ArcGIS Mobile 10 の新機能

ArcGIS 10 リリースでは、次の主要テーマに基づいて ArcGIS Mobile が開発されました。

アプリケーションの操作性の向上

9.3 リリースでは、即時利用可能な Windows Mobile 向けアプリケーションが ArcGIS Mobile に導入されました。ArcGIS Mobile は、さまざまなフィールド プロジェクトに合わせて構成できるタスク駆動型アプリケーションです。今回の ArcGIS 10 リリースでは、より大きく、読みやすくなったテキストとメニュー オプション、ジェスチャを使ってスクロールできるリスト、直観性と柔軟性が増したワークフローなど、タッチ スクリーンの操作環境が大幅に向上しました。

さらに、ArcGIS 10 バージョンのアプリケーションにはいくつかの新機能も追加されています。マップ表示に関しては、ライン、エリア、およびフィーチャを測定するための新しい機能が追加されました。新しいタイプのインターネット ベースマップおよび非接続ベースマップもサポートされています。

フィーチャの収集タスクでは、ワークフローが向上し、効率化されました。GPS データ収集操作が簡素化され、ボタンを押すだけで GPS 位置の平均化を開始および停止できます。位置を収集しながら、マップや GPS の状態を表示することも可能です。

ポリラインやポリゴンを作成する新しい GPS ストリーミング方式が導入されました。距離または時間間隔に基づいて位置をフィルタリングし、実際に取得した位置に左右のオフセットを適用してポリラインやポリゴンを配置できます。属性を収集する際、各フィールドがページ全体に表示されるので、収集を容易に行うことができます。フィーチャ間で属性をコピーしたり、値の設定が必須の属性を通知したりする機能も追加されました。

ArcGIS Mobile アプリケーションを使用した写真の取り込み

検索タスクでは、検索条件を保存できるようになりました。検索条件はプロジェクトに保存されるので、同じプロジェクトを次に開いたとき、必要な検索をすぐに実行できます。

同期タスクでは、編集内容をサーバへ自動的に送信できるようになりました。フィーチャを収集したとき、フィーチャを更新したとき、またはデバイスをクレードルに接続したときに、変更内容をサーバへ送信できます。また、指定した時間間隔で送信することもできます。

「フィールド作業員の表示」という新しいタスクが追加され、フィールド作業員どうしの連携が可能になりました。このタスクを使用すれば、他のフィールド作業員の所在地をマップ上で確認し、電子メールや SMS で連絡を取り合ったり、直接電話をかけたりできます。各フィールド作業員が 1 日に移動した場所を記録・管理するフィールド作業員ログを併用することで、他のフィールド作業員の所在地を特定または追跡し、互いに協力して作業を進めることができます。

Windows 向け ArcGIS Mobile アプリケーション

Windows デバイスおよび Windows Mobile デバイスで ArcGIS Mobile アプリケーションを実行できるようになりました。Windows 向け ArcGIS Mobile は車両に搭載されることが多いため、耐久性を考慮したタッチ スクリーン向けに最適化されています。Windows 向け ArcGIS Mobile アプリケーションには Windows Mobile アプリケーションの主要機能がすべて組み込まれており、さらに車載用として特別に設計されています。たとえば、統合タッチ スクリーン キーボード、昼夜のスキン設定、アプリケーション自体の明るさ調節など、Windows 向けアプリケーション独自の機能が追加されています。さらに、ベースマップ レイヤを暗くして操作対象マップ レイヤを目立たせ、レイヤ間のコントラストをはっきりさせることもできます。

Windows 向け ArcGIS Mobile アプリケーション

.NET を使用した ArcGIS Mobile アプリケーションの拡張

Windows/Windows Mobile 向け ArcGIS Mobile アプリケーションの構成にプログラミングは不要です。アプリケーションに対するタスクの追加と削除、既存のタスクの動作変更と機能変更、使用するマップ レイヤ コンテンツの選択などが可能です。

ただし、多くの場合は、それぞれのビジネス ワークフロー、タスク、およびデータに合わせてコア アプリケーション機能を拡張する必要があります。ArcGIS Mobile アプリケーションをフレームワークとして使用することで、独自開発が必要な部分を減らし、ビジネス価値の向上に注力できると同時に、既存の基本的な GIS アプリケーション機能を活用することができます。

さらに、フィールド データ管理のビジネス ワークフローに適した新しいタスクを作成したり、既存のタスクに必要な機能を追加したり、アプリケーション全体を拡張することも可能です。

Mobile Project Center を使用したプロジェクト管理の簡素化

Mobile Project Center は、フィールド プロジェクトの作成と管理を目的として ArcGIS 10 リリースに導入された新しいアプリケーションです。フィールド プロジェクトでは、さまざまなフィールド ワークフローを実行するためのマップ、タスク、および機能を定義します。

9.3 リリースでは、プロジェクトを作成および管理するための機能は ArcGIS Server アプリケーションに組み込まれており、GIS サーバの管理や Web アプリケーションの作成でも使用されていました。

Mobile Project Center を使用すれば、作成するフィールド プロジェクトを自分のデスクトップのローカルに保存するのか、社内の ArcGIS Server に保存するのか、arcgis.com に保存するのかを選択できます。フィールド作業員の配備方法に応じて、単純なファイル転送、社内の Web サーバ、または Esri のクラウド サーバ(arcgis.com)を使い分けることができます。社内の Web サーバにインストールされた ArcGIS Server には、プロジェクトを保存できるコンテンツ Web サービスと仮想ディレクトリが含まれます。Mobile Project Center では、この Web サービスにプロジェクトを保存できます。さらに、ArcGIS Mobile フィールド アプリケーションからコンテンツ Web サービスにアクセスを実行し、必要なプロジェクトをデバイスに取り込むことができます。

Mobile Project Center ではフィールド マップの内容を定義できます。フィールド マップは、複数のマップ レイヤ(操作マップ レイヤまたはベースマップ レイヤ)で構成されます。ArcGIS 10 リリースでは、空間参照が一致していれば、複数の操作レイヤやモバイル サービスをフィールド プロジェクトに追加できます。つまり、複数のトランザクション マップ レイヤをサービスとしてグループ化することができます。たとえば、観測データや調査データなど、編集可能なレイヤを 1 つのサービスとしてグループ化します。一方、送水バルブやパイプなど、検索は可能だが編集は許可されていない読み取り専用のトランザクション レイヤは、さらに別のサービスとしてグループ化します。

Mobile Project Center

操作レイヤ ソースに加え、ベースマップ レイヤを指定するときにも多数の選択肢があります。ベースマップは、4 種類のマップ(Street Map(日本未対応)、マップ サービスのキャッシュ ファイル、ArcGIS.com のベースマップ、ArcGIS Serverのキャッシュされたマップ サービス)のうちいずれかで構成されます。

Street Map は ArcGIS Mobile の新しいデータ製品であり、道路の中心線と対象データのポイントが含まれます。データセットの一部を抽出して、自分のモバイル デバイスにコピーし、非接続時にフィールドで使用できます。

マップ サービスのキャッシュ ファイルも同様です。キャッシュ マップ サービスを作成し、データをモバイル デバイスにコピーしておけば、そのキャッシュからファイルを直接読み込むことができます。キャッシュ マップ サービスには、オルソ画像とカートグラフィック ベースマップの両方を追加できます。

ローカル ベースマップに加え、ArcGIS 10 ではインターネットに接続してベースマップを利用することができます。これらには、ArcGIS.com のベースマップ サービスと独自に公開したキャッシュ マップ サービスが含まれます。

アプリケーション フレームワークを使用して作成するタスクや拡張機能は、Mobile Project Center を通じてフィールド プロジェクトに公開します。独自に用意したタスクおよび拡張機能を特定のフォルダに配置すると、新しい機能やタスクがモバイル プロジェクトの作成時に表示されます。

ArcGIS Mobile の詳細は、ArcGIS Desktop ヘルプの Professional Library で、Mobile GIS に関する説明をご参照ください。


7/10/2012