ArcGIS 10 の新機能 - マップ表示とナビゲーション
ベースマップ レイヤ
ベースマップ レイヤは、操作情報を動的に表示するフレームワークを提供する、マップ レイヤの一種です。ベースマップ表示のパフォーマンスは非常に優れています。ベースマップ レイヤは比較的静的で、頻繁に変更されることはないため、一度表示が計算されると何度も再利用できます。あるエリアに特定のマップ縮尺でアクセスすると、ベースマップ レイヤの表示が計算されます。そのエリアに再び同じマップ縮尺でアクセスすると、この表示が再利用されます。
この静的な振舞いにより、ベースマップ レイヤでは常に、最適化されたマップ表示がなされます。たとえば、ArcMap はマップ表示を 1 回だけ計算し、移動やズームを行うたびに、その計算済みマップ表示が再利用されます。
ベースマップ レイヤの作成
最初に、ベースマップ レイヤを設計します。マップ表示の比較的静的な部分であるレイヤを特定します。また、縮尺依存の描画についても検討します。これには、各縮尺でマップがどのように表示されるかを考慮してマップを設計する必要があります。
- マップを設計したら、通常の手順に従って、ArcMap で各マップ レイヤを作成します。
- マップに新しいベースマップ レイヤを追加します。コンテンツ ウィンドウでデータ フレーム名を右クリックし、[新規ベースマップ レイヤ] をクリックします。
これによって、新しいベースマップ レイヤがコンテンツ ウィンドウに追加されます。ベースマップ レイヤは、コンテンツをドラッグして含めることができる、グループ レイヤのように振舞います。
- ベースマップを構成するレイヤを選択し、ベースマップ レイヤにドラッグします。
- 新しいベースマップ レイヤの名前を変更します。
いったん設定すると、マップを表示するたびに、ベースマップ レイヤは最適化されたマップ表示ロジックを使用して描画されます。その他のレイヤは動的に描画され、データ ソースからの最新の更新情報にアクセスすることができます。
ベースマップ レイヤおよびアクセラレートされたラスタ レイヤをハードウェア アクセラレーションと組み合わせて使用すると、マップの画面移動やズームを行う際に、非常に高度なパフォーマンスで連続的で滑らかな表示を実現することができます。ArcMap セッションでハードウェア アクセラレーションをオンにすると、グラフィックス カード処理のパフォーマンスを改善することができます。ベースマップ レイヤまたはアクセラレートされたラスタ レイヤを使用していない場合、ハードウェア アクセラレーションはマップに影響を及ぼしません。ハードウェア アクセラレーションは、[ArcMap オプション] ダイアログ ボックスでオンとオフを切り替えることができます。
クイック画面移動モード
ベースマップ レイヤおよびアクセラレートされたラスタ レイヤを含むマップでは、次のような特殊なマウス操作によって、連続的に画面移動したりズームしたりできます。
- データ フレーム内にポインタを置きます。
- マウスの中央ボタンまたは Q キーを押したままにします。最初は、ポインタがアクティブな画面移動アイコン に変わります。 数秒すると、ポインタが連続画面移動カーソル に変わります。
- マウスの中央ボタンを押したまま、画面移動する方向へマップ上をドラッグします。指定した方向へマップ画面が連続的に移動します。画面移動中は、ポインタの形状が「移動方向を示す矢印」 に変わります。
Ctrl キーを押すとマップ画面の移動速度が速くなり、Shift キーを押すと遅くなります。
マップを画面移動する際、ベースマップ レイヤは比較的スムーズに連続して移動できます。その他のマップ レイヤは、マウスの中央ボタンを離すと再描画されます。
縮尺設定
[縮尺設定] ダイアログ ボックスで、マップを操作する際の表示縮尺を制限できます。ArcGIS.com、Bing Maps、Google マップなど、一般的な Web マップ スキーマの縮尺設定を読み込むこともできます。
データ ビューでの再描画回数の削減
ArcMap の以前のバージョンでは、データ ビューで作業しながら ArcMap ウィンドウのサイズ変更またはドッカブル ウィンドウのドッキング、ドッキング解除、サイズ変更によって、ArcMap の表示サイズを変更した場合、デフォルトでマップは使用可能な表示領域内におさまるように完全に再描画されました。そのため、縮尺が変わり、範囲は同じままでした(表示領域の新しい形状の内部に範囲がどれくらいうまくおさまるかに応じて、地理座標系のカバレッジが多少変わることはあります)。バージョン 10 では、データ ビューでのデフォルトの描画動作が変更され、表示サイズが変わっても表示領域内におさまるようにマップが完全に再描画されることはなくなりました。代わりに、縮尺は同じままで範囲が変更されます。表示領域を広くすると、地理範囲が広がります。逆も同様です。
これには、サイズ変更によって影響を受けない部分は再描画する必要がまったくないという性能上の利点があります。たとえば、ドッキングしたウィンドウを閉じた場合は、ウィンドウによって隠れていた部分だけを再描画すれば済みます。また、ウィンドウのドッキングとドッキング解除を行ってもマップ上の地理フィーチャは移動しないため、作業もしやすくなります。マップ上のフィーチャは、手動でマップの画面移動や拡大縮小を行うまで、同じ場所に表示され続けます。
以前のリリースでは、[ArcMap オプション] ダイアログ ボックスの [データ ビュー] タブに、表示領域のサイズが変わったときのマップ ドキュメントの再描画方法を選択するオプションがありました。このオプションはバージョン 10 では削除され、以前のバージョンでマップに対してこのオプションがどのように設定されているかに関係なく、バージョン 10 で開いた、または作成したマップ ドキュメントはすべて新しいデフォルト動作による性能強化の恩恵を受けられるようになっています。