モバイル GIS とは
モバイル コンピューティングと GIS テクノロジの進歩により、GIS を現場へ携行し、必要な情報を直接やり取りしたり、変更の取り込みや更新、現場とオフィスとの間での同期が簡単に行えるようになりました。
現場での地理空間機能に依存する組織でモバイル GIS を利用可能にするモバイル コンピューティング テクノロジの発展には、次のようなものがあります。
- 正確な GIS データの捕捉を可能にする測位テクノロジ(GPS、レーザ レンジ ファインダ、RFID)
- GIS の機能を現場の様々な環境に持ち込むことを可能にした強力なモバイル オペレーティング システムとデバイス プラットフォームの進歩(スマート フォン、Pocket PC、Tablet PC など)
- インターネット/イントラネットでの GIS へのアクセスと、現場からオフィスへの同期を可能にする、統合されたワイヤレス通信機能(Wi-Fi、携帯電話、Bluetooth の機能)
モバイル GIS アプリケーションにはいくつかの種類があります。
- マップの表示とナビゲーションを行うシステム - 現場でマップを使用するためのモバイル アプリケーション用の低精度で低コストのソリューションです。多くの場合、これには構造化されていないマップ データ(マップ メモ)を捕捉し、略記する機能が含まれます。
- データの収集と管理を行うシステム - 現場でのデータ収集と管理に対し、GIS データ レイヤの精度を保証する正確で専門的なソリューションです。
- 調査システム - 現場での調査データの収集のための高精度で高コストなソリューションです。従来、調査は一般的な GIS ワークフローとは見なされていませんでした。しかし、これは急速に変わりつつあります。
従来、空間情報は地図帳といった紙の地図として現場に持ち込まれていました。現場で地図帳を使用して収集した情報は、紙の地図上にメモ書きされ、フィールド スタッフがオフィスに戻ってから GIS に入力していました。現地調査は、用紙を現場に携行して筆記板上で記入し、オフィスへ戻った後にデータベースに入力していました。紙面情報のデータ入力は、非効率的で、繰り返しが多く、ミスも起こりがちでした。
紙ベースのシステムをモバイル アプリケーションに替える組織が増え、その結果、多くのモバイル GIS タスクが出現しました。
- 現場でのマップの表示 - 地理空間情報をモバイル マップとして現場に携行し、マップを使用して資産情報をクエリできることから、現場での意思決定の価値が高まります。GPS を使用したナビゲーション サポートを追加することで、マップの位置を使用して、情報を現場のタスクに関するものに絞り込むことができます。これらのアプリケーションでは、位置をオフィスに報告する機能(モバイル ワーカーの位置を捕捉して報告するなど)をユーザが追加することもあります。これによって、フィールド スタッフ用に状況認識図を作成する機能が有効になります。
- 現地調査 - フィールド スタッフが現場で資産を調査します(変圧器、水道メータ、道路標識、建築物、林分など)。モバイル ワーカーは、各資産の状態と稼動状況について報告します。資産の写真を撮ったり、GPS を使用して GIS 内のフィーチャの位置の精度を上げたりすることもあります。
- 現場でのデータ収集 - 効率的なデータ収集ワークフローに基づいて、新たな情報を現場で収集することは、一般的なタスクです。GPS やレーザ レンジ ファインダなどの測位システムと、インテリジェントなフォームや新規データのメニュー方式の属性との統合は不可欠です。
モバイル GIS ソリューションは、フィールド スタッフが使用方法を習得しなければならない一般的なマップ中心のアプリケーション フレームワークに一連の機能を提供することで、または、フィールド スタッフにタスクの流れを示す設定可能なワークフロー主導のアプリケーションとなることで、彼らがタスクを実行できるようにします。フィールド スタッフの規模とレベルに応じてソリューションを選択できます。
ArcGIS には、様々なフレームワークで単純なフィールド タスクから複雑なフィールド タスクまで対応する、3 つのモバイル GIS ソリューションがあります。それは次の 3 つです。
- ArcGIS Mobile - ArcGIS Mobile には、Web サービス アーキテクチャを使用して、現場とオフィス間の情報の同期をとる Windows Mobile および Windows デバイス用のタスク主導のモバイル アプリケーションが組み込まれています。現場用のマップおよびワークフローは、Mobile Project Center という名称のデスクトップ アプリケーションを使用して設定できます。ArcGIS Mobile には、現場でのマップの表示、現地調査と現場でのデータ収集のタスクが含まれています。ArcGIS Mobile には、Windows Mobile デバイスと Windows(ノート型パソコン/タブレット)デバイスで動作する専用のアプリケーションを構築するための SDK も含まれています。
- ArcPad - GIS を現場に携行するためのモバイル GIS アプリケーションです。ArcPad はマップ中心で、比較的単純なジオグラフィック ツールを必要とするフィールド タスクに特化しています。これらのタスクは、通常、ハンドヘルド コンピュータで実行されます。
- ArcGIS Desktop と ArcGIS Engine - これらの製品は、ハイエンドなモバイル GIS 用に、高度なマッピングや表示、編集ツールを提供します。これらのソリューションは、通常はハイエンドな Tablet PC で動作する、より高度なジオグラフィック ツールを必要とするフィールド タスクに特化しています。多くの場合、現場で Tablet PC に表示するマップには、高解像度で詳細な情報が必要とされます。
どのモバイル GIS ソリューションを選択するかに関係なく、モバイル GIS を効果的に使うためには ArcGIS Desktop が欠かせません。ArcMap は、モバイル マップをオーサリングする主要なツールで、現場からの更新をエンタープライズ GIS に融合します。ArcCatalog は、GIS 内でデータとトランザクション モデルを構築するために使用する管理コンソールで、現場での更新の管理に最適です。