グリッドに基づく変換方式
グリッドに基づく変換には、以下の方法があります。
NADCON 変換および HARN 変換
米国では、地理座標系間の変換にグリッドを基本とした方式を使用しています。グリッドに基づく変換方式を使用することにより、座標系間の差分をモデリングできるため、最も正確な変換が可能になります。対象地域はセルに分割されます。NGS(National Geodetic Survey)によって、1927 年北米測地基準(NAD 1927)や他の旧地理座標系と NAD 1983 間の変換のためのグリッドが公開されています。これらの変換は、NADCON メソッドにまとめられています。メインの NADCON グリッドである CONUS によって、隣接した 48 州が変換されます。その他の NADCON グリッドによって、次の地域に対する旧地理座標系が NAD 1983 に変換されます。
- アラスカ
- ハワイ諸島
- プエルトリコおよびバージン諸島
- アラスカのセント ジョージア、セント ローレンス、およびセント ポール諸島
おおまかな精度は、隣接した 48 州では 0.15 メートル、アラスカおよびアラスカ諸島では 0.50 メートル、ハワイでは 0.20 メートル、プエルトリコおよびバージン諸島では 0.05 メートルです。精度は、グリッドが計算された当時(NADCON、1999 年)に、地域内の測地データがどの程度正確であったかによります。
ハワイ諸島は NAD 1927 にはありませんでした。ハワイ諸島は、まとめて旧ハワイ測地基準系と呼ばれる複数の測地基準系を使用してマッピングされました。
新しい測量技術と衛星測定技術を使用することにより、NGSと州は測地基準点網を更新することができました。各州の更新が完了すると、NGS によって NAD 1983 とより正確な基準点座標間を変換するグリッドが公開されました。当初は、この作業はHPGN(High Precision Geodetic Network)と呼ばれていました。現在は、HARN(High Accuracy Reterence Network)と呼ばれています。2004 年 1 月時点で、4 地域と 46 の州の HARN グリッドが公開されています。HARN 変換の精度は、約 0.05 メートルです(NADCON、2000 年)。
10 進形式の秒での差分値が、経度用と緯度用の 2 つのファイルに格納されています。あるポイントにおける 2 つの地理座標系間の差分を正確に計算するために、共一次内挿法が使用されます。グリッドはバイナリ ファイルですが、NGS のプログラムである NADGRD を使用することにより、グリッドを ASCII(American Standard Code for Information Interchange)形式に変換することができます。ページの下部に、CSHPGN.LOA ファイルのヘッダと最初の「行」が表示されています。これは、南カリフォルニアの経度グリッドです。最初の行の数字の書式は、順に、列数、行数、z 値(常に 1)、最小経度、セル サイズ、最小緯度、セル サイズ、および未使用です。
この例の次の 37 の値は、経度の間隔 0.25°または 15 分での 32°N における -122°から -113°までの経度シフトです。
NADCON EXTRACTED REGION NADGRD 37 21 1 -122.00000 .25 32.00000 .25 .00000 .007383 .004806 .002222 -.000347 -.002868 -.005296 -.007570 -.009609 -.011305 -.012517 -.013093 -.012901 -.011867 -.009986 -.007359 -.004301 -.001389 .001164 .003282 .004814 .005503 .005361 .004420 .002580 .000053 -.002869 -.006091 -.009842 -.014240 -.019217 -.025104 -.035027 -.050254 -.072636 -.087238 -.099279 -.110968
NTv1(National Transformation version 2)
アメリカと同じく、カナダでは NAD 1927 と NAD 1983 間の変換にグリッドに基づく方法を採用しています。NTv2(National Transformation version 2)メソッドは NADCON とまったく同じです。1 組みのバイナリ ファイルに 2 つの地理座標系間の差分が格納されています。あるポイントの正確な値を計算するために、共一次内挿法が使用されます。
一度に 1 つのグリッドしか使用できない NADCON とは異なり、NTv2 は最も正確なシフト情報を得るために複数のグリッドをチェックするように設計されています。カナダ用に 1 セットの低密度ベース グリッドがあります。さらに、都市などの特定の地域には高密度ローカル サブグリッドがあり、これはベース グリッドまたは親グリッドの部分と重なっています。あるポイントが高密度グリッドの 1 つにある場合は、NTv2 では高密度グリッドを使用します。そうでなければ、そのポイントは低密度グリッドに「レベルダウン」します。
この図において、ポイントが左下部の星の間に入ると、高密度サブグリッドでシフト量が計算されます。それ以外の箇所の座標のポイントについては、低密度ベース グリッドでシフト量が計算されます。ソフトウェアによって、ベース グリッドとサブグリッドのどちらを使用するかが自動的に計算されます。
カナダの親グリッドは 5 ~ 20 分の範囲の間隔です。高密度グリッドは、通常は 30 秒または 0.08333333°のセル サイズです。
NADCON グリッドとは異なり、NTv2 グリッドには各ポイントの精度が記載されています。精度の値は、数センチメートルから 1 メートル程度におよぶことがあります。高密度グリッドの精度は、通常は 1 センチメートル未満です。
オーストラリアとニュージーランドでも、地理座標系間を変換するために NTv2 形式が採用されています。オーストラリアは、AGD 1966(Australian Geodetic Datum of 1966)または AGD 1984 と GDA 1994(Geocentric Datum of Australia of 1994)間を変換するための、複数の州ベースのグリッドを公表しています。この州グリッドは、国全体のグリッドに統合されています。ニュージーランドは、NZGD 1949(New Zealand Geodetic Datum of 1949)と NZGD 2000 間を変換するための、国全体のグリッドを公表しています。
NTv1(National Transformation version 1)
NADCON と同様に、National Transformation version 1(NTv1)では、カナダにおける NAD 1927 と NAD 1983 間の差分をモデリングするために単一のグリッドを使用します。このバージョンは、ArcInfo Workstation において CNT とも呼ばれます。精度は、74 %のポイントに対して実際の差分の 0.01 メートル以内、93 %のポイントに対しては 0.5 メートル以内です。