陰影起伏の表示がツールと関数を使用した場合で異なる理由

陰影起伏処理の結果が異なるのは、陰影起伏をデータに適用する際の縮尺が異なるためです。

[陰影起伏(Hillshade)] ツールはデータのソース ピクセル サイズで適用されます。その後、表示の縮小に合わせて、結果のラスタがリサンプリングされます。一方、陰影起伏関数は画像を表示している縮尺で適用され、最初に DEM がその解像度にリサンプリングされてから、陰影起伏の効果が適用されます。

陰影起伏をソース ピクセル サイズで適用すると、2 つの陰影起伏処理された画像は同じになります。

関数は画像をリサンプリングした後にデータに適用されますが、ジオプロセシング ツールはデータのソース ピクセル サイズで適用されます。

処理とリサンプリングのタイミング

リサンプリング + 処理 ≠ 処理 + リサンプリング

ピクセル サイズをリサンプリングしてから陰影起伏などの処理を適用した結果と、処理を適用してからリサンプリングした結果は、必ずしも同じになりません。

陰影起伏の適用方法

Spatial Analyst または 3D Analyst ツールボックスの [陰影起伏(Hillshade)] ツールを使用する場合、陰影起伏はラスタ データセットのソース ピクセル サイズで DEM に適用されます。

[陰影起伏(Hillshade)] ツールのダイアログ ボックス
注意注意:

ソース ピクセルは、環境設定の [セル サイズ] パラメータの影響を受けます。

陰影起伏関数はリアルタイムで適用されるため、縮尺、モザイク手法、選択した画像などに影響されます。陰影起伏関数を使用する場合、陰影起伏はラスタの表示解像度で DEM に適用されます。

陰影起伏関数のダイアログ ボックス

[陰影起伏(Hillshade)] ツールと陰影起伏関数は、どちらも方位角と高度のパラメータを使用し、必要な場合は Z 値の倍率も使用します。

解像度について

次の図は、ある DEM の丘を横切る断面図を表しています。DEM は、30 メートルから 120 メートルおよび 300 メートルにリサンプリングされていますが、断面のラインは変化していません。

最も高い解像度(30 メートル)では、断面図はこのデータセットから得られる最も詳細な結果となり、ラインに沿った丘の形状が表されています。

DEM のピクセルを 4 倍の大きさにリサンプリングすると、ピクセル サイズは 120 メートルとなり、断面ラインに沿って細部が失われていることがわかります。DEM のピクセル サイズを元のサイズの 10 倍(300 メートル)まで拡大すると、解像度の高い DEM に存在する地形の多くが表示されなくなります。たとえば、断面の 500 から 1,000 の間では、山と谷の形状が 30 メートルから 120 メートルで単純になり、300 メートルの表示で谷が完全に除去されています。同様に、およそ 1,900 の位置にある山は、詳細な画像ほど高く表されています。

断面図断面図ライン

ピクセル サイズのリサンプリングは、表示を縮小するときの処理と似ています。たとえば、100 x 100 ピクセルを表示しているときに、データのフル サイズが 1000 x 1000 ピクセルである場合、画像全体を表示するには何度か画面移動を行う必要があります。ただし、1/10 に縮小して 1,000 ピクセルを 100 ピクセルにする場合は、本質的に画像を 1000 x 1000 から 100 x 100 にリサンプリングしています。したがって、ピクセル サイズ 1 が 10 になります。

陰影起伏の式に指定する太陽の方位角と高度に応じて、500 から 1,000 のエリアにある谷は、30 メートルの表示では明暗の差が非常に大きくなります。この表示を続いて低解像度にリサンプリングすると、この地形はピクセルがリサンプリングされるときに変更されます。リサンプリングの方法によっては、特定の縮尺で存在しなくなる場合(一番下の画像)でも、この地形が陰影起伏処理した画像に残る場合があります。これが、関数とツールを使用して生成された陰影起伏画像が、縮尺の違いによって異なる理由の一つです。

次の例では、比較に使用されているストレッチは同じパラメータを使用する最小/最大ストレッチです。

最初の表は、非常に小さい縮尺に適用された陰影起伏の、関数を使用した場合とツールを使用した場合の表示の違いを示しています。2 番目の表では、同じ画像を最大解像度で示しています。この場合は、画像が同一であることがわかります。

縮尺 1:10,000,00 での陰影起伏

縮尺 1:1,000,00 での陰影起伏

モザイク データセットでの陰影起伏関数
モザイク データセットでの陰影起伏関数
モザイク データセットでの陰影起伏関数
モザイク データセットでの陰影起伏関数
[陰影起伏(Hillshade)] ツールで生成
[陰影起伏(Hillshade)] ツールで生成
[陰影起伏(Hillshade)] ツールで生成
[陰影起伏(Hillshade)] ツールで生成
陰影起伏の比較

縮尺 1:116,740 での陰影起伏(最大解像度)

比較結果

モザイク データセットでの陰影起伏関数
モザイク データセットでの陰影起伏関数

これらの 3 つの例から、陰影起伏を適用するときの DEM のピクセル サイズにより大きな違いがあり、リサンプリングしてから陰影起伏を適用した結果と、陰影起伏を適用してからリサンプリングした結果が、必ずしも同じでないことがわかります。

この例では、陰影起伏が DEM のソース ピクセル サイズで適用されているため、同じ結果が得られています。これは、リサンプリングが式で行われず、陰影起伏処理だけがデータに適用されているためです。

[陰影起伏(Hillshade)] ツールで生成
[陰影起伏(Hillshade)] ツールで生成
最大解像度での陰影起伏の比較

Z 値の倍率

Z 値の倍率は、標高値を変換する際に使用される縮尺係数です。この値は見落とされることが多いですが、出力の外観に大きな影響を与えるため、陰影起伏を作成するときに考慮することは重要です。縮尺係数は 2 つの目的のために使用されます。1 つは、標高単位(メートルやフィートなど)をデータセットの水平座標単位(フィート、メートル、度)に変換すること、もう 1 つは、視覚的な効果のために高さ強調を追加することです。

フィートからメートルへ、またはその逆へ変換するには、下の表をご参照ください。たとえば、DEM の標高単位がフィートであり、モザイク データセットの単位がメートルの場合、0.3048 を使用して標高単位をフィートからメートルへ変換します(1 フィート = 0.3048 メートル)。

これは、標高単位がメートルの地理データ(緯度/経度座標を使用した GCS_WGS 84 の DTED など)を使用している場合にも役立ちます。この場合は、メートルから度に変換する必要があります(0.00001、下記参照)。度変換の値は近似です。

単位変換係数

変換元

変換先

フィート

メートル

フィート

1

0.3048

0.000003

メートル

3.28084

1

0.00001

単位変換係数

高さ強調を適用するには、変換係数に強調係数を掛ける必要があります。たとえば、標高およびデータセットの座標がどちらもメートルで、10 倍だけ強調したい場合、縮尺係数は、単位変換係数(表から 1.0)に垂直強調係数(10.0)または 10 を掛けた値になります。別の例として、標高がメートルでデータセットが地理(度)の場合は、単位変換係数(0.00001)に 10 を掛けて 0.0001 が得られます。

ツールと同様の結果を得るための関数の適用

上の例では、陰影起伏関数と [陰影起伏(Hillshade)] ツールを主にモザイク データセットで使用した結果について比較しています。すでに説明したように、主な違いはリサンプリングと陰影起伏処理を適用するタイミングによって生じます。次の図では、関数をモザイク データセットに挿入した場所が結果に影響することを確認できます。同じ結果を得るには、リサンプリングと陰影起伏処理の変数を同じにする必要があります。したがって、画像を 1:1 の解像度で表示している場合のみ、関数でツールと同じ表示結果が得られます。関数をモザイク データセット内のラスタ データに挿入する場合は、ラスタ データセットのピラミッドがない限り、ツールと同じ結果が得られます。これは、モザイク処理された画像を作成するためのリサンプリングの前に、関数が適用されるためです。また、モザイク処理された最終的な画像を作成するために必要なピクセルよりも多くのピクセルが処理されるため、処理時間も長くなります(これらの処理時間は、関数を追加した後に概観図を生成することで短縮できます)。

図の垂直方向の矢印は、関数を適用するレベル(画像、ピラミッド、または概観図)を表します。

この図では、関数はモザイク データセットに追加されます。したがって、関数は画像が表示縮尺にリサンプリングされた後に適用されます。このために、適用するデータセットのレイヤ(画像またはピラミッド)が使用されます。下側の破線の表示縮尺では、一番上のピラミッドを使用して表示縮尺が作成されます。このために、このレベルを適切な縮尺にリサンプリングしてから、関数を適用します。上側の破線では、概観図のいずれかが使用されます。

このシナリオでは、画像からピラミッドが生成され、ピラミッドから概観図が生成されます。処理する関数はいずれも、リサンプリングの後に適用されます。

モザイク データセットに追加される関数

この図では、関数はモザイク データセット内に含まれるラスタ データセットに追加されます。上の説明と異なる点は、関数が適用された後に概観図が作成されることです。したがって、画像からピラミッドが生成され、関数が適用された後に、概観図が生成されます。このため、関数が適用される前に、元の画像からのリサンプリングがいくらか生じます。これは、ピラミッドが元の画像から生成されるためです。

モザイク データセットのラスタ データセットに追加される関数

この図では、ピラミッドがありません。したがって、関数が元の画像に適用された後、概観図が生成されます。

モザイク データセットのラスタ データセットに追加される関数

[画像解析] ウィンドウを使用して、ラスタ レイヤ(モザイク データセット レイヤまたは Image Server レイヤを含む)に関数を適用することもできます。この関数はラスタ データセットに適用されます。上の例と同様、表示するレベルに応じて、関数はソース画像のピクセルに適用されるか、ピラミッドのピクセルに適用されます。したがって、陰影起伏関数を使用するときに、関数の適用前にリサンプリングがいくらか生じる場合があります。

関連項目


7/10/2012