都市環境における蒸気配管の爆発の評価

概要

2007 年、ニューヨークの都心、マンハッタンの交通量の多い交差点で 24 インチの地下蒸気配管が爆発しました。この爆発により、泥と飛び散るがれきが 40 階の高さまで広がって降り注ぎ、クライスラー ビルよりも高いタワー状の蒸気の雲ができました。配管は、発癌性物質として知られるアスベストで覆われていたと考えられるため、現場は「アスベスト汚染エリア」と宣言されました。爆風によって窓や窓のシール剤が割れ、汚染が建物内まで及んでいる可能性がありました。問題となったのは、爆風からの設定距離に基づいてこのエリア内のどの建物をサンプリングする必要があるかという点です。この問題に答えるには、[インターセクト 3D(Intersect 3D)] など複数の演算子ジオプロセンシング ツールを使用できます。

このガイド ブックでは、蒸気配管の爆発による汚染が示す危険についてデータの準備や解析を実施するための複数の 3D 設定演算子ジオプロセシング ツールの使用法を、ArcScene を使用して説明します。各建物を表すマルチパッチ フィーチャを作成して、それらのマルチパッチ フィーチャと危険ゾーンをインターセクトします。同じワークフローが ArcGlobe にも適用できます。

3D 設定演算子と閉じたマルチパッチ

[インターセクト 3D(Intersect 3D)] ジオプロセシング ツールを効果的に使用するには、入力フィーチャをクローズド マルチパッチにする必要があります。クローズド マルチパッチとは、空間的にひとつの容積を定義するトライアングルとリングのコレクションです。閉じているとみなされるには、容積のシェルにおいてトライアングル同士またはリング同士の間に隙間があってはなりません。さらに、容積の定義に関係しているトライアングルやリングが重なり合っていたり、交差したりしていてはなりません。[3D レイヤ → マルチパッチ フィーチャクラス(Layer 3D to feature Class)] ジオプロセシング ツールを使用して、立ち上げた建物のフットプリントをマルチパッチ フィーチャへ変換することで建物が作成された場合、それらのマルチパッチはすでに閉じています。

立ち上げポリゴンの複合セットを変換することで建物が作成されている、つまり、建物ごとに多くのポリゴンがマルチパッチ フィーチャにグループ化されている場合、それらのマルチパッチは閉じていません。各建物において、元のポリゴン同士が重なっていた箇所ではトライアングルが交差し、元のポリゴン同士が隣接していた箇所ではトライアングルが重なっています。閉じたマルチパッチ フィーチャを作成するには、[ユニオン 3D(Union 3D)] ツールを使用して、すべてのトライアングルを結合し、それらをインターセクトして、余分なフィーチャが建物内部に含まれるようディゾルブします。

トライアングルが交差したり、重なり合ったりしている透過表示の建物を、[ユニオン 3D(Union 3D] ジオプロセシング ツールを使用して、閉じたマルチパッチに変換

注意注意:
  • 建物フィーチャがサードパーティ アプリケーションによって作成されている場合は、ArcGIS へインポートする前にそのアプリケーション内でそれらの建物が閉じていることを確認する必要があります。

蒸気配管の爆発に関する危険ゾーンの作成

次に、蒸気配管の影響を受けたエリアを表す危険ゾーンを作成する必要があります。ポイント フィーチャクラスを作成し、それを ArcGlobe または ArcScene に追加してから、[3D エディタ] ツールバーを使用して爆風の発生場所にポイントを追加します。当該レイヤについて [レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスを開き、[シンボル] タブをクリックしてそのポイント シンボルをシンプル マーカー シンボルに変更します。爆風を表すために球体シンボルを使用して、球体のサイズが、影響を受けたゾーンと等しくなるように設定します。透過表示を設定するには、[レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスの [表示] タブをクリックするか、[3D 効果] ツールバーを使用して対話的に透過率を設定します。

3D シンプル マーカー シンボルを使用して汚染の影響エリアを可視化

サイズを調整するには、[シンボル プロパティ エディタ] ダイアログ ボックスを使用して、シンボルの X、Y、Z 値を個別に変更します。この場合、[幅] を 100、[高さ] を 100、[サイズ] を 300 に設定します。結果として、爆風の影響を受けた空間容積を表す長球が得られます。

[シンボル プロパティ エディタ] で球体の幅、高さ、およびサイズを調整して長球を作成

危険ゾーンの定義を終了するために、[3D レイヤ → マルチパッチ フィーチャクラス(Layer 3D to feature Class)] ジオプロセシング ツールを使用してこのフィーチャをマルチパッチに変換します。生成されるマルチパッチはすでに閉じているため、爆風ゾーンと周囲の建物をインターセクトする前に他に作業を行う必要はありません。

[レイヤ 3D → フィーチャクラス(Layer 3D to feature Class)] ジオプロセシング ツールによって 3D シンボルをマルチパッチ フィーチャに変換

マルチパッチ フィーチャのインターセクト

これで、[インターセクト 3D(Intersect 3D)] ジオプロセシング ツールを使用して、建物と、蒸気配管の爆発に関する危険ゾーンとの交差部分を作成できます。交差部分を別の色でシンボル表示して、汚染に関してサンプリングする必要がある建物のサーフェスの部分をハイライト表示します。

[インターセクト 3D(Intersect 3D)] ジオプロセシング ツールと結果の交差部分

該当するデータがある場合は、結果として得られた新しい交差ジオメトリを使用して、部屋などの建物内部のフィーチャを選択することもできます。これを行うと、窓の破損の有無を調べて汚染の可能性を確認するための場所のリストを簡単に作成できます。

このガイドでは、複数の 3D 演算子ジオプロセシング ツールを使用して、蒸気配管の爆発に起因する汚染に関してサンプリングする必要がある建物のサーフェスの部分を評価する方法を説明しました。


7/10/2012