ラスタ データのセル サイズ

ラスタによって表される(フィーチャ、もしくは現象の)詳細レベルは、多くの場合、ラスタのセル(ピクセル)サイズ、つまり空間解像度に依存します。セルは、必要な細部を得られる程度小さく、しかし、コンピュータでの保存や解析処理を効率よく行える程度大きくなければなりません。フィーチャの範囲内でより多くの小さいフィーチャを表現する、またはより詳細に表現するには、小さいセル サイズのラスタを使用します。ただし、多ければいいというものではありません。セル サイズが小さいとサーフェス全体を表すためのラスタ データセットが大きくなるため、より多くの格納領域が必要になり、その分処理時間が長くなります。

ArcMap でのラスタの空間解像度の表示

解像度とセル サイズの例

適切なセル サイズを選択するのは、必ずしも簡単ではありません。アプリケーションで必要となる空間解像度と、現実的な要件(迅速な表示、処理時間、データ格納領域)とを比較検討する必要があります。本来、GIS の精度は、データセットの最も低い精度と同じ程度にしかなりません。解像度 30 メートルの Landsat 画像から作成した分類画像を使用している場合、DEM(デジタル標高モデル)の作成、あるいは 10 メートルといった高解像度の補助データが必要になることはないでしょう。地勢図や土地利用形態といった重要な変数のエリアの均質度が高いほど、精度に影響を与えずに、セル サイズを大きくすることができます。

セル サイズ

適切なセル サイズを決定することは、GIS アプリケーションの計画段階において、どのデータセットを取得するかを決定することと同じくらい重要です。ラスタ データセットをリサンプリングすれば、より大きなセル サイズが得られますが、セル サイズを小さくするためにラスタをリサンプリングしても、詳細度は増しません。データの将来の計画に応じて、データのコピーを最も小さく最も正確なセル サイズで格納し、それをリサンプリングして最も大きく最も精度の低いものに一致させることが可能です。これにより、解析処理の速度が向上する場合があります。

セル サイズを指定する際には、次の点について検討してください。

分解能の種類

画像化したラスタ データを使用する際には、空間分解能、スペクトル分解能、時間分解能、および放射分解能の 4 種類の分解能を扱うことになります。

GIS では、ほとんどの場合、ラスタ データセットの空間分解能が重要となります。ラスタ データを表示する、またはベクタなどの他のデータ タイプと比較する際には、特に重要となります。この場合の分解能とは、セル サイズ(地上をカバーする領域や 1 つのセルによって表される領域)のことです。空間分解能が高くなると、単位面積あたりのセル数が増えるため、左のグラフィックスは右のグラフィックスよりも高い空間分解能を表します。

空間分解能

スペクトル分解能は、電磁波スペクトルの波長間隔を見分けるためのセンサーの性能を表します。スペクトル分解能が高いほど、特定のバンドの波長範囲が狭くなります。たとえば、シングルバンドのグレースケールの航空写真(イメージ)では、電磁波スペクトルの可視域にわたる波長データが記録されるため、スペクトル分解能は低くなります。(3 つのバンドを持つ)カラー イメージは、基本的に、電磁波スペクトルの可視域における 3 つの小さな部分(赤、緑、青の部分)から波長データを収集します。したがって、カラー イメージ内の各バンドのスペクトル分解能は、グレースケール イメージのシングル バンドよりも高くなります。高度なマルチスペクトルおよびハイパースペクトル センサーは、電磁波スペクトルのさまざまな部分にわたり、最大で数百もの非常に狭いスペクトル バンドからデータを収集し、非常に高いスペクトル分解能を持つデータを生成します。

時間分解能とは、地球上の同じ場所でイメージを撮影する頻度のことです。これは回帰周期とも呼ばれ、衛星用センサーの特徴を表すためによく使用される用語です。したがって、週に一度データをキャプチャするセンサーは、月に一度データをキャプチャするセンサーよりも高い時間分解能を持ちます。

放射分解能は、電磁波スペクトルの同じ部分に表示される複数のオブジェクトを区別するセンサーの性能を表します。これは各バンドで許可されるデータ値の数と同じ意味を持ちます。たとえば、Landsat バンドは通常 8 ビット データであり、IKONOS バンドは通常 11 ビットデータです。したがって、IKONOS データのほうが高い放射分解能を持ちます。

空間解像度と縮尺

空間解像度とは、地表上でカバーされる領域を表すセル サイズの寸法のことです。したがって、5 x 5 メートルのセルによって領域がカバーされていると、解像度は 5 メートルになります。ラスタの解像度が高くなるほど、セル サイズは小さくなり、表示が詳細になります。これは縮尺の逆です。縮尺が小さくなるほど、表示の詳細度が低下します。たとえば、1:2,000 の縮尺で表示されるオルソ写真は、1:24,000 の縮尺で表示されるもの(縮小表示)よりも詳細です(拡大された状態で表示されます)。これに対し、同じオルソ写真のセル サイズが 5 メートルである場合、物理セル サイズ(地表上でカバーされ、1 つのセルによって表される領域)は変化しないため、表示縮尺に関係なく、解像度は同じになります。

左のイメージの縮尺(1:50,000)は右のイメージの縮尺(1:2,500)よりも小さいですが、データの空間解像度(セル サイズ)は同じです。

表示縮尺

次の左のイメージでは、右のイメージよりも低いデータ空間解像度が使用されています。これは、左のイメージのデータのセル サイズが、右のイメージのデータのセル サイズよりも大きいことを意味します。ただし、それぞれが表示される縮尺は同じです。

ラスタ縮尺と解像度

関連項目


7/10/2012