適切な変換方法の選択

地理座標系は、3 次元の地球上の位置を特定するためのフレームワークを提供します。それぞれの地理座標系(GCS)には、サイズと形状を定義する回転楕円体があります。また、地理座標系はそれぞれ固有の方法で地上の位置に結び付いています。このため、地上の同じ位置でも、それぞれの地理座標系によって座標値が異なります。投影座標系でデータを表示するとその違いが明確になり、差は数センチメートルから数百メートルにまで及ぶことがあります。異なる地理座標系に基づくデータセットを使用する場合には、適切な地理座標(または測地基準系)変換の方法を設定する必要があります。

注意注意:

地理座標系と測地基準系の 2 つの用語は、同じ意味で使用されることがよくあります。測地基準系の方が古い用語です。測地基準系の概念は、地理座標系の中に含まれています。

地理座標変換は、たとえば NAD 1927 から WGS 1984 への変換のように、常に特定の方向(変換元から変換先)で定義されています。変換の名前はこれを反映して、NAD_1927_To_WGS_1984_1 のようになります。名前の末尾に番号が付くこともあり、前述の例では _1 が付いています。この番号は、変換方法が定義された順序を表しています。番号が大きいほど正確な変換であるとは限りません。地理座標変換には方向性が組み込まれていますが、すべての変換方式は反転可能です。つまり、変換はどちらの方向でも使用できます。ArcGIS Desktop は、入力および出力の地理座標系に応じて変換を適切に適

ある 2 つの地理座標系の間に変換が定義されていない場合、第 3 の地理座標系を使用して変換のチェーンを構成できることがあります。ほとんどの場合は、WGS 1984 が共通のリンクです。必要な情報、つまり方式とパラメータ値が分かっていれば、[カスタム地理座標系変換の作成] ツールを使用して新しい変換を定義することもできます。

多数の変換方法が存在する理由

2 つの地理座標系の間には、変換が存在しないことも、1 つまたは複数存在することもあります。一部の地理座標系では、変換方法が公開されていません。これは、その情報が政府または企業にとって戦略的に重要であると考えられているためです。多くの GCS には複数の変換方法が存在します。これらの変換方法は、使用地域や精度の面で異なります。精度は通常、特定の変換方法を反映します。NTv2 や NADCON などのファイルベースの方法は、地心変換や座標フレームなどの数式ベースの方法よりも精度が高い傾向があります。変換方式について詳しくは、「地理座標変換方式」をご参照ください。

使用される方法にかかわらず、それぞれの変換は特定の地域を対象として設計されており、それぞれの変換の適用法については考慮の余地があります。重要な考慮事項の 1 つは一貫性、つまり 2 つの地理座標系の変換に同じ変換を毎回使用することです。数多くの変換が存在するため、ArcGIS ツールは一般に、2 つの地理座標系に対して特定の変換を設定していません。使用できる変換、方法、および使用地域のリストについては、geographic_transformations.pdf ファイルを参照してください。

NAD 1983 と WGS 1984 の間の変換

当初、NAD 1983 と WGS 1984 は一致するものと見なされていました。座標の変化を最小限にするために、NAD 1983 は北米プレートと太平洋プレート(ハワイなど)に結合しています。WGS 1984 は、構造プレートとは独立した国際地球基準座標系(ITRF)に結合しています。年月の経過とともに、2 つの座標系は徐々に異なるものになっていきました。


7/10/2012