マップ キャッシュのエクスポートとインポート

ArcGIS には、1 つのキャッシュから別のキャッシュにタイルをまとめて転送するときに役立つ 2 つのツールが含まれています。[マップ サービス キャッシュのエクスポート(Export Map Server Cache)][マップ サービス キャッシュのインポート(Import Map Server Cache)] で、どちらも [サーバ ツール] ツールボックスにあります。これらは、異なる組織のタイルから 1 つのマスタ キャッシュを構成する、共同のキャッシュ ジョブを行う場合に便利です。これらのツールは、タイルのサブセットをコンピュータに移動して、オフラインで使う場合にも使用できます。

キャッシュ タイルのエクスポートと他のキャッシュへのインポート

エクスポート/インポートの便利な使用方法

次の例は、エクスポートおよびインポート ツールの便利な使用方法を理解するのに役立ちます。

キャッシュの随時更新

あなたが州のイメージ キャッシュの管理を担当しているとします。州内の郡の 1 つに新しい高解像度のイメージがあり、あなたが管理を担当するキャッシュへの追加を希望しています。あなたは郡に対し、そのキャッシュを外付けハード ドライブか、エクスポートされたファイルを取得できる、アクセス可能なネットワークの場所にエクスポートするように依頼します。その後、タイルを自分のキャッシュにインポートします。

共同キャッシュ

キャッシュの随時更新の考え方を拡張して、複数のタイル提供者を対象にすることができます。あなたが地域の複数の地方自治体を連携する Web マッピング プロジェクトを取りまとめているとします。各地方自治体には独自の GIS データベースとマッピング アプリケーションがありますが、すべての自治体がカートグラフィック スタイルとキャッシュ タイル スキーマを一致させることに同意しています。

この例では、各地方自治体が作成したタイルで構成される、共同キャッシュを構築するすることにしました。各地方自治体が、境界線の範囲内のキャッシュ タイルをエクスポートします。その後、あなたがそれらのタイルを Web マップ用の 1 つのマスタ キャッシュにインポートします。インターネット上でマップを表示する一般ユーザは、データが異なるソースから集められたことにも気付かないかもしれません。

ディスコネクト キャッシュ

ArcMap はタイル キャッシュを他のラスタ データセットと同様に、ディスクから読み込むことができます。対応するマップ サービスは必要ありません。これによって、タイルのサブセットを他のコンピュータに移動してオフラインで使用するという、エクスポート ツールとインポート ツールの 3 つめの例が可能になります。

あなたは大都市で働いており、イメージが格納されたキャッシュ マップ サービスを設定したとします。従業員は ArcMap でこのサービスを使用して、自分の仕事に利用したいと考えます。しかし、一部の従業員は時折、インターネットを使用できない現場にノート パソコンを持ち込む必要があります。

あなたはネットワーク上の共有の場所に、キャッシュのコピーをエクスポートすることにしました。これで、従業員はこの場所から自分のノート パソコンへ、タイルをインポートすることができます。必要以上のタイルを取得しないようにするために、従業員は対象エリアのフィーチャクラスを作成し、インポート エリアを定義するために使用します。従業員がノート パソコンで ArcMap を実行する際には、他のラスタ データセットの場合と同様に、インポートされたキャッシュを参照してマップに追加します。

エクスポート/インポートの基本

エクスポート/インポートのワークフローには、次の手順が含まれます。

1. タイル セットのエクスポート

最初に、[マップ サービス キャッシュのエクスポート(Export Map Server Cache)] を使って、ソース キャッシュからタイルをエクスポートします。必要に応じて、エクスポートの範囲を制限する対象エリアを定義することができます。この点で、エクスポート/インポート ツールは、タイルのコピーと貼り付けを実行するよりも便利です。単純なコピーと貼り付けでは、タイルのサブセットから対象エリアを空間的に分断するのは困難でしょう。

フィーチャクラスの境界線に基づいてエクスポートすると、エクスポートエリアは原則的にフィーチャクラスの境界線にクリップされます。周辺タイル上のフィーチャクラスの境界線の外側にあるエリアは、透明になるか(ソース キャッシュが PNG または MIXED 形式の場合)、背景色が設定されます(ソース キャッシュが JPEG 形式の場合)。

ソースのエクスポート先には、ネットワーク上の共有の場所や Web 対応フォルダを指定できます。また、ネットワークに接続されていないノート パソコンや、ハード メディアにエクスポートする場合もあります。クラウド コンピューティングのシナリオで見られるように、ArcGIS Server アカウントが対象に対する書き込みアクセス権を持たない場合は、[データをサーバからコピー] チェックボックスをオンにすることができます。これにより、タイルがサーバの出力ディレクトリに置かれ、クライアントはそこからタイルをダウンロードします。このオプションを使用すると速度は遅くなりますが、より幅広いクライアントがエクスポートを利用できるようになります。

タイル スキーマと基本的なキャッシュ ディメンション情報はそれぞれ、conf.xml および conf.cdi ファイルがタイルとともにエクスポートされます。これらのファイルは、キャッシュについての基本情報を取得するために、ArcMap などのクライアントには不可欠なものです。

最後に、[マップ サービス キャッシュのエクスポート(Export Map Server Cache)] によって、キャッシュ格納形式([コンパクト][エクスプロード])を切り替えることができます。これは、キャッシュ内に格納形式を混在させることはできないために必要になります。大きなタイル セットをネットワーク非接続環境にコピーする場合には、コンパクト形式でのエクスポートを推奨します。コンパクト形式の場合、エクスプロード形式よりもディスク容量が少なくて済み、コピーの速度もかなり速くなります。

2. タイルを接続されていないラスタ データセットとして使用(任意)

タイルをエクスポートしたら、ArcMap のラスタ データセットとして、ディスクから直接使用することができます。[データの追加] をクリックして、タイルをエクスポートした場所を参照するだけです。多くのエクスポート/インポート ワークフローではこの手順は不要ですが、任意に選択できます。また、必要に応じてここで終了し、他の場所にタイルをインポートしないことを選択することもできます。

3. タイルを他のキャッシュにインポート(任意)

[マップ サービス キャッシュのインポート(Import Map Server Cache)] ツールを使用すると、エクスポートされたタイル セットが既存のキャッシュにインポートされます。キャッシュのタイル スキーマが一致している必要があります。キャッシュのイメージ形式も一致しているか、あるいはインポート先のキャッシュがイメージ形式として [MIXED] を使用している必要があります。

必要に応じて、インポートの対象エリアを定義することができます。これは、他のユーザがキャッシュ全体をエクスポートしており、その特定の部分だけを取得したい場合に便利です。

ArcGIS Server アカウントがソース キャッシュに対する読み取りアクセス権を持たない場合は、[データをサーバにアップロード] チェックボックスをオンにすることができます。これにより、タイルはサーバのアップロード ディレクトリに置かれます。サーバはタイルを自動的にサーバのキャッシュ ディレクトリに移動します。

イメージ形式の重要性

イメージ形式はキャッシュ時の重要な考慮事項で、タイルの表示、ディスク上のサイズ、および透過表示設定に影響をおよぼします。エクスポート/インポートの例では、エクスポートされたキャッシュまたはインポート先のキャッシュのいずれかのイメージ形式が、インポートの可能性や最終的なキャッシュの表示に影響をおよぼすため、イメージ形式はますます重要になります。

タイルをインポートする際は、キャッシュ イメージ形式が一致するか、インポート先のキャッシュのイメージ形式が MIXED 形式である必要があります。MIXED 形式キャッシュには、あらゆる形式のタイルをインポートできます。ビット深度や圧縮品質の高いタイルを MIXED 形式キャッシュにインポートする場合には、ビット深度や圧縮品質の低い隣接するタイルの表示品質に誤差が生じる可能性がある点に注意してください。

可能であれば、エクスポート/インポートを実行する際には PNG キャッシュまたは MIXED 形式キャッシュを使用してください。JPEG キャッシュは、タイルの背景色を透過として認識することができません。背景色を含む JPEG タイルを使用しなければならない場合には、これらのタイルの背景色がインポート先のキャッシュに取り込まれる点に注意してください。インポート先のキャッシュと元の背景色が異なる場合、インポートによってそのキャッシュは 2 つの背景色を持つことになります。

ヒントヒント:

背景のセクションがキャッシュに取り込まれないようにするには、エクスポート/インポートに使用するキャッシュにイメージ形式として PNG または MIXED 形式を使用してください。

フィーチャクラスの境界線に基づいてエクスポートする際のラベルの処理

フィーチャクラスの境界線に基づいてタイルをエクスポートする場合、フィーチャクラスの境界線の外部にあるラベルまたはラベルの一部は、エクスポートされたキャッシュに表示されません。このため、ラベルがフィーチャクラスの境界線にまたがるか、その外部に配置されることが多い、ラベルが密集したエリアでは、作業が困難になります。

マップ ラベルが特定のフィーチャクラスに基づいてエクスポートされる傾向にあることがわかっている場合、ラベルがこれらのフィーチャクラスの境界線にオーバーラップするのを避ける、Maplex ウェイト ルールを設定することができます。[ラベリング] ツールバーの [ラベル ウェイト ランキング] をクリックしてウェイトを設定します。

以下の図は、ウェイト ルールをどのように設定して、ラベルと州ポリゴンの境界線のオーバーラップを回避するかを示しています。このルール タイプを使用すると、州の境界線に沿って実行されるエクスポートによって、ラベルが半分にクリップされることがなくなります。

Maplex を使ってラベル配置を空間的に制限します

ウェイトに 1000 を指定すると、フィーチャにラベルがオーバーラップしなくなります。ウェイトはポリゴン境界に設定されるものであり、ポリゴン自体に設定されるものではありません。ポリゴンにこのウェイトが設定されると、州内にラベルが表示されなくなります。ラベルが州の境界の外側に配置されるのを避けたい場合(海岸線に沿って配置されることがある)、州の境界線の逆を表すポリゴンを作成し、そのポリゴン上にラベルが配置されることを禁止するとよいでしょう。

クライアントがタイルをインポートするのに使用するフィーチャクラスを、常に制御できるとは限りません。しかし、Maplex ラベル ウェイトを使用すれば、タイルのエクスポート時に、ラベルの正しい処理の実現に向けて大きく前進することができます。


7/10/2012