GIS ユーザを対象とした Web GIS の概念
Google Earth、Google Maps、および Microsoft Bing Maps の人気は、情報の質の高さ、使いやすさ、性能によるものです。気に入っている点をたずねたとしたら、ほとんどの人が、高解像度の画像、目標物の検索のしやすさ(アドレス ジオコーディングなど)、2D および 3D のマップの閲覧のしやすさ、応答の速さと、固有の情報を追加する(マッシュアップ)機能を挙げるでしょう。
GIS の見地からもう少し掘り下げてみると、Web でデジタル マップとグローブを構築して提供する場合に、ArcGIS に実装できるアイデアが見えてきます。これらが、操作性と使用効果につながります。
- GIS にとって Google Earth、Google Maps、および Bing Maps は、主にベースマップとして価値があります。これらのオンライン Web マップは、地理情報を上に重ね合わせて使用できる共通ベースマップ フレームワークとなります。この商用コンテンツに対する適切なライセンスと使用許可を得ると、組織でこれらの Web マップを GIS アプリケーションのベースマップとして使用できます。
さまざまな理由から、その他の多くの場合には、独自の GIS ベースマップを公開し、提供することを検討する必要があります。
- ほとんどの GIS アプリケーションには、操作情報を重ね合わせるベースマップを含める必要があります。すべてのデジタル マップ アプリケーションには、操作の基礎となる強力なマップが必要です。Google Earth や Bing Maps と同様に、GIS ベースマップは、操作情報を重ね合わせて、表示して使用できるフレームワークとなります。
各ベースマップは特定の要件をサポートする必要があります。たとえば、ベースマップは、組織の業務の分野と任務を反映する特定のアプリケーション ドメインに合わせてカスタマイズできます。
- 万能のベースマップはありませんが、広く使用されている(かつ、GIS アプリケーションで利用できる)標準的なベースマップは多くあります。すべての状況、すべてのシナリオを 1 つのベースマップで済ませることはできません。しかし、Google、Microsoft、および Esri 提供のベースマップ サービスは広範に使用されているベースマップを提供しています。それらのベースマップは、多様なアプリケーション シナリオをサポートでき、多くのユーザに標準ベースマップとして認知されています。
当然、Web 上の既存のベースマップ サービスを利用する方がよいケースが多くあります。たとえば、操作コンテンツと観測値を Google Earth、Google Maps、Bing Maps、または ArcGIS Online のベースマップにオーバーレイして使用できます。既存の Web マップの GIS アプリケーションでの使用については、「ベースマップの代替」をご参照ください。
ただし、多くの場合、これらの既存の Web マップで組織の業務はサポートできません。対象分野向けの独自のベースマップの設計、公開および管理を行う必要があります。ベースマップを作成すると、業務をとりまく環境をより明確にし、日常業務をサポートする主題データを含めることができます。多くの GIS 組織では、組織で使用するためのさまざまなベースマップを公開し、サポートします。これには、土地区画と地籍の業務、水文解析、地質解析および人口統計業務用のベースマップ フレームワーク、公共事業のランド ベース、レクリエーションと環境用の地形図、森林地図、エンジニアリング マップ、建設現場のマップ、史跡地図、航海用海図、航空図、緊急対応のマップやその他多くのアプリケーション例が含まれます。「Map Templates」(マップ テンプレート)ページでは、ユーザ独自のベースマップの構築開始方法を把握できる各種サンプルをダウンロードできます。
- ほとんどの場合、ベースマップはマルチ解像度である必要があります。ベースマップは、業務のサポートに必要なさまざまな縮尺で表示できるようにする必要があります。たとえば、調査エリア全体のベースマップはどのように見えますか。ユーザが日常業務を行う縮尺ではどうですか。ベースマップを拡大したとき、マップ エレメントはどうなり、各縮尺でエレメントはどのように表示されますか。
ベースマップは、(ArcGIS Online、Google Earth、Bing Maps で確認される動作と同様)サポートされている縮尺のいずれでも適切に表現できるよう設計する必要があります。
興味深いことに、Google、Microsoft、または Esri が Web で提供する世界の道路地図(Street Map)は、実際は 15 から 20 の地図をまとめたものです。各縮尺で道路の表示に使用されるマップは 1 つだけです。世界全体を表示する縮尺は約 1:150,000,000 で、北米全体の場合は約 1:30,000,000 です。都市レベルでは、さまざまな縮尺がサポートされ、拡大して 1:2,000 の縮尺まで使用できます。GIS が主に都市や市街地を対象としている場合は、およそ 1:500,000 から 1:1,000 または 1:600 までの範囲の 6 から 10 の縮尺で機能するマップ アプリケーションがよいでしょう。GIS で地域のアプリケーションを処理する場合は、およそ 1:2,500,000 から 1:10,000 までの範囲の 6 から 10 の縮尺で機能するマップがよいでしょう。 - ベースマップで対象エリアを、より詳細にカバーする必要があるかもしれません。人口集中地域では、より詳細なレベルを提供するベースマップが必要な場合があります。これは、政府組織、州政府組織、地方組織などでしばしば起こります。たとえば、都市や市街地用のより大きな縮尺を全国地図に含める場合があります。ArcGIS Online ベースマップ サービスの拡張を検討するには多くの場合、調査エリアに独自の高信頼性かつ高精度の最新コンテンツを使用します。マップ縮尺が縮小表示された状態では、ベースマップが ArcGIS Online サービスで起動されます。ただし、調査エリアを拡大表示するときはマップ サービスに変換できます。
- パフォーマンスを向上させるには、ベースマップにマップ キャッシュを使用する必要があります。ベースマップは、GIS 操作の操作フレームワークとコンテキストを提供します。ほとんどの場合、ベースマップ情報は、操作情報ほど頻繁には変更されません。最大限のパフォーマンスとスケーラビリティのために、ベースマップを事前処理できます。
これには、マップ キャッシュを構築するための設計が必要です。詳細については、「マップ キャッシュの計画」をご参照ください。ベースマップ サービスを長期にわたって保守することも重要です。ベースマップを最新に保つ工程を明確にする必要があります。ArcGIS を使用すると、長期にわたってコンテンツが更新されるように、ベースマップ キャッシュを保守するワークフローを設定して自動化できます。ベースマップ キャッシュのマップの更新の自動化に使用できるバック オフィス プロシージャとスクリプトのセットを構築すると便利です。マップ タイル内でデータが更新されると、各マップ タイルが再処理されます。詳細については、「ジオプロセシングによるキャッシュの作成と更新の自動化」をご参照ください。
- GIS ベースマップの多くは 3D にすることができます。ほとんどのユーザは最初は 2D 版のベースマップを使用しますが、やがて 3D 版を使用するかもしれません。多くの 2D ベースマップは、2D のコンテンツをデジタル テレインにオーバーレイすることで 3D に移行できます。これによって、地表に配置でき、サブサーフェス構造を表示できる 3D フィーチャなどの 3D 表示を追加するフレームワークが提供されます。
グローブ サービスを構築するには、2D マップを ArcGlobe セッションに追加し、グローブ ドキュメントを ArcGIS Server グローブ サービスとして公開します。