画像: データ管理パターンおよび推奨事項

モザイク データセットは複数の画像の集まり(ラスタ データセット)であり、カタログとして保存され、モザイク化画像として表示されます。これらのコレクションは全体的なファイル サイズが増大し、ラスタ データセット数も非常に多くなります。

モザイク データセットは、ユーザが指定したモザイク手法に基づいて動的にモザイク化されます。また、データセット全体または各画像を操作する関数を追加することもできます。追加した関数は、ユーザがその画像にアクセスし、モザイク化画像を生成する時点で適用されます。これらの機能は、モザイク データセットを使用したデータの管理方法に影響を与えます。

一般原則

画像管理の目的は、エンドユーザの必要に応じて最適な画像を提供することです。次のような特長を備えたモザイク データセットを使用すれば、この目的を達成できます。

一般に、画像の使い勝手を考えた場合、複数のソースから必要な画像を探すのではなく、すべての画像が 1 つのソースにまとめられていた方が便利です。したがって、ここでは、一般的な方策の 1 つとして、ユーザに公開するモザイク データセットの数を減らすことを推奨します。モザイク データセットの数が少なければ、ユーザによる画像検索が減少し、さまざまなアプリケーションで同じモザイク データセットを使用できます。結果として、データ管理とアプリケーション開発が容易になります。

通常、ユーザは各自の要件に最も適した画像を表示する 1 つの画像ソースに接続します。その際、目的のメタデータにアクセスし、送信用に圧縮したり、画像の順序を指定したり、特定の画像にロックするなど、必要な処理を実行できることが条件となります。データの種類(自然カラー画像、疑似カラー画像、高度など)ごとに異なるモザイク データセットを公開することは可能ですが、それらのモザイク データセットが特定の地形、センサの種類、日付範囲などに特化されていてはなりません。

一般に、公開モザイク データセットには次の情報が含まれます。

画像ソース

画像にはさまざまな取得元があり(大気センサ、衛星センサ、スキャンされたマップ、解析の出力など)、その種類もいろいろです(パンクロマチック、マルチスペクトル、サーマル、高度、主題画像など)。さらに、画像は、ディスク、ファイル ストレージ システム(NAS や SAN など)、ジオデータベースにファイルとして保存したり、画像サービスや Web カバレッジ サービス(WCS)などを介してアクセスすることができます。

画像とラスタは、そのラスタ タイプに基づいてモザイク データセットに追加されます。ラスタ タイプの目的は、ファイル形式とそのデータに関する情報を明確にすることです。つまり、ラスタ タイプによって、複雑な画像データをモザイク データセットへ容易に追加できます。

ArcGIS にはいくつかのラスタ タイプがあります。一部は特定の画像製品を対象としており、その他は画像センサ(Landsat 7、WorldView-2、IKONOS)を対象としています。ラスタ タイプにより、ジオリファレンス、取得日付、センサ タイプなどのメタデータとラスタ形式が識別されます。

ラスタ タイプに従ってラスタ データを追加することで、適切なメタデータを読み込み、それに基づいて必要な処理を定義することができます。たとえば、QuickBird Standard シーンを追加するときに、シーンが *.imd ファイルによって定義されている場合があります。このファイルにはラスタ データセットに関するメタデータ情報が含まれているので、1 つ以上の *.tif ファイルを示す可能性があります。このデータを正しく追加するには、ラスタ タイプの [QuickBird] を使用します。これにより、この組み合わせのファイル タイプが検索されます。このデータを標準ラスタ データセットとして追加した場合、*.tif ファイルのみが認識され、追加されます。必要な機能またはジオプロセシングに影響を与えるメタデータ情報は失われます。

ラスタ タイプは自動化にも役立ちます。これは、モザイク データセット内に画像をどのように設定すべきかがラスタ タイプによって指定されるためです。独自のコードを作成するか、既存のラスタ タイプのプロパティを変更して、保存することができます。

画像をモザイク データセットに追加する際、正しいラスタ タイプを使用することが重要です。場合によっては、ファイルとそのメタデータの取得元を調べ、目的のラスタ タイプに対応するファイル形式や画像製品を確認する必要があります。

画像をモザイク データセットに追加した後で、処理を定義する関数を追加することもできます。多くの場合、その目的は、出力を特定の画像製品に変換したり、個々の画像を補正したりすることです。関数は、個々の画像またはモザイク データセット全体に適用できます。

直接アクセス

モザイク データセットをどのように構成するかにかかわらず、画像が判読可能であることを確認する必要があります。判読可能でなければ、モザイク データセットを使用してその画像を表示できません。画像の場所はハードコーディングされたパスで指定されます。したがって、画像を移動したときは、モザイク データセットを更新する必要があります。逆の場合も同様です。

前処理が必要な場合

画像コレクションをモザイク化したり、複数の出力を生成したりする従来の方法に比べ、モザイク データセットを使用して画像を管理、公開すれば時間を大幅に節約できます。ただし、何らかの前処理が必要になる場合もあります。ここで推奨する前処理は、最適なモザイク画像表示を短時間で生成するためのものです。

ピラミッドの構築 - ピラミッドを使用すると画像の表示速度が向上します。ただし、生成されるモザイク データセット概観図の数が多くなります。一般に、カラム数が 3000 以上の画像でピラミッドを構築します。パフォーマンスを向上するには概観図の方が適しているため、前処理され、タイル化された画像コレクションの場合、ピラミッドを構築するメリットはほとんどありません。

統計情報の計算 - 画像をストレッチして表示する際、レンダラによって統計情報が使用されます。強調されていない画像を操作する場合、統計情報がないと、黒い画像または非常に暗い画像が表示されます。一般に、(放射量的に)補正されていない画像を使用するときに統計情報を計算します。たとえば、多くのオルソ写真は、その処理(NAIP、DOQQ など)の一部としてすでに補正されています。したがって、統計情報を計算する必要はありません。一方、生の画像や衛星から取得した画像は強調されていない場合が多いので、正しく表示するには統計情報を計算する必要があります。常にすべてのピクセルから統計情報を計算する必要はありません。したがって、スキップ ファクタを指定すれば、計算時間を短縮することができます。妥当なスキップ ファクタ値を指定するには、カラム数を 1000 で除算し、その商(整数)をスキップ ファクタとして使用する方法があります。

注意注意:

ピラミッドを構築し、統計情報を計算するための推奨ツールが 2 つあります。1 つは [モザイク データセットへのラスタの追加(Add Rasters To Mosaic Dataset tool)] ツールです。このツールにある 2 つのチェックボックスを使用すれば、画像をモザイク データセットへ追加する手順の一貫としてピラミッドと統計情報を生成できます。もう 1 つは [ピラミッドと統計情報の構築(Build Pyramids And Statistics)] ツールです。これは、データのワークスペースまたはモザイク データセットに適用され、画像をモザイク データセットに追加する前または後に実行できます。ピラミッドを構築する場合、モザイク データセットで概観図を定義する前にピラミッドを構築してください。

最適化された画像フォーマット - 格納形式や圧縮方法などにより、画像によっては読み込みに時間がかかります。それらの画像をより適した形式に変換することをお勧めします。たとえば、ASCII DEM 画像形式は読み込みに時間がかかるので、TIFF などの形式に変換します。画像のサイズが非常に大きく、タイル化されていない場合は、タイル化された TIFF 形式に変換してディスク アクセスを最適化することをお勧めします。さらに、画像を変換するときは、可逆圧縮(LZW など)または非可逆圧縮(JPEG など)の使用を検討してください。ウェーブレット圧縮(JPEG 2000 など)という方法もありますが、解凍時の CPU 負担が大きい割には、圧縮効果はそれほど高くありません。画像を圧縮しない場合は、([概観図の定義(Define Overviews)] ツールを使用して)モザイク データセットの概観図を作成できます。その際、最初のピクセル サイズを非常に小さくします。

モザイク データセットの構成について

モザイク データセットの基本的な構成は、一連の画像を含む 1 つのモザイク データセットです。この構成では、モザイク データセットに各画像(ラスタ データセット)が個別に追加され、追加された 1 つの画像が属性テーブルの 1 行となります。

基本構成

重要なのは、テーブルと、動的にモザイク化される画像の両方がモザイク データセットであるという点です。モザイク データセットとそのテーブルをどのように作成するかによって、表示されるモザイク化画像が変わってきます。画像をどのように表示するかは、モザイク データセットとその属性テーブルの構成に左右されます。

通常は、画像をモザイク データセット内で管理し、さらに、その内容を共有または発信(公開)する別のモザイク データセット(参照モザイク データセット)を使用することをお勧めします。参照モザイク データセットを使用すれば、画像の追加や削除など、ユーザが誤って元のモザイク データセットを変更してしまう心配がありません。

モザイク データセットの構成タイプ

管理しなければならないデータの種類が増えるにつれ、モザイク データセットの構成が複雑になります。下図は、画像を管理および公開するための標準的な 2 つの組み合わせを示しています。

一般的な構成

一般に、管理用と公開用、2 種類のモザイク データセットを用意すると便利です。モザイク データセットをこのように分けることによって構成も容易になります。

モザイク データセットを使用して画像コレクションを作成および管理する場合、どのようなタイプのモザイク データセットがあり、それぞれどのような目的を果たすかを理解しておくことが大切です。

ソース モザイク データセット

画像を管理するためのモザイク データセットです。通常は、同様の画像の集まりで構成されます。いくつかのソース モザイク データセットを使用すれば、異なる複数の画像コレクションを管理できます。これらの画像を直接公開することもできますし、他のモザイク データセットのソースとして使用することもできます。このモザイク データセットを保護するため、参照モザイク データセットを使用して画像へのアクセスを許可する(公開する)方法をお勧めします。

ソース モザイク データセットを作成するには [モザイク データセットの作成(Create Mosaic Dataset)] ツールを使用します。入力画像のビット深度またはバンド数がすべて同じ場合は、このツールでこれらの値を指定する必要がありません。最初の画像の値が使用されます。多くの場合、空間参照系は入力と同じです。ただし、入力データが複数の空間参照系を使用しているときは、適切な空間参照系を選択します。[モザイク データセットへのラスタの追加(Add Rasters To Mosaic Dataset)] ツールを実行し、適切なラスタ タイプを指定します。

ほとんどの場合、ソース モザイク データセット内の画像には同じバンド数とビット深度が割り当てられます。これらのソース モザイクを使用して、フットプリントを修正したり、オルソ幾何補正を設定するなど、画像コレクションの属性を調整します。

個々の画像の関数を変更するには、属性テーブルから各画像のビューア ウィンドウを開きます。複数の画像を変更する場合は、ArcMap コンテンツ ウィンドウの [フットプリント] レイヤからラスタ関数エディタ ウィザードを実行します。

通常、この画像が単一のデータセットを表す場合は(特定の日付の画像など)、このモザイク データセットの概観図を構築します。

抽出モザイク データセット

ユーザが頻繁に表示する画像を 1 つのコレクションとしてまとめたモザイク データセットです。通常、抽出モザイク データセットは、1 つまたは複数のモザイク データセットから生成されます。たとえば、複数のソース モザイク データセットから自然カラー画像をすべて抽出し、その画像コレクションを抽出モザイク データセットとして使用できます。このモザイク データセットを保護するため、参照モザイク データセットを使用して画像へのアクセスを許可する(公開する)方法をお勧めします。さらに、このモザイク データセットを基に、特定のバンド割り当て、特定の領域など、特定の画像製品を集めた別のモザイク データセットを作成できます。

抽出モザイク データセットを作成するときも [モザイク データセットの作成(Create Mosaic Dataset)] ツールを使用します。多くの場合、入力画像の深度とバンド数はさまざまなので、このツールの実行時にこれらの値を指定する必要があります。出力画像に合ったビット深度とバンド数を選択してください。さらに、すべての画像に対応できる空間参照系を選択します。

選択した空間参照系を使用して、フットプリント、境界、およびその他の関連項目がモザイク データセットに生成されます。また、モザイク化画像をリサンプリングする際のデフォルトも生成されます。追加するすべての画像に適した空間参照系を選択してください。各国の測地系または UTM ゾーンになります。ただし、対象範囲が全世界であるモザイク データセットを作成する場合、または複数の Web サービスをマッシュアップする場合は、一般に WGS 1984 Web メルカトル(球体補正)投影を使用します。

ソース モザイク データセットの画像(ラスタ)を抽出モザイク データセットに追加するには、テーブル ラスタ タイプを使用します。テーブル ラスタ タイプを使用すると、ソース モザイク データセットのすべてのテーブル項目または一部のテーブル項目を含むモザイク データセットが作成されます。これを利用して、必要なクエリを実行することができます。画像を追加する時点で、特定の画像を変換したり、選択したりする関数を追加できます。たとえば、16 ビット画像を 8 ビットに変換する関数、マルチスペクトル ソースから特定のバンドを抽出する関数などがあります。

また、[モザイク データセットの同期(Synchronize Mosaic Dataset)] ツールを使用すれば、フットプリントが変更されたり、新しい画像が追加されるなど、ソースが更新された場合にこのモザイク データセットを更新できます。

[テーブル] ラスタ タイプではなく、[ラスタ データセット] ラスタ タイプを使用してソース モザイク データセットを追加した場合、抽出モザイク データセット内では、各ソース モザイク データセットが 1 つの項目として表されます。したがって、クエリやメタデータの対象がソース モザイク データセット全体に限定され、ソース モザイク データセット内の各画像を特定することができません。

概観図はソース モザイク データセット内に存在するので、一般に、このモザイク データセットについては概観図を構築しません。ただし、抽出モザイク データセットの網羅範囲がソースよりかなり広い場合は、概観図を構築する必要があります。1 つの選択肢は、別の画像または画像サービスを使用して、モザイク データセットの全範囲を表す画像を提供する方法です。この画像を追加する際、必要であれば境界を作成するオプションをオフにします。境界はこの画像の範囲まで延長されるので、望ましくない可能性があるためです。

参照モザイク データセット

振舞いは標準のモザイク データセットと似ていますが、参照モザイク データセットにはラスタを追加できません。また、概観図を作成することも、ピクセル サイズ範囲を計算することもできません。境界を再定義して、たとえば、アクセスを特定の地域に制限したり、すべての画像に適用される関数を追加したりできます。参照モザイク データセットを使用して、モザイク データセット レベルのさまざまな関数が割り当てられたモザイク データセットにアクセスできるようにします(または、ラスタ カタログが画像サービスの役目を果たします)。参照モザイク データセットへのアクセスを共有すれば、ユーザがソース モザイク データセットや抽出モザイク データセットを変更する心配がなく、他のユーザに影響を与えません。

参照モザイク データセットを作成するには、[既存カタログからモザイク データセット作成(Create Referenced Mosaic Dataset)] ツールを実行し、ソースとして別のモザイク データセットを指定します。通常、このソースは、ソース モザイク データセットか抽出モザイク データセットです。このモザイク データセットは、ジオデータベース内部にもジオデータベース外部にも作成できます。

モザイク データセットの関数を変更するには、カタログ ウィンドウから、そのモザイク データセットの [プロパティ] ダイアログ ボックスを開きます。

カスケーディング モザイク データセット

モザイク データセットを使用すれば、ArcGIS Online、WCS サービス、画像サービス、他のモザイク データセットなど、さまざまなサーバの画像を含む複数のソースを結合できます。モザイク データセットをサービスとして公開する際、この組み合わせをカスケーディングと呼んでいます。カスケーディングの利点は、1 つのサービスの画像を別のサービスの概観図または背景として使用できることです。エンド ユーザは 1 か所にアクセスするだけですみます。たとえば、複数の WCS サービスを 1 つのサービスとして表示することができます。

ただし、正しく管理しないと、カスケーディング サービスはボトルネックの原因となります。たとえば、これらのサービスを常に利用可能な状態にしておきたいです。あまりに多くのカスケーディング サービスを結合するのを避けることも望みます。したがって、サービスを入れ子にしません。循環サービスの作成も避ける必要があります。1 つのサービスが別のサービスを参照し、さらにそのサービスが元のサービスを参照しません。原則として、モザイク データセット内にカスケードする(追加する)他のサービスは、最大 8 つにしてください。

画像コレクションの管理に関する推奨事項

すべての画像を 1 つのモザイク データセットで管理できます。画像の種類、バンド数、ビット深度が同じ場合は、この方法が理想的です。ただし、画像数が非常に多く、そのデータをさまざまなソースやセンサから取り込んでいる場合は、データの種類ごとに画像コレクションを分けた方が便利です。次のように、モザイク データセット内のすべての画像が同じソースから取り込まれ、同じバンド数、同じビット数であれば、モザイク データセットの設定と管理が容易になります。

このように、同種のデータで構成されたソース モザイク データセットは管理が容易です。さらに、用途に応じてこれらのモザイク データセットを組み合わせて、公開することができます。

単一のオルソ画像コレクションの例

都道府県や都市を撮影した画像など、何千枚もの航空カラー画像を扱う場合、1 つのモザイク データセットを作成してすべての画像を管理できます。通常、このモザイク データセットは 3 バンド、8 ビットです。属性テーブルを変更し、撮影日や撮影場所など、画像関連の情報を追加する必要が生じたときは、このモザイク データセットを直接公開するか、参照モザイク データセットを作成して、組織内のユーザに目的の画像を提供します。特定エリア内の画像のみを提供する参照モザイク データセットで境界を変更したり、特定の条件(都道府県や都市など)を満たす画像のみを含む参照モザイク セットを作成したりできます。

複数のオルソ画像コレクションの例

さらに、この画像を既存のモザイク データセット(上記のカラー画像)へ追加し、その公開時に使用する参照モザイク データセットを作成するか、または、このモザイク データセット内の画像と、他のソース(Landsat、SPOT など)から取得した画像を統合した新しい抽出モザイク データセットを作成する方法があります。この場合、モザイク データセットのプロパティを編集し、[属性による] 手法で日付や雲量を指定するなど、扱うデータに最適なモザイク手法を選択できます。

たとえば、3 年分(1995 年、2005 年、2008 年)の航空写真コレクションがあり、それぞれ分解能が異なるとします(1 メートル、2 フィート、5 フィート)。1995 年のコレクションは UTM 投影のパンクロマティック画像であり、他の 2 つは State Plane 投影のカラー画像です。このような場合、データを管理するには 2 つの方法があります。年ごとにソース モザイク データセットを設け、さらに抽出モザイク データセットを作成する方法と、すべてを 1 つのモザイク データセットで管理する方法です。一般に、ソース モザイク データセットと抽出モザイク データセットを使用した方が管理が容易で、最適なパフォーマンスが得られます。

この方法を使用するには、まず 3 つのソース モザイク データセットを作成します。ソース モザイク データセットを作成する時点で、バンドとビット深度を指定できます。また、データを追加するときにこれらを指定することもできます。最終的には、1 バンドのモザイク データセットを 1 つ、3 バンドのモザイク データセットを 2 つ作成します。必要に応じて画像を追加します。多くの場合、これらのデータはカラー補正されているので、統計情報を計算する必要はありません。また、生成済みタイルのピラミッドを作成することにメリットはないので、ピラミッド生成は省略してかまいません。別々に概観図を作成しておけば、ユーザは、各データセットをすべての縮尺で個別に表示できます。それぞれの属性テーブルを使用して、「年」を表す新しいフィールドを追加し、このフィールドに該当する年を入力します。

ワークフロー図

次に、3 つのバンドを含む抽出モザイク データセットを 1 つ作成します。これは、最適な組み合わせのカラー画像を提供するためのモザイク データセットです。この抽出モザイク データセットに、[テーブル] ラスタ タイプを使用して 3 つのソース モザイク データセットを追加します。概観図は各ソース モザイク データセット内にすでに作成されているので、ここでは作成しません。ときには、状況に応じて一部のプロパティを変更する必要が生じます。たとえば、モザイク手法として [属性による] を選択し、デフォルトの年(3000 など)を指定して最新画像を表示するとします。このような場合、抽出モザイク データセットの内容を公開する参照モザイク データセットを作成すれば、ユーザはデータセットに直接アクセスできます。この方法を採るには、デフォルトのモザイク手法をもう一度指定する必要があります。モザイク データセットのプロパティはモザイク データセットによって異なるためです。モザイク データセットを画像サービスとして公開する場合は、画像を直接公開できます。いずれの場合も、ユーザは 1 つのデータセットに対してクエリを実行できるようになります。

これらを 1 つのモザイク データセットとして管理する場合は、年ごとの概観図がありません。そのため、ユーザがデフォルト以外の年のモザイク画像を表示しようとしたとき、混乱を招く可能性があります。概観図は年ごとに作成されるので、通常、統合サービスの概観図は必要ありません。最近の画像が古い画像と重ならない場合、概観図を作成することによってパフォーマンスが向上します。このモザイク データセットの概観図を作成するときは、モザイク手法として [属性による] を選択し、最も適した年(3000 など)を指定します。このモザイク データセットを上記の方法で公開する場合も同様です。

4 バンド(青、緑、赤、NIR)の新しいオルソ画像を 2010 年に取得した場合は、2010 画像用の新しいソース モザイク データセットを作成します。これは 4 バンドのモザイク データセットになります。

次に、[テーブル] ラスタ タイプを使用して、2010 ソース モザイク データセットを元の「最適カラー」抽出モザイク データセットに追加します。このモザイク データセットは 3 バンド対応なので、最初の 3 つのバンドのみが追加されます。ここでも、最適化のために概観図を追加する必要がありますが、ほとんどのエリアはすでに概観図が存在するので、それほど大きな作業ではありません。前の手順で [属性による] モザイク手法を指定しているので、このモザイク データセットのユーザは、アプリケーションを変更しなくてもすぐに 2010 画像を閲覧できます。

疑似カラー赤外線画像を表示するには、まず、新しいモザイク データセットを作成します(バンド数を指定しません)。次に、[テーブル] ラスタ タイプを使用して、作成したモザイク データセットに 2010 ソース モザイク データセットを追加します。カタログ ウィンドウから、このモザイク データセットのプロパティを開き、バンド抽出関数を追加します。バンド ID として「4 3 2」を指定してください。もともとこのモザイク データセットは 4 バンドで、オリジナルと同じです。この関数を追加することで、デフォルトのバンド割り当てを指定し、3 バンドのみを出力するようにモザイク データセットを変更します。

さらに、正規化差植生指数(NDVI)モザイク データセットを作成する場合は、疑似カラー モザイク データセットを表す参照モザイク データセットを使用し、NDVI 関数を追加して必要な処理を実行します。または、2010 ソース モザイク データセットを参照する新しいモザイク データセットを作成し、NDVI 関数を追加します。

衛星画像コレクションの例

同種の衛星センサから取得した画像コレクションであれば、単一のモザイク データセットで管理できます。たとえば、IKONOS(オルソレディ製品)と QuickBird(ベーシック バンドル製品)は、マルチスペクトル(4 バンド)と高解像度パンクロマティック バンドを備えています。これらの画像から、パンシャープン処理を施したモザイク データセットを作成できます。

衛星画像をモザイク データセットへ追加する前に、ピラミッドと統計情報を生成しておくと便利です。

モザイク データセットを作成します(バンドとビット深度を指定する必要はありません)。IKONOS または QuickBird ラスタ タイプを使用して画像を追加します。[ラスタ タイプ プロパティ] ダイアログ ボックスで、パンシャープン製品テンプレートが定義されていることを確認してください(これはデフォルトの製品テンプレートです)。適切なラスタ タイプを使用するもう 1 つの利点は、各画像のフットプリントが計算され、画像周囲の不要な部分が除去されることです。

このモザイク データセットについては概観図は必要ありません。ひとまとまりのデータセットを定義しているのではなく、通常、小さい縮尺では他の画像が使用されるためです。ただし、ワークフローによっては概観図を作成する必要があります。概観図を作成する場合は、[属性による] モザイク手法を選択し、最新の画像または雲量が最も少ない画像を使用する基準値を指定します。

このラスタ タイプを使用する場合、いくつかの属性が追加されます。画像の精度や画質など、データ管理に役立つその他の属性を追加することもできます。同様に、画像をユーザに公開するかどうかを指定する属性(Publish)を指定できます。これによって、特定のシーンを公開対象から除外したり、公開対象に追加したり、詳細なクエリを実行するなど、公開関連の操作を簡単に行えます。

次に、このモザイク データセットを、他の複数のモザイク データセットにソースとして追加できます。たとえば、一部の画像またはすべての画像を、前に作成したオルソ画像モザイク データセットに追加できます。

ユーザによっては、4 バンド衛星モザイク データセットのすべての画像にアクセスする必要があります。その場合、このモザイク データセットに直接アクセスできるようにする方法と、参照モザイク データセットを作成して、必要な画像を提供する方法があります。

標高コレクション

標高データのモザイク データセットを作成しておくと、さまざまな場面で役立ちます。たとえば、1 つのソースから取得したすべての標高データにアクセスする場合や、標高データをデータ ソースとして使用し、他の画像をオルソ補正する場合などに使用できます。ほとんどの場合、すべての標高データを 1 つのモザイク データセットで管理できます。モザイク データセットを作成する際、入力データの最大ビット深度(通常は 32 ビット)を指定します。その後、ラスタ タイプに基づいてすべての画像を追加します。高度データが海抜高度または楕円体高を表しており、高さの単位が同じ(メートルやフィートなど)であることを確認してください。そうでない場合は、モザイク データセットの作成時に余分な手順が必要となります。ただし、算術関数を使用して、各入力の高度データ値を変更できます。

海抜高度から楕円体高へ、または楕円体高から海抜高度へ変換するためのワークフローをご参照ください。

単位(フィート、メートル、度)の変換方法については、単位変換係数の一覧をご参照ください。

次に、モザイク データセットのプロパティを開き、[属性による] モザイク手法を選択して、デフォルト値を 0 に設定します。したがって、そのビューの最高解像度の標高データまたは要求された縮尺が表示(使用)されます。

標高データを複数のソース(ライダー、深浅測量、音波探知機など)から入手した場合は、その種類ごとにソース モザイク データセットを作成し、別々に管理します。さらに、それらすべてを統合するモザイク データセットを 1 つ作成します。

通常、標高データのユーザが必要とするのは、最高精度または最高解像度の画像です。モザイク データセットのプロパティを開き、[属性による] モザイク手法を選択します。順序フィールドとして LoPS を指定し、デフォルト値に 0 を設定します。これで、そのビューの最高解像度で画像が表示され、要求された縮尺が使用されるようになります。精度を表すフィールドが存在する場合は、代わりにそのフィールドを使用できます。

このモザイク データセットをソースとして複数の参照モザイク データセットを作成し、標高データから陰影起伏、傾斜方向、傾斜角などの出力を生成できます。

上記の例では、シンプルな画像コレクションの利用方法とデータの管理方法をいくつか紹介しました。ただし基本は、複数のソース モザイク データセットを作成し、それらを 1 つの抽出モザイク データセットに追加してデータを公開する、という流れになります。

上記で説明したようなモザイク データセットを作成する手順については、「複数の日付のラスタ データを含むモザイク データセットの作成」をご参照ください。

モザイク データセットの公開

モザイク データセットの公開とは、モザイク データセットをユーザが利用できるようにすることです。そのためには、ジオデータベースを共有し、モザイク データセットへの直接アクセスを可能にするか、ArcGIS Server を使用して、画像サービスやその他のサービス(マップ サービスなど)を提供します。

モザイク データセットを共有して直接アクセスを可能にする場合は、直接アクセス用の参照モザイク データセットを作成する方法をお勧めします。モザイク データセットに直接アクセスするユーザは誰でもデータを編集できるので、メイン ソースやマスタ モザイク データセットへの直接アクセスは望ましくありません。

モザイク データセットを画像サービスとして提供する場合、ユーザはモザイク データセットに直接アクセスするわけではないので、画像サービスを直接提供してかまいません。

モザイク データセットのキャッシュ

モザイク データセットをマップやグローブ ドキュメントとして公開することもできます。その場合、ユーザはモザイク手法などのプロパティを一切、変更できません。モザイク データセットに対してクエリを実行することもできません。ただし、マップ サービスやグローブ サービスを使用すれば、Web 経由ですばやくデータにアクセスできるキャッシュを生成したり、ネットワークから切断されているコンピュータやモバイル装置のためのローカル キャッシュを作成したりできます。

一般に、公開する MXD にはベクタ データや画像データを追加しません。ベクタと画像を 2 つの独立したサービスとして提供し、クライアント アプリケーションで結合した方が便利です。

公開するモザイク データセットのプロパティ

モザイク データセットを画像サービスとして公開する場合、多数のプロパティを使用して、モザイク データセットと個々の画像へのアクセスを制御できます。次に例を示します。

  • 属性テーブルのアクセス可能なフィールドを変更する
  • ダウンロード可能な画像の数を制限する
  • 要求サイズを制限する
  • 使用可能なメタデータを制限する
  • デフォルトのモザイク手法を指定する
  • 転送時のデフォルトの圧縮を指定する

注意を要するプロパティとパラメータ

フットプリント

各画像に含まれるデータ。[フットプリントの構築(Build Footprints)] ツールを使用してフットプリントを変更すれば、画像の一部(黒または白の境界エリアや保護エリアなど)をモザイク データセットから除外できます。通常、フットプリントはソース モザイク データセットで変更し、参照モザイク データセットでは変更しません。

NoData

画像内で、出力モザイク画像に追加しない値を指定するもう 1 つの方法です。[モザイク データセットの NoData の定義(Define Mosaic Dataset NoData)] ツールを使用すれば、モザイク データセット内の各画像の関数チェーンにマスク関数を挿入できます。重なり合う画像が多数ある場合は、処理速度が低下する可能性もあります。一般に、画像のフットプリントを変更してデータを削除する方法をお勧めします。

境界

デフォルトでは、すべてのフットプリント ポリゴンが境界で結合され、画像範囲を表す 1 つの境界が作成されます。ホールが含まれていたり、マルチパート ポリゴンであったりすると、生成に時間がかかります。そのため、[モザイク データセットへのラスタの追加(Add Rasters To Mosaic Dataset)] ツールを使用して画像コレクションを複数回追加する場合、最後のコレクションを追加するまでは [境界の更新] パラメータをオフにしておきます。新しい画像をモザイク データセットに追加したら、[境界線の構築(Build Boundary)] ツールを実行して境界線を更新します。このツールには、既存の境界を上書きするのではなく、既存の境界に追加するためのオプションがあるので時間を節約できます。

境界を使用して、モザイク データセットの画像エリアを除外することもできます。たとえば、モザイク データセット内の画像が広範囲を網羅している場合でも、目的のエリアを正確に示す境界ポリゴン ファイルをインポートできます。ArcMap の編集ツールを使用して境界を編集できます。ソース画像のデータ ギャップを埋めるため、サービスまたは他の大きい画像をモザイクに追加する場合は、境界を再計算してその画像の全範囲を含める必要がありません。したがって、境界を更新するオプションをオフにしておきます。

統計情報

一般に、画像を強調する必要がある場合は統計情報を計算します。統計情報は、各画像およびモザイク データセット全体について計算されます。

モザイク データセットの統計情報が存在する場合、常にデフォルトでストレッチが適用されます。ストレッチを適用しない場合は、[モザイク データセット プロパティ] ダイアログ ボックスの [処理済データ] 設定を [はい] に変更します。

強調(補正)

場合によっては、画像の見栄えをよくするためにヒストグラム ストレッチを適用する必要があります。たとえば、12 ビットまたは 16 ビットの画像をスケール変更し、8 ビットで鮮明に表示されるようにします。画像をモザイク データセットに追加する際、ラスタ タイプのプロパティを変更することによって画像を強調できます。あるいは、画像を追加した後でストレッチ関数を追加します。

カラー補正

一般に、カラー補正は RGB 画像(自然カラー画像または疑似カラー画像)にのみ適用されます(ただし、マルチバンドに実行することも可能です)。カラー画像を含む抽出モザイク データセットを作成し、そのデータセットにカラー補正を適用する方法をお勧めします。カラー補正ツールは、ArcMap のカラー補正ウィンドウから実行できます。

属性フィールド

ソース画像に適した属性を追加するには、属性テーブルに新しいフィールドを作成します。一部のフィールドは、ラスタ タイプ内で定義する際に画像からインポートされます。複数のソース モザイク データセットを作成し、それらをマスタ モザイク データセットに結合する場合は、同じフィールドを定義する必要があります。

たとえば、次のようなフィールドを追加します。

  1. 開始日(日付フィールド)
  2. 終了日(日付フィールド)
  3. 公開(画像を公開するかどうかを指定する整数フィールドまたはテキスト フィールド)
  4. 精度(1 ~ 100 の整数)
  5. 画質(各画像の品質値を指定する整数フィールドまたはテキスト フィールド)

さらに、概観図のフィールドに値を追加するのを忘れないでください。これらのフィールドは、モザイク データセットのユーザが画像を表示したり、クエリを実行したりするときに使用します。したがって、必要であればアクセス可能なフィールドを制限します。アクセスを許可するフィールドを設定するには、モザイク データセットの [プロパティ] ダイアログ ボックスを使用します。

概観図

概観図の生成は時間がかかるので、必要なときのみ作成されるようにしてください。たとえば、ソース モザイク データセットの作成時には概観図を計算しますが、抽出モザイク データセットの作成時にはその必要がありません。また、低解像度の画像やサービスを小セル サイズのデータ ソースとして使用できるので、概観図を生成する必要もありません。

測地基準系

データ、モザイク データセット、またはユーザの空間参照系がそれぞれ異なる回転楕円体に基づいている場合は、特定の地理座標変換を指定する必要があります。地理座標変換は 2 つの場所で指定できます。モザイク データセットに、そのモザイク データセットとは測地基準系が異なる画像を追加する場合は、[環境設定] ダイアログ ボックスで地理座標変換を設定します。ユーザまたはアプリケーションが、元の画像またはモザイク データセットとは異なる測地基準系を使用することがわかっている場合は、(ArcCatalog またはカタログ ウィンドウで)モザイク データセットのプロパティを開き、[デフォルト] タブをクリックして [地理座標系変換] プロパティを設定します。

モザイク データセットの例

以下は一般的なモザイク データセットの例です。一部については、プロパティの説明や考慮事項も記載されています。

カラー画像 - 最高精度の自然カラー画像

疑似カラー画像 - 最高精度の疑似カラー(432)画像

観測用または解析用の画像 - 衛星画像や航空画像の最適な解釈

解析用のマルチスペクトル画像 - 通常は 4 バンド以上

NDVI - カラー テーブル付きの正規化差植生指数

地表高(海抜)または地盤高(海抜) - 最高精度の地盤高(海抜高度)

地盤高(測地) - 最高精度の地盤高(楕円体高)

傾斜 - 地盤高に基づく傾斜

傾斜方向 - 地盤高の傾斜方向

陰影起伏 - 地盤高の陰影起伏

陰影図 - 地盤高の陰影図


7/10/2012