日射量のモデル化

到達する日射量は、太陽から発生し、大気中を伝播するときに変化し、さらに地形と地表面の地物により変化し、地球表面で直達、散乱、および反射の成分として受け取られます。直達日射は、太陽を起点とする直線で、妨げられることなく受け取られます。散乱日射は、雲や粉じんなど大気中の物質により散乱されるものです。反射日射は、地表面の地物から反射されるものです。直達、散乱、および反射の日射の合計を、合計または全天の日射量と呼びます。

到達する日射量は、直達、散乱、または反射の成分として受け取られます。
到達する日射量は、直達、散乱、または反射の成分として受け取られます。

一般的に、直達日射は総日射のうち最大の成分で、散乱日射は 2 番目に大きい成分です。反射日射は通常、雪面など反射率が非常に高い表面に囲まれた場所を除いて、総日射に占める割合はごくわずかです。ArcGIS Spatial Analyst の日射量ツールの総日射量計算には、反射日射は含まれていません。したがって、総日射量は、直達日射と散乱日射の合計として計算されます。

日射量ツールは、ポイント位置、または地理的エリア全体について計算を実行できます。以下の 4 つのステップを実行します。

  1. 上半球の可視領域を地形に基づいて計算する。
  2. 計算で得られた可視領域を直接太陽軌道図にオーバーレイして、直達日射を推定する。
  3. 可視領域を拡散全天分割図にオーバーレイして、散乱日射を推定する。
  4. 対象とする各位置について上記のプロセスを繰り返して、日射量マップを生成する。

日射は地形と地表面の地物から受ける影響が大きい場合があるので、計算アルゴリズムの主要な成分について、各位置の上半球の可視領域をデジタル標高モデル(DEM)で生成する必要があります。半球の可視領域は、上半球の(魚眼)写真に似ていて、プラネタリウムのように空全体を地表から見上げたものです。天空の可視領域の広さは、その位置における日射量に重要な役割を果たします。たとえば、遮るものがない野原に設置したセンサは、深い谷に設置したセンサよりも日射量が高くなります。

以下の画像は上半球の写真で、天空の可視領域、および周囲の地形や地表面の地物によって妨げられている天空の方向を示します。これは、人間が地表から全方向を見上げたときの景色に似ています。

半球(魚眼)写真
半球(魚眼)写真

全天可視領域の計算

全天可視領域は全天のラスタ表現で、特定の位置から見たときの可視領域と視界が妨げられる領域を示します。可視領域の計算は、着目する位置の周囲の指定方向数について検索を行い、天空の障害物の最大角度、つまり地平の角度を決定することで行われます。その他すべての未検索方向については、地平の角度は内挿されます。次に地平の角度が、3 次元の半球が 2 次元のラスタ画像として表される半球座標系に変換されます。可視領域のラスタの各セルには、天空の方向が可視または不可視かを示す値が割り当てられます。出力セルの位置(行と列)は、方向を示す半球の天頂角θ(垂直線からの角度)と方位角α(北からの角度)に対応します。

以下の図に、DEM の 1 つのセルの可視領域の計算を示します。指定した数の方向に沿って地平の角度が計算され、天空の半球表現の作成に使用されます。得られた可視領域は、天空の方向が可視(白で表示)と不可視(灰色で表示)の特性を示します。計算理論を示すために、可視領域を半球写真とオーバーレイしています。

全天可視領域の計算の例
水平角、得られた可視領域、天空ビューにマップされた可視領域の図

可視領域を、太陽の位置(太陽軌道図)と天空の方向(全天分割図)の情報と組み合わせて、各位置の直達、散乱、および合計(直達+散乱)の日射量を計算し、正確な日射量図が生成されます。

太陽軌道図の計算

天空の各方向から発生する直達日射量は、可視領域と同じ半球投影で太陽軌道図を使用して計算されます。太陽軌道図は太陽の軌道、つまり 1 日、および 1 年間で変化する見かけの太陽の位置を表すラスタ表現です。太陽軌道図は、一定期間に天空を移動する太陽の位置を観察したものに似ています。太陽軌道図は、1 日の特定期間(単位: 時間)および 1 年の特定期間(単位: 日または月)における太陽の位置を定義する離散的な太陽軌道図の部分で構成されます。太陽の軌道は、解析エリアの緯度、および太陽軌道図の部分を定義する時間設定に基づいて計算されます。太陽軌道図の各部分について、一意の識別値、およびその重心の天頂角と方位角が指定されます。直達日射量を計算するために、各部分から発生する日射量が個別に計算され、可視領域が太陽軌道図にオーバーレイされます。

以下の図は、冬至(12 月 21 日)から夏至(6 月 21 日)の期間で計算した北緯 45 度の太陽軌道図です。太陽軌道図の個々の部分(色分けされた四角形)は 30 分間隔で 24 時間、および 1 か月間隔で 1 年間観測した太陽の位置を表します。この画像は、上方の可視領域と同じ半球の投影であることに注意する必要があります。太陽の位置は、1 日および 1 年で太陽が天空を移動する状態で表されます。

太陽軌道図の例
太陽軌道図の例

全天分割図の計算

散乱日射は、大気中の成分(雲、粉じんなど)により散乱した結果として、天空の全方向から発生します。特定位置の散乱日射を計算するために、全天の半球図を天頂角と方位角により定義した一連の天空域に分割して表す全天分割図が作成されます。各部分について、一意の識別値、およびその重心の天頂角と方位角が指定されます。散乱日射は、方向(天頂と方位)に基づいて、天空域ごとに計算されます。

以下の図は、天頂分割 8、方位分割 16 で定義した天空域を持つ全天分割図です。それぞれの色は、散乱日射が発生する固有の天空域を表します。

全天分割図の例
全天分割図の例

全天可視領域の太陽軌道図および全天分割図とのオーバーレイ

日射量計算では、全天可視領域ラスタが太陽軌道図と全天分割図のラスタにオーバーレイされ、天空の各方向から受け取る散乱日射と直達日射が計算されます。各天空域の可視領域の割合は、その区域に属するセル総数で、可視のセルの数を除算することにより計算されます。部分的に不可視の天空域が許容されます。

以下の図は、太陽軌道図と全天分割図に全天可視領域をオーバーレイしたものです。灰色部分は、天空の不可視の方向を示します。障害物のない天空の方向から発生する直達日射量と散乱日射量を合計して、日射量が計算されます。

全天可視領域と太陽軌道図のオーバーレイの例
全天可視領域と太陽軌道図のオーバーレイの例
全天可視領域と全天分割図のオーバーレイの例
全天可視領域と全天分割図のオーバーレイの例

日射量の計算式の詳細

関連項目


7/10/2012