バリア

バリアはネットワーク解析レイヤ内のフィーチャクラスで、関連付けられたネットワーク データセットの元のエッジやジャンクションのインピーダンスを規制または変更します。バリアは 3 つのジオメトリ タイプ(ポイント、ライン、ポリゴン)に分割され、ネットワークの一時的な変更をモデリングします。次のように、バリアにはさまざまなタイプがあります。

バリアは、ネットワーク データセットではなく、ネットワーク解析レイヤの一部です。したがって、バリアは、そのバリアを含むネットワーク解析レイヤにのみ影響を与えます。他の解析でもバリアを使用する場合は、目的のネットワーク解析レイヤにバリアを配置する必要があります。バリアを使用する代わりに、ネットワーク データセットを編集する方法もあります。

ネットワーク データセットを編集すれば、バリアと同じようにネットワーク(道路網)の移動可能経路や通行規制区域を設定できます。ただし、道路網の規制をすばやく変更したり、既存の規制を簡単に削除したりできるという点で、バリアの方が一時的な通行規制のモデリングに適しています。通行を妨げる倒木はいずれ撤去され、浸水もやがては解消されます。モデリング対象のイベントが解消された時点で、そのバリアをすぐに削除できます。

編集権限が与えられていない場合でも、バリアを使用してネットワーク(道路網)の移動可能経路や通行規制を変更できます。たとえば、StreetMap North America など編集不可能な SDC ネットワーク データセットがあり、ある領域のインピーダンス値が実際の移動時間を反映していないと思われる場合、ポリゴン バリアを追加してインピーダンスを適切な値に調整できます。ただし、バリアを使用すると、解析のパフォーマンスが低下する可能性があります。

ライン バリアまたはポリゴン バリアを作成したり、読み込んだりする時間は、対象となるネットワーク エレメントの数に比例します。規制対象が密集した道路網や広範囲の場合、バリアは適していません。

ポイント バリア、ライン バリア、ポリゴン バリア

バリア クラスはすべてのネットワーク解析レイヤに表示されます。

バリアをバリア クラスに追加するには、[Network Analyst] ツールバーの [ネットワーク ロケーションの作成] ツールネットワーク ロケーションの作成[ロケーションの読み込み] ダイアログ ボックス、または [ロケーションの追加] ジオプロセシング ツールを使用します。バリアを作成、読み込み、または追加した場合、そのバリアが適用されるのは、ネットワーク解析レイヤの [レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスにある [ネットワーク ロケーション] タブで有効にしたアイテムだけです。[ネットワーク ロケーション] タブでオフにしているレイヤとバリアが交差する場合も同様です。

[ネットワーク ロケーションの作成] ツールを使用してネットワーク解析オブジェクトを作成する方法

バリアの属性を参照および編集するには、属性テーブルを使用するか(そのバリア クラスのすべてのバリアと属性が一覧表示されます)、バリアのプロパティ テーブルを使用します(バリアとその属性が 1 つずつ表示されます)。

ネットワーク解析オブジェクトのプロパティ ウィンドウを開く方法

ポイント バリア フィーチャ レイヤ

ポイント バリアを配置または作成すると、検索許容値内で最も近いネットワーク エッジまたはジャンクションにスナップします。ネットワーク上でのバリアの位置は、ネットワーク ロケーション フィールド(SourceID、SourceOID、SideOfEdge、PosAlong)によって指定されます。通行不可ポイント バリアをエッジ上に配置する場合、そのポイント バリアのみの通過を禁止するか、エッジ全体の通過を禁止するかを選択できます。コスト係数指定ポイント バリアは、そのバリアを通過するたびにコストが加算されます。

ポイント バリアのプロパティ

ポイント バリアの入力フィールド

入力フィールド

説明

ObjectID

システムで管理される ID フィールド。

Name

ネットワーク解析オブジェクトの名前。

BarrierType

ポイント バリアの通過を完全に禁止するか、通過時にインピーダンスを追加するかを指定します。次の 2 つのオプションがあります。

  • 通行不可(0): バリアを通過できません。これがデフォルトです。
  • 追加コスト(2): バリアを通過するたびに、Attr_[Impedance] プロパティで指定した値だけネットワーク コストが加算されます。

FullEdge

このプロパティは、エッジ エレメント上の通行不可ポイント バリアに適用されます。デフォルト値は False です。

  • False: エッジ上をバリアまでは移動できますが、バリアを通過することはできません。
  • True: バリアが配置されているエッジ全体が通行不可となります。

Attr_[Impedance]

(たとえば、Minutes 属性がネットワークのインピーダンスである場合は「Attr_Minutes」となります)

このプロパティは追加コスト バリアにのみ適用され、ゼロ以上の値に制限されます。バリアの通過時に追加するネットワーク インピーダンスの大きさを指定します。

ネットワーク ロケーション フィールド

  • SourceID
  • SourceOID
  • PosAlong
  • SideOfEdge

これらの 4 つのプロパティの組み合わせによって、オブジェクトが配置されているネットワーク上のポイントが示されます。

ネットワーク ロケーション フィールドの詳細

CurbApproach

バリアによって影響を受ける移動方向を指定します。バリアがエッジ上にある場合、必要に応じてアプローチ制限プロパティを次のように設定します。

  • 車両の両側(0): エッジ上での両方向への移動がバリアの対象となります。
  • 車両の右側(1): バリアが移動車両の右側にある場合のみ影響を与えます。同じエッジ上で、バリアが移動車両の左側にある場合は影響を与えません。
  • 車両の左側(2): バリアが移動車両の左側にある場合のみ影響を与えます。同じエッジ上で、バリアが移動車両の右側にある場合は影響を与えません。

ジャンクションは特定のポイントなので、右側/左側がありません。したがって、ジャンクション上にバリアを配置した場合は、アプローチ制限にかかわらずすべての車両に影響を与えます。

ポイント バリアの入力/出力フィールド

入力/出力フィールド

説明

Status

このフィールドは、以下に示す値のドメインによって制約されます(それぞれのコード値は括弧内に示されています)。

  • [OK](0)– ネットワーク ロケーションは有効です。
  • [未配置](1)- ネットワーク ロケーションを特定できません。
  • [ネットワーク エレメントが配置されていません](2)- ネットワーク ロケーションが存在している必要のあるネットワーク エレメントが見つかりません。これは、ネットワーク エッジが削除されたにもかかわらず、ネットワーク ロケーションが再計算されなかった場合に発生する可能性があります。

解析後、次のいずれかの状態値を使用して状態を変更できます。

  • [OK](0)- ネットワーク ロケーションは正常に評価されました。
  • [無効なフィールド名](4)- ネットワーク ロケーションのフィールド値が、解析レイヤのコード値ドメインまたは範囲ドメインから外れています。たとえば、正の数値が必要な場合に負の数値が存在しています。

ライン バリア フィーチャ レイヤ

ポイント バリアは最も近いエッジやジャンクションにスナップしますが、ライン バリアはネットワークにスナップしません。したがって、ライン バリアを機能させるには、エッジまたはジャンクションの上に重ねて配置する必要があります。

ネットワーク エレメントを横切るようにライン バリアを配置し、そのバリアがエッジやジャンクションと交差する箇所を通行不可にすることが目的の場合は、代わりに [ネットワーク ロケーションの作成] ツール ネットワーク ロケーションの作成 を使用できます。一方、エッジに沿った特定の範囲を通行不可にすることが目的の場合は、編集セッションでライン フィーチャを作成し、ライン バリア クラスに読み込む必要があります。トレース ツールなどの編集ツールは [ネットワーク ロケーションの作成] ツールより細かく制御できるので、ライン バリアをネットワーク ソース フィーチャに正確に重ね合わせることができます。

ライン バリアのプロパティ

ライン バリアの入力フィールド

入力フィールド

説明

ObjectID

システムで管理される ID フィールド。

Name

ネットワーク解析オブジェクトの名前。

BarrierType

バリアが移動を完全に規制するか、その移動コストを計算するかを指定します。オプションには次の 2 つがあります。

  • [通行不可](0)- バリアのどの部分も通過できません。これはデフォルト値です。
  • [コスト係数指定](1)- 元のエッジを Attr_[Impedance] プロパティの値で乗算して、そのインピーダンスを計算します。エッジがバリアによって部分的にカバーされている場合、インピーダンスは分配されて乗算されます。

Attr_[Impedance]

(たとえば、Minutes 属性がネットワークのインピーダンスである場合は「Attr_Minutes」となります)

これは、コスト係数指定バリアに固有のプロパティです。これは、バリアの元のエッジのインピーダンスを乗算するときに使用される係数です。

値は 0 以上である必要がありますが、この値を 0 に設定すると、元のエッジのコストが自由に通過できるようになるため、ほとんどの場合、解析は無意味な結果を返します。したがって、0 より大きい値を使用することが推奨されます。

ポリゴン バリア フィーチャクラス

ライン バリアと同様、ポリゴン バリアはネットワークにスナップしません。したがって、ライン バリアを機能させるには、エッジやジャンクションに重ねて配置する必要があります。

ポリゴン バリアのプロパティ

ポリゴン バリアのプロパティはライン バリアと同じです。

ポリゴン バリアの入力フィールド

入力フィールド

説明

ObjectID

システムで管理される ID フィールド。

Name

ネットワーク解析オブジェクトの名前。

BarrierType

バリアが移動を完全に規制するか、その移動コストを計算するかを指定します。オプションには次の 2 つがあります。

  • [通行不可](0)- バリアのどの部分も通過できません。これはデフォルト値です。
  • [コスト係数指定](1)- 元のエッジを Attr_[Impedance] プロパティの値で乗算して、そのインピーダンスを計算します。エッジがバリアによって部分的にカバーされている場合、インピーダンスは分配されて乗算されます。

Attr_[Impedance]

(たとえば、Minutes 属性がネットワークのインピーダンスである場合は「Attr_Minutes」となります)

これは、コスト係数指定バリアに固有のプロパティです。これは、バリアの元のエッジのインピーダンスを乗算するときに使用される係数です。

値は 0 以上である必要がありますが、この値を 0 に設定すると、元のエッジのコストが自由に通過できるようになるため、ほとんどの場合、解析は無意味な結果を返します。したがって、0 より大きい値を使用することが推奨されます。

複数のバリアが重なっている場合の優先順位

複数のバリアが重なっている場合、一貫した動作と結果を保証するため ArcGIS Network Analyst では次の規則が適用されます。

バリアの作成方法

ここでは、いくつかのバリア作成方法を取り上げ、それらの利点と欠点について説明します。それぞれの作成方法を理解した上で、必要に応じて最適な方法を選択してください。

ポイント バリアは常に 1 つのネットワーク エレメントに関連付けられます。そのエレメントが他のエレメントと重なっている場合も同様です。一方、ライン バリアとポリゴン バリアは、デフォルトでは、そのバリアを適用しているすべてのネットワーク エレメントに影響を与えます。ラインまたはポリゴンの下にあるネットワーク エレメントを見落とすと、意図しない結果になる可能性があります。たとえば、高架道路を再舗装するため高架に沿って通行不可ライン バリアを追加すると、高架道路だけでなく、その下の道路も通行不可になります。これは、2 次元空間ではバリアが両方の道路に接触しているためです。バリアがどのように作成されるかを慎重にチェックしてください。

ここでは、上記の高架道路を例にとり、下側の道路は規制せず、高架道路の通行のみを規制する方法を検証します。

状況によっては、その他のライン バリア作成方法も役立ちます。たとえば、次のような方法があります。


7/10/2012