ネットワーク解析レイヤの種類

ArcGIS Network Analyst を使用すると、市街地での最適ルートの検索、最寄りの緊急車両または施設の検出、特定位置に対する到達圏の特定、複数の訪問先に対する複数の車両によるサービス提供、表示や終了に最も適した施設の選択など、ネットワークの一般的な問題を解決できます。

ルート

ArcGIS Network Analyst は、ある場所から別の場所への最適なルート、または複数の場所を訪れる場合の最適なルートを検索できます。場所の指定は、画面上でインタラクティブにポイントを配置するか、住所を入力して行います。また、既存のフィーチャクラスまたはフィーチャ レイヤに含まれるポイントを使用することもできます。訪問するストップが複数ある場合、最適なルートは、場所をユーザが指定した順序で決定することができます。また、それぞれの場所を訪れる最適な順序を ArcGIS Network Analyst で決定することもできます。

最適ルートとは

2 つの地点を結ぶシンプルなルート、または複数の場所を訪れるようなルートを検索する場合、通常は最適なルートを求めようとします。しかし、「最適ルート」の意味は状況によって異なります。

選択したインピーダンスによって、最適ルートは最速、最短、または最も景色がきれいなルートとなります。インピーダンスが時間であれば、最適なルートは最短ルートとなります。最適なルートは、インピーダンスが最も低いルートとして定義され、インピーダンスはユーザによって選択されます。最適なルートを決定する際、どのようなネットワーク コスト属性も、インピーダンスとして使用することができます。

次の例の最初のケースでは時間をインピーダンスとして使用しています。最短経路が青で表示され、合計距離は 4.5 マイルです。通過には 8 分間を要します。

最速ルート

次のケースでは、インピーダンスとして距離が選択されています。この場合、最短の経路の合計距離は 4.4 マイルとなり、通過には 9 分間を要します。

インピーダンスとして距離が選択された場合の最適ルート

最適ルートとともに、ArcGIS Network Analyst は印刷にも対応したターンごとのマップとルート案内も提供しています。

最速ルートを運転するルート案内

最適ルートの検索についての詳細

最寄り施設

事故現場から最も近い病院の検索、事件現場から最も近いパトロール カーの検索、顧客の住所から最も近い店舗の検索は、どれも最寄り施設の検出例です。最寄り施設を検出するとき、検索件数と、移動方向を施設に向かう方向にするか、施設からの方向にするかを指定できます。最寄り施設が見つかると、その施設への、またはその施設からの最適なルートを表示し、各ルートの移動コストを求めることができます。また、各施設へのルート案内を表示できます。さらに、カットオフ コストをインピーダンスとして指定し、その値を超える施設を ArcGIS Network Analyst に検索させないようにすることができます。たとえば、事故現場から 15 分以内の運転時間で到着できる病院を検索するように、最寄り施設の検出を設定できます。運転時間が 15 分を超えてしまう病院は、結果に含まれません。

最寄り施設解析

病院は「施設」と呼ばれ、事故は「インシデント」と呼ばれます。ArcGIS Network Analyst では、複数の最寄り施設解析を並行して実行できます。つまり、複数のインシデントについて、各インシデントの最寄り施設(複数の場合もあります)が検索されます。

最寄り施設の検出についての詳細

到達圏

Network Analyst では、ネットワーク上の任意の場所の周囲に存在する到達圏を検索できます。ネットワーク到達圏は、アクセス可能なすべての道路(指定のインピーダンス内の道路)にまたがる領域です。たとえば、ある施設の 10 分間の到達圏には、その施設から 10 分以内に到達できるすべての道路が含まれます。

到達圏ポリゴン

アクセス性とは

アクセス性とは、ある地点までどれだけ容易に移動することができるかを意味します。ArcGIS Network Analyst では、移動時間、距離、またはネットワーク上のその他のインピーダンスに基づいてアクセス性を測定できます。アクセス性の評価は、「映画館から車で 10 分以内に何人が住んでいるか」または「コンビニエンス ストアから 500 メートル以内に何人の顧客が住んでいるか」などの基本的な質問に回答する上で役立ちます。アクセス性を調べることは、ある地点が新規ビジネスに適しているかを判断する上でも役立ちます。また、近くに存在する既存ビジネスを特定することで、マーケティングに関するその他の意思決定にも役立ちます。

アクセス性の評価

アクセス性を評価するシンプルな方法として、地点周囲のバッファ距離を使用する方法があります。たとえば、シンプルな円を使用して、その地点から半径 5 キロメートル以内に何人の顧客が住んでいるかを調べることができます。しかし、顧客が道路を通ってその地点を訪れることを考慮すると、この方法はその地点の実際のアクセス性を反映していません。ArcGIS Network Analyst によって計算される到達圏は、交通ネットワーク上で 5 キロメートル以内の移動距離でアクセスできる道路を特定することで、この限界を克服しています。一度作成した到達圏を使用して、たとえば車で 5 分以内の場所に存在する競合ビジネスなど、アクセス可能な道路に何が存在するかを調べることができます。

到達圏ライン

同心の複数の到達圏は、インピーダンスの増加によってアクセス性がどのように変化するかを示します。これは、たとえば学校から車で 5 分、10 分、15 分以内にいくつの病院が存在するかを示す場合に使用できます。

複数到達圏のポリゴン

到達圏解析の詳細

OD コスト マトリックス

ArcGIS Network Analyst を使用することで、複数の起点と終点(Origin と Destination)の間のコスト マトリックスを作成できます。OD コスト マトリックスは、各起点から各終点へのネットワーク インピーダンスを含む表です。さらに、各起点から各終点への移動に要する最小のネットワーク インピーダンスに基づいて、その起点に対する各終点を昇順にランク付けします。

起点/終点の組み合わせごとに最適なネットワーク パスが検索され、出力ラインの属性テーブルにコストが格納されます。パフォーマンス上の理由でラインが直線であっても、直線距離ではなくネットワーク コストが常に格納されます。次の図は、各起点から一番近い 4 つの終点に到達するのにかかるコストを検索するように設定された OD コスト マトリックス解析の結果を示します。

最も近い 4 つの終点を検出するように設定された OD コスト マトリックスの結果
OD コスト マトリックスのネットワーク インピーダンスが格納される属性テーブル

直線は、色(起点とするポイントを表す)や太さ(各パスの移動時間を表す)など、さまざまな方法でシンボル化できます。

ヒントヒント:

最寄り施設解析および OD コスト マトリックス解析で実行される内容は、ほとんど同じです。しかし、主に出力と計算速度に違いがあります。OD コスト マトリックス解析は、結果をより迅速に生成しますが、ルートの正確な形状またはそのルート案内を返すことができません。これは、大規模な MxN 問題を迅速に解決するように設計されています。したがって、ルートの形状およびルート案内を生成するのに必要な情報を内部に保持していません。最寄り施設解析は、ルートとルート案内を返しますが、OD コスト マトリックス解析よりも遅い速度で解析を実行します。ルートの正確な形状またはルート案内が必要な場合は、最寄り施設解析を使用します。その必要がない場合は、OD コスト マトリックス解析を実行して計算時間を短縮します。

OD コスト マトリックス解析の詳細

配車ルート

保有車両を管理する配車係は、配車ルートについて決定を下さなければならないことがよくあります。このような決定には、顧客グループを保有車両に最適に割り当てる方法、車両の立ち寄りの順序およびスケジュールを設定する方法が含まれます。このような配車ルート(VRP)の解析を実行する目的は、各ルートの運用および投資コスト全体を最小限に維持しながらタイム ウィンドウを遵守することで、高レベルな顧客サービスを提供することにあります。制約として、使用可能なリソースを使用し、運転者の交代制勤務、走行速度、および顧客の約束事項によって課される時間制限の範囲内にルートを完了する必要があります。

ArcGIS Network Analyst では、このような複雑な保有車両管理タスクの解決策を決定するのに最適な配車ルート解析を提供しています。

中央の倉庫から食品雑貨店に商品を配達する例を考えてみましょう。倉庫では全部で 3 台のトラックを使用できます。倉庫は特定のタイム ウィンドウ(午前 8 時~午後 5 時)の期間しか営業していないので、すべてのトラックがこの期間内に倉庫に戻る必要があります。各トラックの積載制限は 15,000 ポンドであり、搬送できる商品の量には制限があります。各食品雑貨店からは、配達を必要とする商品の需要が特定量(ポンド単位)あります。また、各食品雑貨店は、配達の時間を制限する時間帯を設定しています。さらに、運転者の労働時間は、1 日あたり 8 時間に制限されています。運転者には昼休みが必要で、運転および食品雑貨店へのサービス提供に費やした時間に対して賃金が支払われます。目標は、配達を行うにあたりすべてのサービス要件を満たし運転者が特定のルートで費やす合計時間を最小にすることができるように、運転者(ルート)ごとに配送プランを決定することにあります。次の図は、上記の配車ルート解析を実行して得られる 3 つのルートを示しています。

配車ルート解析を実行して得られる結果

配車ルートの詳細

ロケーション-アロケーション

ロケーション-アロケーションによって、需要地点との間で考えられるやり取りに基づいて、複数の候補地の中から運用施設を選択することができます。これは次のような質問に答えるために役立ちます。

これらの例では、施設は消防署、小売店、工場を表し、需要地点は建物、顧客、配送センターを表すことになります。

目的としては、需要地点と施設の間の全体距離を最短にしたり、施設からの一定の距離内でカバーされる需要地点の数を最大にしたり、施設から距離が離れることで衰退する需要の割り当て量を最大化したり、友好施設や競合施設の環境において捕捉される需要量を最大化することなどが考えられます。

下のマップには、余分な消防署を特定するためのロケーション-アロケーション解析の結果を示しています。この解析のために提供された情報は、消防署(施設)の配置、道路の中間点(需要地点)、許容される最長の応答時間です。応答時間とは、消防士が目的の場所に到達するまでにかかる時間のことです。このロケーション-アロケーション解析によって、複数の消防署を閉鎖しても、3 分の応答時間を維持できることが確認されました。

16 の消防署のマップ:需要地点への応答時間を 3 分以内に確保するために、7 か所は開いておく必要がありますが、9 か所は閉鎖することができます。
現在の消防署の中から、9 つの消防署は閉鎖可能です。3 分以内で緊急事態に対応できるようにするには、最低でも 7 か所は維持することが必要です。

ロケーション-アロケーションの詳細

関連項目


7/10/2012