モザイク データセットの概観図

基本的なレベルでは、モザイク データセットの概観図は、ラスタ データセットのピラミッドに似ています。この概観図は、モザイク画像の表示時に検査されるラスタを少数に抑えたことで、表示速度の向上と CPU 使用率の低減が図れるように作成された低解像度の画像です。ただし、概観図同士にはかなり大きな差異があります。これは、概観図の作成時に、使用されるパラメータのほとんどを制御することが可能なためです。特定地域のみを対象範囲として作成することも、あるいは特定の解像度のみをサポートするように作成することもできます。モザイク データセット全体に格納されているすべてのラスタを表示できるように、(各ラスタだけに限定せずに)作成されます。概観図はラスタ ピラミッドの停止した箇所から開始するのが一般的ですが、ラスタのピラミッドを一部だけ使用したい場合は、どのベース ピクセル サイズで概観図を生成するかを指定することができます。

概観図を使用すると、モザイク データセット全体が低解像度ですばやく表示されます。モザイク画像は小さい領域を連続的に描画して作成しているので、データの表示倍率を上げるとレイヤの描画時の解像度は向上しますが、パフォーマンスは維持されます。モザイク データセットをイメージ サービスとして配布する場合や、ネットワーク経由で配布する場合は、概観図を使用すると特に便利です。最適な概観図は、表示縮尺に基づいて選択されます。概観図を使用しない場合、データセット全体をリアルタイムで処理する必要があります。

モザイク データセットには、モザイク画像の生成に使用されるラスタの数を制限するためのプロパティが用意されています。このプロパティは変更可能ですが、この制限に達したら概観図を構築することをお勧めします。この制限を設定することで、コンピュータの処理するピクセル数が過剰になるのを防ぎ、適切な表示速度を維持することができます。

生成された概観図は、ソース ラスタに適用された関数を使用して処理されます。ただし、その処理には、モザイク データセット レベルで適用される関数は使用できません。そのため、モザイク データセット レベルの関数を変更しても、概観図は再生成されません。

概観図の作成

概観図を生成するツールには、2 種類があります。[概観図の定義(Define Overviews)] ツールでは、生成される概観図をカスタマイズできます。[概観図を構築(Build Overviews)] ツールでは、欠落している概観図の定義、概観図の更新および生成が実行されます。

[モザイク データセットへのラスタの追加(Add Rasters To Mosaic Dataset)] ツールまたは [概観図の定義(Define Overviews)] ツールを使用してラスタ データを追加する際は、デフォルトを使用して概観図を構築できます。どのツールを使用したらよいかは、ワークフローに基づいて決定されます。作成しようとしているモザイク データセットが単純なもの(たとえば、都市のすべてのオルソ画像を格納するモザイク データセット)で、フットプリントを一切修正しない場合は、ツール ダイアログ ボックスで、データを追加する際に概観図を構築するオプションをオンにするようにしてください。これにより、[概観図を構築(Build Overviews)] ツールで使用可能なすべてのオプションを適用して、完全な概観図が構築されます。ラスタ データセットのピラミッドと統計情報が未作成の場合は、必要に応じて、オルソ画像をモザイク データセットに追加し、[ピラミッドと統計情報の構築(Build Pyramid And Statistics)] ツールを使用した後、さらに [概観図を構築(Build Overviews)] ツールを使用できます。

多くのラスタ データセットには内部ピラミッドが含まれていますが、ピラミッドをユーザが自分で構築することもできます。ラスタ データセット上にピラミッドを置くと、モザイク データセットに必要な概観図の数を減らせます。

モザイク データセット用に生成されるピラミッドおよび概観図

概観図は一般的に、モザイク データセット内のラスタごとにピラミッドを表示する場合と比べ、軽快に動作します。次のものを使用する際には、ラスタ ピラミッドに概観図を構築することを検討してください。

比較的複雑なモザイク データセットを構築する場合(モザイク メソッドおよびリアルタイム処理を利用する場合は特に)、ソース ラスタのピラミッド構築および概観図の作成を必要時だけにとどめたほうが無駄がありません。たとえば、次のようなときだけにしてください。

また、(たとえば)ロック ラスタを使用してモザイク データセットの内部から個々のラスタを表示する予定がある場合は、固有のピラミッド(および統計情報)を含めたラスタ データセットを、さまざまな縮尺で迅速にレンダリングできます。ラスタ ビューア ウィンドウ(属性テーブル内のラスタ列からアクセス可能)でのラスタのプレビューも、迅速になります。

[概観図を構築(Build Overviews)] ツールには、いくつかの便利なオプションが用意されていて、モザイク データセットの変更または更新時のワークフローに適用されます。古くなった概観図の画像を再生成するためのオプションも用意されています。Stale は、概観図の作成に使用されるソース ラスタが変更されたか見つからないことを示しています。このオプションは、概観図の生成後にモザイク データセットからラスタを削除した場合や、フットプリントを変更した場合などに使用してください。欠落している概観図タイルを定義するオプションは、モザイク データセットにさまざまな変更(たとえば、ラスタの追加や削除、ラスタのフットプリントの変更、その他)を行った場合に便利です。このオプションを指定すると、モザイク データセットが評価され、十分な概観図が定義してあるかどうか、あるいは概観図を定義していない新しいデータが追加されたかどうかが判別されます。それによって、モザイク データセット用の概観図の完全なセットを生成することができます。

たとえば、概観図を定義しても構築しない場合、概観図の格納場所がクラッシュしたためにファイルが消失した場合、あるいはなんらかの理由で概観図が見つからないがモザイク データセット内には定義してある場合があります。このオプションを使用すれば、欠落している画像を生成し、欠落している概観図を作成または再作成することができます。

必要に応じて、ArcGIS.com からのレイヤや、他のモザイク データセット用に生成しておいた他の概観図など、別のデータセットを概観図として使用することもできます。このように別のデータセットを使用することは、多くの場合に推奨されます。なぜなら、表示倍率を下げたときに画像内の大部分の詳細が失われたり、色が不鮮明になったり、フィーチャ同士がブレンドされてしまったり、大きいフィーチャを認識しづらくなったりする場合があるためです。高解像度の画像やオルソ画像を使用しているときは特にそうです。これらのラスタ データセットは、[モザイク データセットへのラスタの追加(Add Rasters To Mosaic Dataset)] ツールを使用して追加でき、モザイク データセット内の他のあらゆるラスタと同様に処理されます。先に述べた概観図とモザイク データセットから生成された概観図との相違点は、1 つだけです。それは、後者の概観図の場合、属性テーブル内の [カテゴリ] フィールド値が [概観図] に設定されないという点です。

概観図生成の制御

概観図の生成場所、生成方法、生成する特定の概観図についての詳細を指定したい場合は、[概観図の定義(Define Overviews)] ツールを使用してください。

概観図の格納場所

概観図の生成の処理は、概観図をモザイク データセット属性テーブルに追加して定義付けすることから始まります。その後で概観図(ラスタ データセット)が生成されます。これは概観図を作成する方法やタイミングには関係ありません。デフォルトでは、モザイク データセットが保存されているフォルダと同じディレクトリに、概観図が生成、格納されます。このフォルダにはジオデータベースと同じ名前が付けられ、末尾に「.overview」ファイル拡張子が付加されます。ただし、モザイク データセットが ArcSDE ジオデータベース内に作成された場合は、対象のジオデータベース内に概観図が作成されます。

モザイク データセットはソース ラスタを参照するので、概観図をジオデータベース内に保存していない場合はソース ラスタと一緒に格納するほうが望ましいと言えます。また、他のモザイク データセット内のいずれかのモザイク データセットに作成しておいた概観図を使用する予定がある場合は、必要に応じて概観図の格納場所を個別に管理できます。概観図を生成する前に、[概観図の定義(Define Overviews)] ツールを使用して、概観図の出力場所を定義しておいてください。

モザイク データセット内の概観図の生成場所の定義

モザイク データセット内のどの領域にどのレベルで概観図を生成するかを制御できる、2 ~ 3 のパラメータが用意されています。デフォルトでは、モザイク データ境界内にある領域が、概観図の生成先になります。ただし、生成された領域を制御したい場合もあります。長方形領域を定義するには、モザイク データセットの空間参照系内にある最小および最大の X、Y 座標を指定します。

かわりに、必要に応じて、概観図を生成するレベルまたは解像度を制御することも可能です。概観図の生成に使用されるベース ピクセル サイズを定義することができます。このオプションを使用すると、表示速度の高速化を図るための前処理を、ラスタに対して実行できます。たとえば、モザイク データセットにオルソ補正、パンシャープン、およびカラー調整対象のラスタが含まれている場合、3 つの関数がすべて適用される解像度では、モザイク画像を表示するときに、計算上の負荷がかかることがあります。必要に応じて、頻繁に表示される領域内に処理対象ラスタを作成できます。この作成を行うには、まず範囲を定義した後、パンシャープン関数を適用するピクセル サイズ(パンクロマティック画像の解像度)を定義します。デフォルトで、この領域(定義しておいた解像度から始まり、最小の概観図サイズ制限に達するまで)の概観図が定義されます。生成する必要のあるレベルの数を定義して、さらに細かく制御することもできます。たとえば、パンクロマティック画像の解像度で概観図を 1 つだけ生成したい場合もあります。この生成を行うには、概観図レベルを 1 つ指定します。

また、概観図の生成時にラスタのピラミッドを考慮するかどうかを制御することもできます。元のピラミッドの生成時に使用したリサンプリング方式を使用しないなど、なんらかの理由から、どのピラミッドも使用したくないことがあります。[概観図の定義(Define Overviews)] ツール ダイアログ ボックスで、[概観図を作成] オプションをオンにすることができます。ラスタ ピラミッドが無視され、ラスタのベース ピクセル サイズより大きい係数で生成が開始されるように、概観図が定義されます。たとえば、係数を 3 とした場合、ベース ピクセル サイズまたはラスタは 1 メートルになるので、3 メートルの位置から概観図の生成が開始されます。

あるいは、多種類のデータ ソースの混在しているモザイク データセットがあり、なんらかの理由からすべてのピラミッドを使用せずに最初から数個のピラミッドだけを使用したい場合もあります。概観図の生成開始時のピクセル サイズを定義することもできます。

概観図サイズの定義

ソフトウェアを介して概観図のサイズを算出することを推奨しますが、状況によっては必要に応じて特定の設定を行うこともできます。概観図のサイズを制御するには、行と列、係数、圧縮の 3 つの方法があります。概観図の物理ディメンションを制限するには、行と列の最適数を定義します。値を増やすほどファイルが大きくなるため、下側の画像が変更されたときに再生成の必要性が生じがちになります。行と列の数は、概観図のラスタ データセットの数にも影響します。行と列の数が多いほど、生成される概観図の数が減ります。逆に、少ないほど、生成される概観図の数が増えます。

また、概観図の係数を変更して作成した概観図のラスタ データセットの数にも影響がおよぶ可能性があります。この係数は、一連の概観図サイズの算出に使用されます。たとえば、第 1 レベルのセル サイズを X とし、概観図の係数を 3 とした場合、次の概観図のピクセル サイズは 3 X になります。係数を大きくすると、生成される概観図のラスタ データセットの数が減りますが、モザイク画像の表示速度の低下を招くことがあります。概観図のレベルを増やすと、リサンプリング数が減少するので、表示速度が速くなるのが一般的です。

圧縮方法がいくつか用意されていて、概観図の格納に必要な領域を制御する場合に使用できます。概観図を圧縮せずに格納することも可能ですが、圧縮を省くとディスク領域が最大限に消費されます。なんらかの形式で圧縮を利用することを推奨します。概観図に保持されるピクセル値を懸念しているなら、可逆圧縮である LZ77 圧縮を推奨します。代替の圧縮方法として JPEG 圧縮があります。JPEG 圧縮は非可逆圧縮ですが、高い圧縮率を指定できます。JPEG 圧縮では品質を制御できるので、ファイル サイズに影響がおよぶことがあります。圧縮品質が高いほど、画質が向上する反面、ファイル サイズの圧縮率は低下します。

概観図の画質

[概観図の定義(Define Overviews)] ツールには、画像パラメータが用意されています。この画像パラメータを使用して、概観図の作成に使用されるリサンプリング方式、圧縮率、および圧縮品質を制御できます。したがって、データが主題であれば、最近隣内挿法を使用するように選択できます。あるいは、航空画像または衛星画像があるなら、共一次内挿法または三次たたみ込み内挿法を使用したほうが望ましいと言えます。先に言及したように、品質の選択も可能になっています。したがって、無圧縮、可逆圧縮、または圧縮を選択し、さらに画質全般を定義することができます。たとえば、JPEG 圧縮を選択した場合は品質として 75 を指定することを推奨します。この組み合わせにより、データのファイル サイズに対して最適な品質が得られるためです。大型モザイク データセットまたはデータベースを作成する際はあらかじめ、最適なパラメータを定義するための小規模なテスト ケースを作成しておいてください。このことは、言うまでもなく常に推奨されます。

概観図の生成所要時間

モザイク データセットにデータを追加する際は、ピクセル データを一切移動する必要がないため、処理が迅速です。ただし、大型モザイク データセットを作成する際は、計画に概観図の生成所要時間を考慮に入れる必要があります。上記選択肢のほとんどは所要時間に影響するため、所要時間の推定は容易ではありません。必要な概観図が多いほど、かかる時間も長くなります。この点も、テスト ケースの作成が推奨される正当な理由です。

概観図の生成を待つ必要なしに、モザイク データセットを使用または配布できます。モザイク データセットとそのベース ラスタは、作成後すぐにアクセス可能になります。概観図が生成されたら、モザイク データセット上で遠くへズーム アウトするにつれて次第にモザイク画像が影響を受けることや、作成されることを確認できるようになります。

関連項目


7/10/2012