Spatial Analyst ツールボックスの機能

ArcGIS Spatial Analyst エクステンションの機能は、数多くのジオプロセシング ツールで利用できます。これらのツールを個別に使って、特定の専門的なタスクを実行できます。複数の入力について同一の操作を実行したり、モデルに一連の操作を実行して空間内の複雑な関係を解析したりする必要がある場合、モデルや Python などのスクリプト環境の中でジオプロセシング ツールを実行することで、ワークフローを自動化できます。

ジオプロセシングの詳細

Spatial Analyst には、幅広い解析機能があります。これらの機能は、関連する機能のグループに分類できるため、対応するジオプロセシング ツールセットに整理されています。次の表には、これらのツールセットと、各ツールの簡単な説明を示しています。リンクをクリックすると、詳細が表示されます。

ツールセット

説明

条件

[条件] ツールを使用すると、入力値に設定された条件に基づいて、出力値を制御することができます。適用できる条件は、属性検索またはリスト内の条件ステートメントに基づくもののいずれかです。

単純な属性検索の例:セル値が負の数値の場合は 0 を割り当て、それ以外の場合はその位置の元の値を維持します。

密度

密度を計算すると、1 つのサーフェス全体に入力値を分散することができます。入力フィーチャ データセット(ラインまたはポイント)から計測した値がエリア全体に分散され、出力ラスタ内のセルごとに密度値が計算されます。

たとえば、密度解析を実行すると、町の中心部に割り当てた人口がエリア内で分散され、より現実世界に近づけることができます。

距離

Spatial Analyst では、ユークリッド距離とコスト距離の 2 つの距離解析を実行できます。[ユークリッド距離(Euclidean Distance)] ツールでは、セルから最も近いソースまでの直線距離をセルごとに算出します。ソースは、関心対象となるオブジェクトとなります。[コスト距離(Cost Distance)](または加重コスト距離)ツールは、特定のセルを通過する際の移動に伴なうコスト ファクタを加えることで、ユークリッド距離を拡張します。さらに複雑な距離をモデル化する場合は、[パスの距離(Path Distance)] ツールを使用して、垂直および水平方向の移動制限を組み込むことができます。また、地形のコリドーとパスを特定するツールもあります。

[距離] ツールの適用例としては、山を直線的に越える方が目的地までの距離が短い一方で、山を迂回した方が目的地に容易に早く到達できる場合などが挙げられます。

抽出

[抽出] ツールでは、セルの空間的な位置またはセルの属性のいずれかを指定してセルのサブセットを抽出(クリッピング)できます。位置は、円やポリゴンなど特定の形状で指定できます。また、属性値の論理検索を使用して抽出するセルを定義できます。

たとえば、サーフェス ラスタから 100 メートルより高い標高のセルを抽出できます。

ジェネラライズ

ラスタ データセットに間違ったデータ、現行の解析にとって不適切なデータ、または必要以上に詳細なデータが含まれていることがあります。[ジェネラライズ] ツールを使用すると、そのようなエリアを特定し、そのエリアを構成している一連のセルに信頼性の高い値を代入する処理を自動化することができます。

たとえば、衛星画像を分類して作成したラスタ データセットの場合は、誤って分類された可能性がある小さな孤立したエリアがたくさん含まれている場合もあります。[ジェネラライズ] ツールを使用すると、このようなデータをクリーンナップできます。

地下水解析

[地下水解析] ツールを使用すると、地下水を構成する物質の基本的な移流と分散をモデリングできます。

これらのツールの典型的な適用例としては、化学物質の漏れによって飲料水用の井戸が汚染されるかどうかを解析することが挙げられます。

水文解析

[水文解析] ツールは、標高サーフェスでの水の流れをシミュレートします。これらのツールを使用することで、河川ネットワークの作成や、流域界の識別、洪水のモデル化などができます。

内挿

サーフェスの [内挿] ツールでは、サンプリングしたポイント値から連続(推定)サーフェスを作成できます。通常、ラスタ データセットの連続サーフェスは、標高(高さ)の表現に使用されますが、土壌の pH や、汚染度、騒音など他の現象を表現することもできます。

ローカル

[ローカル] ツールを使用すると、出力ラスタ内の各位置の値は、各セル位置における複数の入力ラスタからの入力値の関数で求めることができます。出力値は、入力値の統計情報として算出したり、複数の入力値の組み合わせによる一意な値を特定したりできます。

たとえば、一連の年間降水量ラスタを使用して、10 年間の平均降水量や、降水量が 650 mm を超えた年の数を調べることができます。

マップ代数演算

[ラスタ演算] ツールにマップ代数演算の式を入力して、空間解析を実行することができます。

算術演算

ラスタに、さまざまな数学演算を適用できます。これにより、入力ラスタの値に対して演算操作や論理式を実行することができます。

多変量解析

[多変量統計解析] ツールでは、多種多様な属性間の関係を細かく調べることができます。Spatial Analyst では、次の 2 種類の多変量解析を実行できます。

  • 分類(教師付き分類と教師なし分類)
  • 主成分分析(PCA)
各解析用にそれぞれツールが用意されており、解析プロセスの各ステップを評価できます。

分類は通常、マルチバンド画像データを土地被覆などの単一分類されたラスタに処理するために使用されます。PCA を使用すると、たとえば、各位置での降水量、土壌タイプ、傾斜方向、気温(独立変数)からバイオマス(従属変数)を予測できます。

近傍解析

[近傍解析] ツールでは、指定された近傍内での特定の位置と値に基づいて、各セルの位置ごとに出力値を作成できます。近傍解析は、各セルの出力値を計算してから次の近傍に移動して、入力ラスタ上を移動します。近傍解析には、重複と非重複の 2 種類があります。

  • 重複する近傍タイプの操作は、フォーカル、たたみ込み、移動ウィンドウ操作とも呼ばれ、入力内の各セルが反復処理されます。出力値の計算には、特定のセル値や指定した近傍内に含まれるセルの値が使用されます。これは、入力内の各セルに対して反復処理されます。
  • 非重複タイプの操作では、近傍は、計算を実行するセルのブロックを構成します。値が計算されると、出力ラスタのブロック内にあるすべてのセルに書き込まれます。この処理は、すべての入力に対する処理が完了するまで、次の隣接および非重複ブロックに対して繰り返されます。

たとえば、[フォーカル統計(Focal Statistics)] ツールを使用すると、入力ラスタの各セルについて、3 x 3 の近傍内の平均値や最大値を算出できます。

ラスタ作成

[ラスタ作成] ツールでは、定数や統計的分布に基づいた出力値を持つ新しいラスタを作成できます。分布には、ランダムと正規(ガウス)の 2 種類があります。

再分類

データの再分類とは、入力セル値を新しい出力セル値に単に置き換えることです。

データは、個々の値別や範囲、間隔、エリア別、あるいは代替値を通してなど、さまざまな方法で再分類できます。

データを再分類する一般的な理由

  • 新しい情報に基づく個々の値の置換
  • 特定の値のグループ化
  • 値の共通の評価値への再分類
  • 特定のセル値の NoData への割り当て
  • NoData のセルの値への設定

日射量解析

[日射量解析] ツールを使用すると、エリアまたは特定の位置について、日射量(全天日射、直達日射、および散乱日射)を計算できます。入力サーフェス DEM を使用して、一定期間に太陽から受け取る放射エネルギー量を特定できます。

サーフェス

これらのツールを使用すると、サーフェス データセットに関する新しい情報を取得できます。各位置について、サーフェスの角度(傾斜)、最も急な下り勾配方向(傾斜方向)、サーフェスの二次導関数(曲率)を判定できます。

また、等しい値の位置を接続したライン データセット(コンター)を作成したり、陰影図を作成したり、2 つのサーフェス間の値の変化を計算したり、位置の可視性を判断したりできます。

ゾーン

ゾーンは、同じ値を持つすべての入力セルによって定義されます。各ゾーンのセルに対してさまざまな統計情報を計算できます。また、ゾーンの指定したジオメトリ計測値も判定できます。ゾーンを使用すると、別のデータセット内の値のエリアや分布を判定できます。

たとえば、[ゾーン] ツールを使用して、ラスタ内の各ゾーンの外周の長さを調べたり、土地区画(ゾーン入力)内の絶滅寸前種の個体数を判定したりできます。

Spatial Analyst ツールセット

関連項目


7/10/2012