セル サイズと解析でのリサンプリング
さまざまなラスタ データセットを同じセル解像度で格納する必要はありません。ただし、複数のデータセット間で処理を実行する場合は、登録の場合と同様に、セルの解像度を同一にするのが理想的です。複数のラスタ データセットを任意の ArcGIS Spatial Analyst ツールの入力値としたとき、それらのラスタ データセットの解像度が異なっている場合は、入力したデータセットの最も粗い解像度に合わせて 1 つ以上の入力データセットのリサンプリングが自動的に実行されます。
既定では、最近隣内挿法というリサンプリング手法が使用されます。理由は、その手法が不連続値タイプにも連続値タイプにも適用できるからです(これとは対照的に、共一次内挿法や三次たたみ込み内挿法は、連続データにしか適用できません)。リサンプリング手法が必要なのは、入力セルの中心が望ましい解像度を持つ変換後のセルの中心と揃うことがめったにないからです。さまざまな解像度のラスタを結合する前処理として、[リサンプル(Resample)] ツールを使用して共一次内挿法と三次たたみ込み内挿法を適用できます。
既定のリサンプリングの解像度は、セル サイズ環境パラメータで、入力ラスタの最小解像度またはユーザ定義の特定セル サイズのどちらをツールで使用するか指定することによって、制御することができます。
入力ラスタ データセットよりも小さいセル サイズを指定する場合は注意が必要です。新しいデータが作成され、セルは最近隣リサンプリングに基づいて内挿されます。結果の精度は、最も粗い入力ラスタと同じ程度になります。入力ラスタ データセットの解像度が 100 メートルのときにセル サイズを 50 メートルと指定すると、出力ラスタのセル サイズは 50 メートルになりますが、精度は 100 メートルのままです。
下の図では、解析環境で設定されたセル サイズが、ツールへの入力ラスタのセル サイズに比べて粗くなっています。実行時には、最初に入力ラスタが粗い解像度でリサンプリングされた後、ツールが適用されます。
解析の実行時は、セル サイズに関して適切な問題定義をするよう注意してください。たとえば、5 キロメートルのセル サイズでネズミの動きを調査することは考えにくいことです。5 キロメートルのセルがふさわしいのは、地球温暖化の影響を調べる場合などです。
リサンプリング
リサンプリングした出力ラスタ上の各セルが受け取る値を調べるには、出力ラスタの各セルの中心を元の入力座標系にマッピングする必要があります。各セルの中心の座標は、元の入力ラスタ上のポイント位置を得るために、逆変換されます。入力位置がわかったら、入力ラスタ内の近くのセルに基づいて、出力位置に値を 1 つ割り当てることができます。出力セルの中心が入力ラスタのセルの中心とぴったりと揃うことはまれです。そのため、入力ラスタのセルの中心を基準としたポイントの相対的な位置と、それらのセルに関連付けられている値に基づいて、出力値を決定するための手法がいくつも開発されています。出力値を決定するための手法としては、最近隣内挿法、共一次内挿法、三次たたみ込み内挿法の 3 つがあります。これらの手法ごとに、出力ラスタへの割り当て方法が異なります。そのため、出力ラスタのセルに割り当てされる値は、使用する手法によって異なる場合があります。
最近隣内挿法
最近隣内挿法は、入力セルの値を変更しないため、不連続(分類)データに適したリサンプリング手法です。この手法では、出力ラスタ データセットのセルの中心位置が入力ラスタ上で判明したら、入力ラスタ上で最も近いセルの中心位置が決定され、そのセルの値が出力ラスタのセルに割り当てられます。
最近隣内挿法では、入力ラスタ データセットのセルの値は変更されません。入力ラスタの値「2」は、出力ラスタでは「2.2」や「2.3」にはならず、常に値「2」になります。出力セルの値が変更されないため、最近隣内挿法は、名義データや順序データに使用します。そのようなデータでは、各値がクラス、メンバ、または分類(土地利用形態、土壌、森林の種類といった分類データ)を表します。
演算で 45°回転した入力ラスタから作成された出力ラスタを、リサンプリングする場合を考えてみましょう。出力セルごとに、入力ラスタから値を作成する必要があります。下の図で、入力ラスタのセル中心部はグレーのポイント、出力セルは緑色の陰影付き部分、処理対象セルは黄色の陰影付き部分です。最近隣内挿法では、出力処理対象のセル中心部(赤色のポイント)に最も近い入力ラスタのセル中心部(オレンジ色のポイント)が、処理セル(黄色の陰影付き部分)の出力値として識別され割り当てられます。このプロセスが出力ラスタのセルごとに繰り返されます。
共一次内挿法
共一次内挿法では、最も近い 4 つの入力セルの中心値を使って、出力ラスタ上の値を決定します。出力セルの新しい値は、これら 4 つの値の加重平均によって求められますが、その際は出力セルの中心からの距離に合わせて調整されます。この内挿法では、最近隣内挿法を使用する場合よりも滑らかなサーフェスが得られます。
下の図では、前掲の最近隣内挿法と同様、入力ラスタのセル中心部はグレーのポイント、出力セルは緑色の陰影付き部分、処理対象セルは黄色の陰影付き部分です。共一次内挿法では、処理セルの中心部(赤色のポイント)に最も近い 4 つの入力セルの中心部(オレンジ色のポイント)が識別され、加重平均が計算された後、結果値が処理セル(黄色の陰影付き部分)の出力値として割り当てられます。
出力セルの値が入力セルの相対的な位置および値に従って計算されることから、共一次内挿法は、セルに割り当てる値が既知のポイントまたは事象の位置から決定されるようなデータ(つまり、連続サーフェスのデータ)に適しています。標高、傾斜角、空港からの騒音公害、河口付近における地下水の塩分濃度などはすべて、連続サーフェスとして表現できる事象であり、共一次内挿法を使ってリサンプリングするのが最適です。
三次たたみ込み内挿法
三次たたみ込み内挿法は、共一次内挿法に類似しています。ただし、三次たたみ込み内挿法の場合は、最も近い 16 個の入力セルの中心位置と値から加重平均が計算されます。
次の図は、三次たたみ込み内挿法での出力値の計算方法の例を示しています。処理セルの中心部(赤色のポイント)に最も近い 16 個の入力セルの中心部(オレンジ色のポイント)が識別され、加重平均が計算された後、結果値が処理セル(黄色の陰影付き部分)の出力値として割り当てられます。
三次たたみ込み内挿法の場合は、共一次内挿法に比べてデータの境界が鮮明になるという傾向があります。それは、出力値の計算に使用されるセルの個数が多いからです。
リサンプリングとデータ タイプ
共一次内挿法や三次たたみ込み内挿法では、出力ラスタ データセット内に元の値が維持されないため、分類データにはこれらの内挿法を使用しません。ただし、連続データの場合は、3 つの手法をすべて使用できます。その場合、最近隣内挿法では濃淡にむらがある出力結果が得られ、共一次内挿法ではスムーズな結果が得られます。また、三次たたみ込み内挿法では、きわめて鮮明な結果が得られます。