できるフィールドは、選択した住所ロケータ スタイルに応じて異なります。デフォルトでは、住所ロケータによって参照属性テーブルが検索され、住所ロケータで指定されたフィールドに属性フィールドが自動的に割り当てられます。フィールドが自動的に選択されない場合は、各フィールドのドロップダウン メニューを使用して、フィールドを手動で選択することができます。住所ロケータに適切なフィールドの選択は、住所の照合方法に影響を与えます。

住所ロケータの作成後に変更できるコンポーネント

住所ロケータを作成したら、その住所ロケータをワークスペースでダブルクリックして [住所ロケータのプロパティ] ダイアログ ボックスを表示することができます。以下に示す住所ロケータのコンポーネントの変更と保存が可能です。

名前と説明

住所ロケータの名前は、ロケータを特定するために使用されます。住所ロケータの名前は ArcCatalog で変更できます。

[説明] テキスト ボックスを使用して、住所ロケータのさらに詳しい説明を入力できます。この説明は、[住所ロケータのプロパティ] ダイアログ ボックスを開いたときと、ArcMap の [住所ロケータ マネージャ] ダイアログ ボックスに表示されます。

入力住所フィールドの名前

[住所のジオコーディング] ダイアログ ボックスを使用して住所のテーブルをジオコーディングすると、テーブル内の入力フィールド名がロケータによって検索されます。[入力住所フィールド] セクションに表示されている名前は、ロケータによって自動的に認識されます。使用する住所テーブルのフィールドの名前をロケータに追加して、そのフィールドが認識および選択されるようにすることができます。フィールドが認識されない場合は、ダイアログ ボックスでフィールドを手動で選択する必要があります。

マッチング オプション

[マッチング オプション] セクションは、住所ロケータにユーザ定義の設定を行うために使用します。[場所名のエイリアス テーブル] ボタンをクリックすると、別のダイアログ ボックスが開き、代替の場所の名前とそれに対応する住所のテーブルを指定することができます。

場所名のエイリアス テーブル

住所ロケータの作成時に場所名のエイリアス テーブルを住所ロケータに追加しなかった場合や、追加したが別のテーブルを使用したい場合は、[場所名のエイリアス テーブル] ボタンをクリックし、開いたダイアログ ボックスを使用して、場所の名前とそれに関連付けられた住所のテーブルを参照することができます。これにより、場所の名前を入力してジオコーディングできるようになりますが、住所ロケータは関連付けられた住所を検索してその場所を見つけます。

場所名のエイリアス テーブルの詳細

スペリング センシティビティ

[スペリング センシティビティ] 設定は、参照データで可能性のある候補を検索するときに、住所ロケータでどの程度の違いが許容されるかを制御します。スペリング センシティビティの値を低くすると、「Universty」や「Universe」などが「University」に一致する候補として扱われます。値を高くすると、正確に一致するものだけに候補が制限されます。スペリング センシティビティは、各候補の一致スコアには影響を与えません。住所ロケータによる検討の対象となる候補の数だけが制御されます。住所ロケータでは各候補の一致スコアが計算され、スコアによって候補がランク付けされます。

住所ロケータのスペリング センシティビティ設定の値は 0 ~ 100 です。デフォルトのスペリング センシティビティは 80 で、スペリングのわずかな違いだけが許容されます。住所のスペリングが正しいことが確かであれば、スペリング センシティビティを高く設定することができます。住所のスペリングが間違っている可能性がある場合は、センシティビティを低く設定する必要があります。スペリング センシティビティを低く設定すると、より多くの候補を住所ロケータで処理してスコアを計算する必要があるため、ジオコーディング プロセスの時間が長くなります。

候補とする最小スコア

参照データ内で可能性のある候補を検索するときに、住所ロケータはこの値を閾値に使用して、表示される結果をフィルタします。この閾値よりもスコアが低い場所は表示されません。

住所ロケータの候補とする最小スコアの値は 0 ~ 100 です。ジオコーディングする住所の候補を住所ロケータで見つけることができないと思われる場合は、この設定を低くして、スコアの低い候補を表示することができます。

候補とする最小スコアによって、[対話的なレビュー] ダイアログ ボックスと [検索] ダイアログ ボックスに表示される候補が決まります。

一致とする最小スコア

一致とする最小スコアの設定を使用すると、参照データの有力候補を住所が一致したと見なすために必要な一致のレベルを制御することができます。完全に一致した場合のスコアは 100 です。一致スコアが 80 ~ 99 であれば、通常は適切な一致と見なすことができます。一致とする最小スコアよりもスコアが低い住所は、一致していないと見なされます。

住所ロケータに設定できる一致とする最小スコアの値は 0 ~ 100 です。信頼性の高い住所検索が要求される用途の場合は、一致とする最小スコアの値を高く設定する必要があります。一致とする住所の数をできるだけ増やす必要があり、正確に一致しない可能性がある住所があってもかまわない場合は、設定を低くすることができます。

バッチ ジオコーディングで一致と見なされるには、一致とする最小スコアに等しいか、それを超えるスコアである必要があります。複数の一致が見つかった場合は、一致スコアが最も高い候補が割り当てられます。一致とする最小スコアは [検索] ダイアログ ボックスでも使用されます([すべての候補を表示] チェックボックスをオフにしている場合)。この場合は、一致とする最小スコアに等しいか、それを超えるスコアの候補だけが表示されます。

交点コネクタ

道路フィーチャが含まれる住所ロケータでは、ストリート住所に加えて道路の交差点のジオコーディングがサポートされます。ArcGIS では、交差点を交点コネクタ文字列によって区切られた 2 本の道路として指定します。交差点に基づく住所の例には「Hollywood Blvd. & Vine St.」や「Yonge St. | Bloor St.」などがあります。

交点コネクタ設定では、住所ロケータで交点コネクタとして認識されるすべての文字列を指定することができます。デフォルトでは &、|、@ の記号が交点コネクタとして認識されます。交点コネクタを示す他の記号や語句を追加することができます。

交点コネクタとして表示される記号や語句は、交差点住所専用に使用されます。たとえば、AND が交点コネクタとして追加された場合は、「123 A and B St.」は常に交差点住所として見なされます。

出力オプション

[出力オプション] セクションでは、マップ上でフィーチャを描画する正確な位置を指定することができます。

サイド オフセット

一部の住所ロケータ スタイルでは、道路のそれぞれの側の住所範囲情報が含まれる参照データが使用されます。このスタイルに基づく住所ロケータは、住所が道路のどちら側に位置するかを判断することができます。カートグラフィック(地図製作)の目的で、このようなスタイルの住所ロケータを使用するときには、ジオコーディングしたフィーチャにサイド オフセットを指定することができます。サイド オフセットを指定すると、住所ロケータでは、ジオコーディングしたフィーチャを道路のセンターラインから道路の正しい側に向かって、マップ単位に基づく指定した距離だけずらして配置します。

エンド オフセット

ライン ジオメトリの参照データを使用する住所ロケータは、ジオコーディングした住所の参照フィーチャに沿って場所を内挿することができます。参照フィーチャの端にあるフィーチャが、交差道路など他のフィーチャの上に重なることを防ぐために、住所ロケータではジオコーディングした住所の場所に対してエンド オフセットを適用することができます。住所ロケータのエンド オフセット設定は、直線距離または参照フィーチャの長さの割合(0 ~ 50 パーセント)で表すことができます。エンド オフセット設定が 0 パーセントであれば、フィーチャは参照フィーチャの端からオフセットされません。エンド オフセットが 50 パーセントであれば、すべてのフィーチャが参照フィーチャの中央に配置されます。デフォルトでは、住所ロケータのエンド オフセットは 3 パーセントに設定されています。

次の図では、「100 MAIN ST」という住所が 25 フィートのサイド オフセット距離で道路フィーチャからオフセットされています。この住所は道路フィーチャの端に該当するため、道路フィーチャの端に揃えて配置されます。

エンド オフセット

道路が斜めに交差している場合、オフセット距離を指定することにより、住所の配置が望ましくない影響を受け、住所が MAIN ST ではなく OAK AV に属しているように見えることがあります。この状態を次の図に示します。

エンド オフセット

適切な道路フィーチャの中央に向けて住所の位置を調整するエンド オフセットを指定することができます。エンド オフセットを使用すると、前の図で示したような状態の多くが修正されます。この例では、10 パーセントのエンド オフセットを使用して、道路フィーチャの長さの 10 パーセントに相当する距離だけ住所を道路フィーチャの中央に向けて移動しています。

エンド オフセット

結び付く候補があれば一致させる

一致スコアは最大で等しくても、フィーチャのジオメトリが異なる 2 つ以上の参照フィーチャが住所ロケータで見つかった場合に、住所をこれらのフィーチャの 1 つに自動的に一致させるかどうかを指定することができます。この設定を使用して、これらの住所に自動的に一致させるか、不一致のままにしておくかを指定します。どちらの場合でも、対話的なレビュー プロセスの中で、複数候補がある住所が一致しているかどうかを確認することができます。

レビュー プロセスの詳細

出力フィールド

ジオコーディングされた住所でフィーチャクラスを作成するときには、[出力フィールド] セクションを使用して、結果的に作成されるフィーチャクラスの属性テーブルに表示されるフィールドを決定することができます。

無効になっているオプションは、選択した住所ロケータに適用されません。

X 座標と Y 座標

この設定を使用すると、ジオコーディングされたフィーチャの X 座標と Y 座標が含まれる属性を、ジオコーディングされたフィーチャクラスに作成することができます。設定すると、住所ロケータによって出力フィーチャクラスに 2 つの属性フィールドが作成されます。1 つはジオコーディングされたフィーチャの X 座標、もう 1 つは Y 座標です。住所が一致しない場合、これらの属性はその住所に対して無効になります。

標準化住所

この設定を使用すると、標準化住所が含まれる属性を、ジオコーディングされたフィーチャクラスに作成することができます。各住所のこのフィールドの内容は、住所ロケータで使用される住所コンポーネントをパイプ文字(|)で区切ったものになります。この属性は、住所ロケータによって住所が標準化された方法を示すときに便利です。

参照データ ID

この設定は、住所が一致した参照フィーチャの ID が含まれる属性を、ジオコーディングされたフィーチャクラスに作成するために使用します。住所が一致しない場合、この属性はその住所に対して無効になります。

割合

ライン ジオメトリの参照データを使用する住所ロケータは、ジオコーディングした住所の参照フィーチャに沿って場所を内挿することができます。この設定は、住所が一致した参照フィーチャに沿った場所が含まれる属性を、ジオコーディングされたフィーチャクラスに作成するために使用します。この属性の値は 0 ~ 100 の数字です。0 は参照フィーチャの開始ノードを、100 は参照フィーチャの終了ノードを示します。住所が一致しない場合、この属性はその住所に対して無効になります。

住所ロケータの作成後に確認できるコンポーネント

住所ロケータを作成した後で、どのような参照データがロケータに使用されているかを確認することができます。ロケータに関するさらに詳しい情報を表示する高度なオプションもあります。無効になっているオプションは、選択した住所ロケータに適用されません。

リリース

ロケータを作成した ArcGIS のリリース番号。

空間参照

住所ロケータの作成時に別の参照系を指定しない限り、ロケータの作成にはフィーチャクラスの空間参照が使用されます。[空間参照] オプションの横にある省略記号ボタン ...(省略記号) をクリックして、さらに詳しい情報を表示することができます。空間参照は読み取り専用オプションであるため、パラメータを編集することはできません。

最新ビルド

ロケータが最後に作成された日付と時間。参照データが変更されている場合、この情報を利用してロケータを再度作成する必要があるか判断することができます。

GDB バージョン

ロケータを作成したジオデータベースのバージョン名やバージョン番号(参照データがバージョン対応の場合)。

ビルド オプション

デフォルトでは [ロケータに標準化された参照データを格納] がオンになっているため、参照データはリアルタイムで標準化され、ロケータには参照データの標準化された属性が格納されます。

レガシレガシ:

ArcGIS 10 よりも前のバージョンで作成されたロケータには [ロケータにジオコーディング ルールを埋め込む] オプションがあり、ジオコーディング ルール ベースがロケータに格納されます。このオプションは、ArcGIS の現在のバージョンで作成されたロケータには適用されません。

関連項目


7/10/2012